俳句庵

6月『夏野』全応募作品

(敬称略)

岐阜県      金子加行
開拓の歴史を覆う夏野かな
置去りの老人立たす夏野かな
寝転びて彩りあると知る夏野
一粒の吾を置きたる夏野かな
叫びたき夏野の匂ひ旅に会ふ
宮城県      石川初子
尽きるのを知らず競える夏野かな
大阪府      金成愛
わたくしにつながるあなたへの夏野
大夏野真っ正面にミズハノメ
夏野行く愛に踏みこむやうにゆく
なんにでもなれるなんにもない夏野
愛知県      岩田遊泉
鳥人の群れ抱かれて夏野原
見下ろしぬ大仏殿や大夏野
鬨の声聞こえ来るかに夏野原
少年の夢の遥かな夏野かな   
富士眺む夢の夏野の何処なる
愛知県      傑
翼立て スクランブルや 大夏野
白雲を 次々に生む 夏野かな
浅間山 噴煙かすか 夏野かな
寝ころべば 何故か大の字 夏野かな
新潟県      近藤博
果てしなき夏野に在りし鉄路かな
ローカル線車窓に走る大夏野
夏野ゆく草のいきれにへとへとと
草いきれ噎せる道ゆく夏野かな
それだけに道は一すぢ夏野かな
千葉県      小松将
夏野駆ける いつも戻れる あの頃に
夏野には 何かがいるよ 好奇心
夏野にも 子供にもきた 成長期
夏野にて 勝負の時 背比べだ
夏野から 漂う空気 夏運ぶ
大阪府      藤田康子
いく山も越え来て休む夏野かな
過ぎゆくものを見つめてる夏野かな
兵庫県      岸下庄二
靴脱いで走りたくなる夏野かな
発電の風車の回る大夏野
コーラスの練習始む夏野かな
遠汽笛聞こゆ岬の夏野かな
大夏野大人も混じる鬼ごっこ
千葉県      柊二
カルストを喰みて夏野や国境
東京都      片桐啓之
夏野来て六地蔵見て夏野行く
行き先の定まらぬまま夏野行く
正面に富嶽大きな夏野かな
連れ添うて今は夏野を歩きをり
いつの間に入り込みたる大夏野
兵庫県      噂野アンドゥー
中山の 夏野で競う 馬の足
駆け抜ける 人工芝の 夏野原
生い茂る 緑の草や 夏野かな
反射する 夏野についた 雨雫
夏野原 野生の馬が 走り抜け
神奈川県      守安雄介
夏野なる十四文字の無人駅 
新任地夏野の風のアレルギー
パラグライダー夏野の鳶となりにけり
夏野行く相合傘の白日傘
放牧の牛の動かぬ夏野かな
京都府      田端敏弘
満天を掛けて夏野に大の文字
集合に児の一斉に引く夏野
指笛や駆け出す生命追う夏野
東京都      石川昇
朽ちかけた牧舎を望む夏野かな
目に見えぬ生存競争夏野原
長野県      木原登
棒一本おのが武器とし夏野の子
三々五々牛を散らせる大青野
林立の雲をめぐらす夏野原
落日へオカリナを吹く夏野かな
夏野には夏野の掟されこうべ
埼玉県      岸保宏
喜寿間近夢膨らます夏野かな
学窓に留めて置きたき富士夏野
虫は皆青染まりたる夏野かな
東京都      安西信之
体力もいずれ底つく夏野かな
兵庫県      岸野孝彦
夏野から夏野へ走る風になる
黄昏の五百羅漢の夏野かな
様々な想いが駆ける夏野かな
桶持ちて夏野過ぎれば父母の墓
夏野にてこぼれる花の孤愁かな
東京都      勢田清
足もとの影道連れに夏野行く
何処までも影ひとつ無き夏野かな
黄なる花点々として夏野原
遠く来て夏野の果てや海の音
帽子とり風に吹かせる夏野かな
愛媛県      渡邊國夫
夏野原活断層の走りをり
夏野まで犬と散歩の日課かな
ふる里の夏野に多き哀話悲話
もののふの祠をちこち夏野かな
遠山も夏野も靄の中なりし
山口県      ひろ子
トンネルをぬけて広がる夏野かな
点々と黄花の灯る夏野行く
トンネルをぬけて夏野や無人駅
腰すえて夏野見渡す夕間暮れ
栃木県      長浜 良
夏野から夏野へ渡る丸木橋
故在りて夏野を想ふ人となり
草に寝て雲一片もなき夏野
山羊の背を撫でて夏野の人となる
千葉県      伊藤博康
落し物探せずにゐる夏野かな
抵抗は無駄なことなり大夏野
大夏野忘れたきこと数多なり
川岸の墓まで続く夏野かな
街が消へいつか夏野になつてゐる
神奈川県      佐藤博一
夏の野に何かを捜す刑事かな
夏の野に外野四人の草野球
見えていて声の届かぬ夏野かな
遠くより風見えて来る夏野かな
少年や夏野の匂ひ持ち帰る
栃木県      鹿沼 湖
木道の続く真昼の夏野かな
連山の空へ溶けゆく夏野かな
ドローンの上へ上へと夏野かな
一すぢの道は空へと夏野かな
反芻の牛ゆつたりと夏野かな
千葉県      小泉芝雲
馬の背におっかな乗りて大夏野
大夏野に寝そべる牛の岩のごと
悩み一つ夏野の中に消えてゆく
大阿蘇の草千里なる夏野かな
大夏野に叫び声あぐムンクかな
北海道      竹浪誠也
隊列が崩れ夏野の花の中
顧みて夏野の渦に立ち止まる
スナップの笑顔それぞれ大夏野
岩木嶺を浮かべ凪がるる夏野かな
宮城県      林田正光
なにもなきただそこにある夏野かな
大夏野ドレミの歌の聞こえ来る
太陽を浴びた夏野や夕の風
神奈川県      白銀
荒野にも 雷雲が  夏野を駆ける
夏野の恋  真夏の光  一途な夢
風車が 夏野を飛んで  とんぼ返りへ
空と雲 夏野のコンビ 天で回る
夏野の岸 川辺に浮かぶ 毬藻かな
東京都      内藤羊皐
飼ひ猫のなにやら咥へ夏野ゆく
犬乗せて夏野をゆける乳母車
人形の腕の落つる夏野かな
鶏の鶏冠耀ふ夏野かな
千人の指紋絡まる夏野かな
徳島県      白井百合子
山仕事帰る家路の夏野かな
夕暮れの足もとそよぐ夏野かな
富士山に一本道の夏野かな
竹林の抜けたる先に夏野かな
旅牧の日の出も赤く夏野かな
東京都      岩崎美範
母乗せて車椅子押す夏野かな
牛遊ぶ流刑の島の夏野かな
声あげて縄電車行く夏野かな
グラマンの掃射のありし夏野かな
振り逃げに歓声あがる夏野かな
埼玉県      よしこ
ハモニカの誘ふ風あり夕夏野
雑草も夏野似合ひし風そよぐ
三つ編みの少女駆けゆく夏野かな
大樹影大の字なりし夏野かな
分け入れば少し近道なる夏野
岡山県      岸野洋介
吾歩む夏野の果てに海光る
天国の妻は夏野の星となり
ふと止まり山頂仰ぐ夏野かな
句境得て八十路の果ての夏野ゆく
月照らす大宰府跡という夏野
兵庫県      はなちる
夏野原振り出し戻る子等の声
あばら家に蚊の飛び交う夏野かな
夜の闇夏野秘かにざわめくや
熱を喰ふ臍の中心夏野かな
大阪府      山岡和子
リフト降り一歩に夏野はじまりぬ
小流れに指を浸せる夏野かな
マッチ箱めくロッジあり大夏野
霧飛んで君を隠せる夏野かな
霧飛んで私も飛んでいる夏野
神奈川県      ぐ
雲の影くじらのやうにゆく夏野
駆け抜ける足捕まえし夏野かな
夏野からのののと雲の沸き上がる
ドクターヘリ蹴散らす青き夏野かな
東京都      伊藤はな
雑草の名前を拾ふ夏野かな
点点と岩の白さや大夏野
花束を夏野に摘みし幼かな
むんむんと湧き出る匂ひ大夏野
結婚の啓示を受けた大夏野
東京都      中田ちこう
魂と谺す夏野無言館
山口県      山縣敏夫
どこかしらインスタ映えのする夏野
大夏野野球部員のランニング
広大な北の大地の夏野原
これからも夢は続くよ大夏野
見渡せばどこまで続く夏野原
神奈川県      井手浩堂
遠山に白き雲浮く夏野かな
置物のごとく牛在る夏野かな
兵隊の匍匐訓練せし夏野
子とさがす紙飛行機や大夏野
鳥影の夏野を過ぐる速さかな
兵庫県      山地美智子
一行は健脚揃ひ大夏野
古すぎて読めぬ夏野の道標
土煙上がる夏野の一本道
故郷の誰にも会はぬ夏野かな
大夏野大極殿へ一本道
滋賀県      正庵
夏野ゆくサイクリングの五六人
絶えず人出入り夏野のレストラン
伊吹まで一本道の夏野かな
走る人寝る人歩く人夏野
白き石ひとつ夏野の古墳かな
神奈川県      矢神輝昭
夏野来て風に向かわん吾は舟
入り日影夏野の葉先尖りおり
秘密基地都市化に喰われああ夏野
夏野入る吾は黙して影重し
夏野には網と帽子と白い雲
神奈川県      河野肇
書道展窓より見ゆる夏野かな
石仏の顔暮れのこる夏野かな
昭和二十年徒手空拳の夏野かな
病む父の遠く見やりし夏野かな
天駈けて去りし機灯や夏野の夜
福岡県      紙田幻草
それぞれの草競い立つ夏野かな
大阿蘇の夏野を走るバイクかな
ツーリングバイク呑み込む大夏野
もこもこと雲湧く空と大夏野
遠き日の自分に還る夏野かな
三重県      後藤允孝
天と地と人と風との大夏野
果てしなき宇宙ロマンや大夏野
夏野来て深き青空見てゐたり
立てば海見ゆる夏野の空の青
ローカル線吾も連れゆく夏野かな
奈良県      平松洋子
窓に入る夏野の優し風と寝る
生駒山四方見渡す大夏野
ただ一人なって夏野の気持良さ
神奈川県      塚本治彦
裸馬乗る少年の夏野かな
鈴の鳴る郵便馬車の夏野かな
牛陰に憩ふ牛飼夏野かな
風立ちて歩幅大きくなる夏野
測量の声呼び交はす夏野かな
愛知県      新美達夫
歩むより術無き道や大夏野
野仏の石に帰したる夏野かな
少年に夏野の果てのまだ見えず
埋もれし鎌倉往還夏野原
新潟県      加藤正子
吾子抱いて帰るふる里夏野かな
寝転んで頬張る飴玉夏野かな
墓前へと花束抱へゆく夏野
大阪府      椋本望生
夏野来て去年と同じ石の上
ぽぽぽぽとぽぽぽぽとゆく大夏野
夏野ゆく後ろに声を掛け乍ら
見晴るかす水平線の夏野かな
夏野原ひよこと貌出すハクビシン
東京都      原井壮
野球帽ヌッと現はる夏野かな
切り株に腰をかけたる夏野かな
大の字の胸反り返る夏野かな
知床の夏野を鹿の駈け抜けり
若臭きいきれに咽び大夏野
奈良県      一人坊
行く先は夏野の雨に行く人や
母を追い泣く子と同じ夏野ゆく
会釈もせずすれ違う急く夏野かな
神奈川県      皆空眞而
ひとすじの径を歩荷の夏野原
夏野尽き高度を稼ぐつづら折り
虫撮るや妻は夏野の遥か先
ブラジル      西山ひろ子
故郷の匂ひの中や夏野かな
地平線へ見え隠れして夏野原
一世紀の歴史の眠る夏野かな
開拓の昔栄えし夏野かな
夢と消え移民の気概夏野かな
埼玉県      櫻井俊治
塩舐めの牛の涎や夏野原
老いの眼に牛追いかけし夏野かな
神奈川県      松風子
見渡せば秩父連山大夏野
ざわざわと風の音する夏野かな
ランニングパンツ姿の夏野原
風の樹々一花だになき夏野原
利根川の夏野の風のノスタルジア
大阪府      津田明美
草の声風の声聞く大夏野
どこまでが山裾夏野どこまでも
ハルカスや上町台地大夏野
富士裾野夏野に融けて新幹線
書写山へ夏野を渡すロープウェイ
ブラジル      林とみ代
寝そべりて夏野見下ろす山の宿
腰弁当下げて夏野に吟行す
夏野原牛千頭の移動かな
茜色に夏野を染めて夕日落つ
競争馬の訓練してる夏野かな
ブラジル      玉田千代美
リュックサック背負ふ少女や夏野原
野良猫の子連れに会ひぬ夏野かな
夏野ゆく三山越ゆれば母の里
出会ひの場夏野と決めて急ぎけり
夏野行く風に押されて老の試歩
大阪府      永田
車椅子辞して夏野に君臨す
手庇の肘きよげなり大夏野
東京都      かつこ
車中から夏野なつのとラーメン屋
駅降りて夏野を歩き海辺まで
神奈川県      龍野ひろし
野生馬の群れ遊びたる夏野かな
寝ころびて雲眺めゐる夏野かな
木道の空まで続く夏野かな
岐阜県      ときめき人
信州の緑響けり夏野風
神奈川県      原川泉水
母仔馬木陰に寄り添う夏野かな
青天と夏野我が物グライダー
原爆痕夏野と紛う一写真
夏野行くワンダフォーゲル風が追う
湖を眺めて風恋う夏の原
神奈川県      伊原文夫
大夏野三内遺跡廻りけり
富山県      岡野満
夏野行く電車が照らす闇夜かな
徒歩にして芭蕉を辿る夏野かな
休日の人影増えて夏野かな
北海道      北野きのこ
園児らの歌う夏野や不発弾
バス停と俺だけが知る大夏野
トラックの砂塵消え行く夏野かな
夏野伸ぶ縦横そして空へ伸ぶ
終戦や死と死と死と死と大夏野
東京都      住澤義英
榛名山夏野の先に浅間あり
榛名湖を飲み込むような夏野かな
神奈川県      成田あつ子
犬放てばたちまち点の夏野かな
諸の手を翼に吾子は夏野ゆく
グライダー影も飛び立つ夏野かな
振り向けば牛のつき来る夏野かな
空と分かつ一線青き夏野かな
大阪府      太田紀子
廃線の吸ひこまれゆく夏野かな
一両電車見え隠れする夏野原
放牧の牛点在する大夏野
岐阜県      凡句楽
フリスビーを飛ばして犬と大夏野
遠景に富士眺望の夏野かな
のつたりと牛くつろげる夏野かな
パラグライダーつぎつぎ降りる大夏野
膝枕借りて微睡む夏野かな
愛媛県      加島一善
筑後川青野断ち切り滔々と
夏野割る戦車の列や富士へ富士へ
肩車されて見下ろす夏野かな
牧童の眠りこけたる夏野かな
ちらほらと牛放たれて夏野かな
京都府      山野うさぎ
靴紐の結び目かたし大夏野
白龍のごとき雲ゆく夏野哉
夏野ゆく親子の馬よひかる尾よ
東京都      岩川容子
単線の夏野広がる無人駅
犬走る雨後の匂いの夏野かな
太陽がゆがんで沈む夏野かな
夏野行く長距離便はふるさとへ
埼玉県      守田修治
安政の地蔵を隠す夏野かな
あるかなし夏野の風に脱ぐ帽子
握り飯夏野を転げ行きにけり
雲さえも一息入れる夏野かな
売りに出す牛連れ帰る夏野かな
大阪府      鈴木健夫
夏野には放り出されたドンゴロス
東京都      石井昌男
スケツチや夏野に胡座ジャージ服
自転者の突つ切つて駅大夏野
病み付きのグランドゴルフ大夏野
千葉県      横井隆和
・天下り草薙ぐ大蛇や大夏野
・風さわぐ黍の夏野や黒うさぎ
・子を囲み夏野を雨の犬一座
・刈り取りのサイロに薫る青野かな
福岡県      西山勝男
日の匂ひ風の匂ひの夏野かな
放牧の牛てんてんと大夏野
大いなる阿蘇をそびらの夏野かな
おちこちに嘶ゆ掛け合ふ夏野かな
目も遥に日の斑綾なす夏野かな
愛知県      斉藤浩美
夏野出て次の夏野へ自転車旅
大夏野リフトの足がふれてゆく
大夏野はるかに野外コンサート
終点も始発も夏野ひとり旅
測量士夏野かき分け出て来たる
滋賀県      村田紀子
夏野から飛ぶ鳥招く白い雲
口笛と犬の鳴き声夏野かな
鳥の声吸い込まれゆく夏野かな
草を抜く手止め見晴らす夏野原
夏野行く帽子二つと犬の影
埼玉県      哲庵
野良猫の見え隠れする夏野かな
夏野尽き灯台一基屹立す
うりんぼの列成し進む夏野かな
盲導犬訓練したる夏野かな
砲術の訓練ありし夏野かな
東京都      遠山比々き
ふるさとの山巡らせて夏野かな
夏野より出でて犬掻く耳の裏
めくられし袖下ろされて夏野かな
子の坊主頭うかべて夏野かな
送電線ゆるりと渡る夏野かな
千葉県      入部和夫
ひとすじの日射し眩しき夏野かな
千葉県      高倉真生
薬莢の一発足らぬ大夏野
山羊ともに夏野のひかり連れ帰る
鋭利なる空母の影を秘め夏野
東京都      右田俊郎
大夏野国境示す鉄条網
大夏野送電塔の聳えをり
ひとり行く白杖の人大夏野
朽ちかけた夏野の道の道しるべ
夏野ゆく少女ふたりの弾む手話
神奈川県      三好康子
傘ひろぐその木何の木大夏野
卯月野にうごめくものや星の影
自然分娩の隠岐の放牧牛夏野
怒濤打つ隠岐の赤壁大夏野
卯月野のあまたの生命星一つ
福岡県      多事
億万頭入れて牛色夏野果つ
潮騒の馴染む夏野や御崎馬
暮れ行くに臭ひ尖れる夏野かな
旗一旒水玉そよぐ夏野の子
疲れ得ぬ吾子のものなり大夏野
宮城県      AQ
ざりざりと命を削ってゆく夏野
夏の野の眩しのろまな虫五匹
千葉県      玉井 裕朗
くるぶしに雨の香残る夏野かな
瀬音残し雨の立ち去る夏野かな
東京都      五十嵐 秀山
白馬村の夏野の里のジョギングに
駆け回る背にじりじりと夏野かな
ケロリンの看板錆びて夏野かな
豊かさもひもじさも知る夏野かな
函館の夜をまなうらに大夏野
東京都      三澤 三郎
夏野にて牛悠々と草をはみ
半世紀過ぎ去り見れば夏野消え
夏野にて古戰場の夢思う
神奈川県      髙梨 裕
夏野原いにしえびとの草草鞋
テラスなら夏野の風とコーヒーと
雲過ぎて旅の素泊り大夏野
暮れ行きて夏野一路に疲れあり
真中行く水脈遥か夏野原
京都府      中村 万年青
甲斐の空ぶどふの丘も夏野かな
生きている大地のそよぎ夏野かな
大夏野さがのは緑一色に