俳句庵

1月『初詣』全応募作品

(敬称略)

大阪府      藤田康子
合はし手を焚き火にひらく初詣
御下がりのお米いただき初詣
千葉県      柊二
留守の間に矢の放れて初詣
新潟県      近藤博
御手洗やまたぞろ杓に初詣
柏手の音の新たに初詣
偕に老いともに柏手初詣
産土の鎮まる神や初詣
御手洗の小舎順待つ初詣
埼玉県      飯塚璋
靴音の一方通行初詣
静岡県      池ヶ谷章吾
初詣門前町の海苔あられ
今年こそ奮い立つての初詣
美しき手元襟元初詣
口数の少なくなって初詣
一身に家中ぶんの初詣
兵庫県      紫 桔梗
賽銭の小銭用意し初詣
長靴で氏神様に初詣
初詣妻と逸れてしまひけり
初詣臨時交番設置さる
六度目の干支を迎えて初詣
滋賀県      東野了
仲見世で招き猫買ふ初詣
拍手に力込めたる初詣
初詣終えて安堵のようなもの
新しき家族を加へ初詣
東雲の空美しき初詣
愛知県      遊泉
お薬師に寛解謝して初詣
神鶏(しんけい)と少し戯れ初詣
異邦人頭(こうべ)深々初詣
玉垣の父の名なぞり初詣
若きらの異形の群れて初詣
千葉県      伊藤博康
初詣人には言へぬ願ひ事
握る手を放すまいとて初詣
あるだけの願ひ忘れず初詣
賽銭が頭に当たる初詣
一年で一番神妙初詣
神奈川県      片桐と志え
初詣夫いくつもの札を買う
神殿の巫女健やかな初詣
初詣鎮守の森の空は蒼
安泰を互ひに願う初詣
老犬を待たせて夫と初詣
兵庫県      はなちる
合わす手の形ばかりの初詣
ただ祈る無機質の空初詣
初詣平安の世よ帰路弾む
願い聴く神も忙し初詣
お賽銭届かぬ願い初詣
山梨県      天野昭正
受験生競ひ絵馬買ふ初詣
初詣我も氏子のひとりなり
異国語の飛び交ふ中を初詣
階段の長くて楽し初詣
初詣人の背中を見て進む
山口県      ひろ子
初詣お神酒樽の底となり
柏手の澄んで高鳴る初詣
狛犬の足をなでるや初詣
大吉の歓声結ぶ初詣
兵庫県      中道勇
初詣登る石段歳を超ゆ
初詣手ぶら帰りの多くなり
初詣わが献灯や七のまま
今年また午前零時の初詣
愛媛県      渡邊國夫
大楠の紙垂の真白や初社
浅沓の禰宜厳かに初祓
初詣孫を背負へば磴長し
初詣願ふは「平ら」ただ一つ
初詣老いも若きもスマホして
兵庫県      噂野アンドゥー
初詣 願いを込めて 銭入れる
日が変わる 深夜一時の 初詣
神様に 今年もよろしく 初詣
初詣 着物美人に 流されて
初詣 道端地蔵に 手を合わせ
東京都      伊藤はな
ふかぶかと額ずくだけの初詣
嬉しくも白寿の母と初詣
日常の感謝を結ぶ初詣
慣習を繋ぎゆくなり初詣
四代の産土神参鈴の音
東京都      岩崎美範
初詣杖つき登る女坂
母背負ひ鳥居をくぐる初詣
願ふこと無きの幸せ初詣
機関士の父に縁なき初詣
江戸十社一日で巡る初詣
神奈川県      森山茂
真夜中の外出許され初詣
神奈川県      守安雄介
等々力の闇の霊場や初詣
鳶烏空店に満つ初詣
大凶や鳶の糞浴ぶ初詣 
馴れからの決別図る初詣
待たされて願いを忘る初詣
東京都      内藤羊皐
初詣翳の如くに慧火揺れ
新しきいのち賜り初詣
酒臭き息吐きたるや初詣
階の苔の耀ふ初詣
めめ絵馬の風を囃して初詣
神奈川県      佐藤博一
思わざる人を見つける初詣
初詣かぞく増えしを報告す
三世代そろふ柏手はつもうで
本当の空もどり来る初詣
一年の計をこころに初詣
神奈川県      川島欣也
初詣お神酒を飲まぬドライバー
初孫の初の披露や初詣
玉砂利を踏む音きよし初詣
日の本の寺社の賑わふ初詣
隅田川七福神へ初参り
京都府      田端敏弘
手を引かれ手を引いた坂初参り
平穏に平穏願う初社
岡山県      岸野洋介
産土に終活願う初詣
初詣済まして妻の墓たずね
何はさてまず産土に初詣
初詣米寿まではと鈴を振る
たこ焼きの紅に日のさす初詣
神奈川県      白銀
初詣 せつない風に 恋い焦がれ
初詣 忘れられない 念願の志
明星 袴姿の 初詣
神社の 参道通り 初詣
年明けの 絵馬よくばり 初詣
神奈川県      海野優
同じこと願ひてをりぬ初詣
六道の巷にありて初詣
初詣辻占ひも出て居りぬ
おびんづる様へひと言初詣
ブラジル      林とみ代
新調の服にはしやぎつ初詣
東方に二礼二拍手初詣
金髪娘の耳輪揺るるや初詣
片言の小さな手合せ初詣
耶蘇信者の胸に十字架初詣
長野県      木原登
子らは子ら我らは我ら初詣
初詣賓頭盧さまも撫でにけり
初詣こたびも雪の善光寺
初詣目頭熱く祈るなり
去年よりも賽銭はづむ初参り
兵庫県      岸野孝彦
初詣灘の生一本鏡割り
初詣一人深夜の下り坂
初詣玉砂利踏めば父母の影
タコ焼きの臭い立ち込め初詣
かしわ手や痛いばかりの初詣
埼玉県      よしこ
願ひ事の二つありけり初詣
初詣暗き中にも灯ほのか
老いてなほ吾に恋ある初みくじ
鳥居下の待ち合はせかな初詣
今年より子らも加はり初詣
山口県      山縣敏夫
知り合いと突如出くわす初詣
連れ合いと愛犬連れで初詣
初詣何か良いことありそうな
初詣年取る毎に近くなり
初詣行き交う人の顔新た
三重県      西井治男
玉砂利の歩速奏でる初詣
車椅子孫に押されて初詣
東京都      石川昇
初詣思わぬ人に出会いけり
初参絵馬に見知らぬ異国文字
三重県      平谷富之
初詣で願ふは俳句の上達を
初詣で一際賑はう伊勢の街
カナダ      森井健二
初参り 鳥居をくぐる 三世代
初詣 今年は畔の 石地蔵
元旦や 冷たき顔と 合掌と
朝晴れて 産土の神 初参り
霜柱 さくさく踏めば 赤鳥居
神奈川県      井手浩堂
初詣木の間隠れの女坂
赴任地の神社それぞれ初詣
嫁ぐ子と並び柏手初詣
東京都      吉田八知代
初みくじ一喜一憂全て居(お)り
初詣厠いずこと泣く子かな
カナダ      森井節子
初詣 除夜の鐘聞き 合掌す    
往く年や 鳥居くぐれば 除夜の鐘 
仕事終え 玉じゃり踏めば 除夜の鐘
神奈川県      河野肇
初詣野鯉のやうな君なりき
公魚の子らも集ふや初詣
はるかなる甲骨文字や初詣
初詣小さき埴輪を買いにけり
卑弥呼来よロボットも来る初詣
東京都      五島洸
初詣湯宿の下駄をつっかけて
人波に揉まれて破魔矢また破魔矢
千年の門をくぐりて初詣
初詣で大楠に触れもして
腹ごなしついでなれども初詣
兵庫県      山地美智子
初詣母健やかに老い給ふ
加護頼む吾子を連れ行く初詣
来し方の幸運を謝す初詣
二人子にお守り二つ初詣
初詣神には易き願ひ事
岐阜県      ときめき人
境内の混みたる夢や初詣
滋賀県      中島光汰朗
初詣して門前の鰊そば
初詣鳩の中へと三輪車
船でゆく札所の島へ初詣
大津絵の鬼が微笑む初詣
参道も屋根もまつ白初詣
愛媛県      加島一善
笙の音に誘われ進む初詣
結婚式思い出し出し初詣
青竹の柄杓の並ぶ初詣
新しき紙垂を潜るや初詣
金毘羅の石段数え初詣
神奈川県      塚本治彦
眠さうな巫女の瞼や初詣
初詣本土へ向かふ渡船
産土へ普段着のまま初詣
朝酒のおほつぴらなり初詣
初詣女人高野のゆるき磴
三重県      後藤允孝
柏手のすがしき音や初詣
幼子を連れて爺婆初詣
厄年となりたる今朝の初詣
初詣出会いし友の髪白し
高山帽小脇に挟み初詣
東京都      勢田清
金鈴の澄みし音色や初詣
初詣雲一つ無き青空に
少しずつ人波進む初詣
頼朝の松は二代目初詣
清浄の気は神苑に初詣
福岡県      紙田幻草
打ち上げの花火を期して初詣
初詣臨時電車に駆け込みぬ
駆けだして孫が先頭初詣
初詣顔を知ったる人ばかり
山門の裸電球初詣
神奈川県      猪狩 千次郎
参道の真ん中避けて初詣
うらうらと亀が首出す初詣
酒一合除夜詣から初詣
初詣同級生の巫女に会ふ
御祝儀を纏に挿み初詣
千葉県      野木編
初詣破顔一笑帰り道
里の寺老人ばかり初詣
病得て十年ぶりや初詣
初詣ついでに深夜映画見に
大凶のみくじ隠せし初詣
宮城県      林田正光
参道の砂利に躓く初詣
おみくじは吉一文字の初詣
初詣終えて乗るバス日章旗
願い事二年続ける初詣
初詣最寄りの神社無人かな
大阪府      津田明美
杉百幹霊気に歩み初詣
闇にある華やぎ纏い初詣
初詣闇に華やぐ風を受く
声高に若者過ぎて初詣
迂回路に露店賑う初詣
愛媛県      中川正子
境内の饂飩の湯気へ初詣
合掌を妣へも捧ぐ初詣
初詣不意に同窓会となる
東京都      初紫
初詣 父を笑顔に 吉みくじ
御礼より 願いの多き 初詣
神木の 紙垂神々し 初詣
神奈川県      矢神輝昭
初詣神主の鼻赤かりし
初詣神は人酔いお神酒酔い
初詣俄か信心厚顔で
初詣神は薄目で聞し召す
初詣で思ひ叫ばん山の上
東京都      紫楪
参道に 玉砂利の音と 白き息
四捨五入 するな五十路の 初詣
神木の 孫生え雄雄しく 初詣
東京都      紫朶
初詣 妻と並びて 二拍手す
香水で 台無しなりし 初詣
初詣 ケータイゲーム 休みなし
奈良県      平松洋子
初詣寄り来し鹿に初煎餅
外人も共に手合わす初詣
初詣家内安全変わらずに
神奈川県      原川泉水
お神酒受け教も新た初詣
清し(スガシ)身に神を迎えむ初詣
神域や気高さ浴びる初詣
初詣清き気充ちて心直
心冴え神門仰ぐ初詣
大阪府      椋本望生
秒針を止めて合掌初詣
沖天に寿ぐ光り初詣
初詣砂利に食ひ込む下駄の音
初詣病み付く餓鬼を払ひつつ
神奈川県      梶満理子
初詣氏神様を一番に
鎌倉の高き石段初詣
晴れ着着てはしゃぐ子どもも初詣
人波に隠れし坂を初詣
人頭に賽銭当たる初詣
神奈川県      伊原文夫
初詣白玉砂利の赤ら顔
初詣氏神様に近づけず
信心も年に一度の初詣
初詣親の真似する作法かな
未来図をひたすら願う初詣
北海道      飯沼勇一
身を清めてより出掛ける初詣
星々を案内人に初詣
この日だけ善男善女初詣
初詣キリスト教徒混じりをり
故郷の神社閑散初詣
東京都      佐藤博重
外つ国の一家に混り初詣
初まうで鞄に句集「早春」を
外つ国の親子と破魔矢翳しけり
笑顔善き人ばかりなり初まうで
東京都      中田ちこう
磐座の榊新し初詣
帰省した娘と母の初もうで
埼玉県      岸保宏
動かぬ子トントコ飴の初詣
狛犬に一声かけて初詣
初詣白髪の頭蛇行する
神奈川県      龍野ひろし
小吉が丁度良きかな初詣
巾着に仕舞ふ吉札初詣
初詣巫女の打ち振る神楽鈴
紅白の鈴紐新た初詣
福岡県      西山勝男
氏神へ何はともあれ初詣
初詣いくさなき代を祈るのみ
総身に炎をまとひ初詣
授かりしいのち大事と初詣
ご開扉の観音仰ぐ初詣
富山県      岡野満
凶ならば吉へ向かうと初詣
新しき光を浴びて初詣
柏手に秘めた思いや初詣
凛として参道歩く初詣
大吉を引いて初空済みにけり
滋賀県      村田紀子
帯締めて背筋伸ばして初詣
下駄の音母もいたなと初詣
初詣笑いさざめく砂利の音
初詣上目使いで手を合わす
愛知県      新美達夫
ありふれた事を願へり初詣
手を合はす時日本人初詣
ネクタイの企業戦士も初詣
市長には公と私とある初詣
願ひまた感謝に如かず初詣
東京都      右田俊郎
おみくじは吉とでました初詣
神域に柏手響く初詣
ちっちゃな手叩いてお辞儀初詣
初詣優先順位つけ祈る
初詣緊張気味の外人さん
山口県      ―
献灯の海まで続く初詣
千葉県      横井隆和
・三つ折りを捧ぐ愉悦や初詣
・初祓い迂路も魅惑の暖簾かな
・神の耳足るや万波の初詣
愛媛県      アリマノミコ
まほろばの民は神の子初詣
お焚き上げ半紙にくるみ初詣
家猫に留守番たのみ初詣
神奈川県      月野木潤子
其のかみのお江戸通りや初詣
朝戸出の声掛け合うて初参り
初詣振る舞ひ酒の酔ひ少し
まぶしめる巫女の緋袴初詣で
やはらかきほまちの雨も初まうで
神奈川県      月野木 若菜
初詣異国の友を誘ひて
小気味良く靴音刻み初詣
家族一律儀なる父初詣
初詣まだ明けやらぬ参道を
初詣夜中仕事を了へたれば
大阪府      永田
問題集ここまでにして初詣
奈良県      一人坊
機上でも気を込め祈る初詣
年跨ぐ結願込める初詣
背の孫の温もり叶え初詣
埼玉県      彩楓(さいふう)
初詣龍の口より清め水
階を星へと登る初詣
頭垂れただ母の事初詣
学友が手を挙げて待つ初詣
千年のまづ神木へ初詣
神奈川県      成田あつ子
晨風に袂孕むや初詣
歳歳の祈ぎ事同じ初詣
墨香るお札にわが名初詣
荒潮の岩研ぐ島へ初詣
初詣本殿までの道遠し
東京都      岩川容子
初詣善男善女の顔となり
神鈴の音の高らかに初詣
社殿より登る朝日や初詣
一点の曇りなき日の初詣
愛知県      古賀敦子
初詣巫子美しき顔をして
大鳥居二つ潜りて初詣
玉砂利に杖曳く音も初詣
神苑に柏手響く初詣
箏の音の近くなりたる初詣
埼玉県      守田修治
婚姻の届け出したり初詣
年毎に祈念は減りし初詣
また一つ歳を取ったか初詣
初詣老いた一年始まりぬ
初詣谷中の坂の多きこと
東京都      遠山比々き
小さきは庭の祠や初詣
神奈川県      皆空眞而
金の朝銀の雪踏み初詣
初詣往き交ふ人の息白く
千葉県      入部和夫
独り身の子の幸祈る初詣
岐阜県      村瀬佐智子
朱の鳥居いくつくぐつか初詣
思い切り賽銭とばす初詣
玉砂利の音なりやまず初詣
身を清め祖父先頭に初詣
遠くから聞こえますかと初詣
千葉県      下総真里
針葉樹まず嗅いでおり初詣
初詣神馬の白に触れてきて
神奈川県      三好康子
賽銭箱に紙幣ちらほら初詣
神水の身ぬち貫く初詣
初詣御籤並べて結びけり
一滴の神酒にほろ酔ひ初詣
初詣敢えて挑みぬ男坂
兵庫県      ぐずみ
政治家に社長に学者初詣
おひねりを貰う役者の初詣
初詣テレビに映る銭勘定
投げ銭の新期契約初詣
賽銭に日本を託す初詣
千葉県      山田香津子
肩車されし子咲ふ初詣
抱く嬰とながるる雅楽初詣
長々き石のきざはし初詣
東京都      住澤義英
力入れ投げる賽銭初詣
今年も普通が一番初詣
老夫婦かばい手を添え初詣
願いより祈る眼差し初詣
初詣何もなくても行事ごと
埼玉県      哲庵
初詣幼馴染みと再会す
金色のスカイツリーや初詣
初詣生涯一句を授かりに
新調の杖音高く初詣
電動の自転車駆つて初詣
東京都      ゆきまる
初詣縁起物売る福の相
大鳥居より澄み渡る初詣
凛々しくも巫女の薄着や初詣
こころもち離れて歩く初詣
兵庫県      山崎衣玖
乳飲み子の居り留守番の初詣
初詣列を進むは風ばかり
早口に無事を礼する初詣
龍神のちさき鱗や初詣
流転の身故の幸あり初詣
神奈川県      髙梨裕
鐘聞けば去年を踏みつつ初詣
戦火なき夜明けの道を初詣
老いの道灯る来る年初詣
氏神に御神酒一升初詣
願いしは五千円なり初詣
京都府      中村万年青
八坂神社へと四条通りは人の波
拝殿へ辿り着けない初詣
婦警今交通指示す初詣
東京都      飯田哲司
初詣テレビですませすみません
足ぶみし並らび待たされ初詣
初詣氏子の接待楽しみに