俳句庵

3月『水温む』全応募作品

(敬称略)

千葉県      柊二
水温む浮麸を呑める太き鯉
宮城県      石川初子
完食の弁当箱や水温む
愛知県      岩田遊泉
園児等のカートは二連(にれん)水温む
魚さばく妻の指先水温む
釣り人の群るる突堤水温む
闘病の妻は寛解水温む
木曽馬の母は臨月水温む
愛知県      遊泉(ゆうせん)
臨月の木曽馬の腹水温む
富山県      白川 千栄
やわらかき生きもの動き水温む
水温む田んぼの畦の芹のびる
うらの田の水温むころ夫癒えよ
気がつけば水温むかな皿すすぐ
日の過ぎて水温むがに話し掛く
福岡県      紙田幻草
ぽっかりと何かが浮かび水温む
対岸に甲羅干す亀水温む
水温む淵に動ける鯉の影
浮島に生気が戻り水温む
平凡の外に才なく水温む
新潟県      近藤博
水温みはやも水草芽吹き初む
水温み浮草ひたひた風に揺れ
ちょぼちょぼと流るる水も温みけり
水温み雑魚あぎとふやぱくぱくと
水温み釣り人のどかに浮子見詰め
愛媛県      渡邊國夫
大楠の齢千年水温む
四方の山映して湖の温みけり
大江戸に触るるデートや水温む
水温む野に出て聴こうシュトラウス
石投げに母と興ぜし川温む
岐阜県      金子加行
久々に逢いたき人や水温む
心地よく顔と手洗い水温む
山村に人の動きて水温む
城下町匂ひ戻りて水温む
吊橋に異国人揺れ水温む
大阪府      金成愛
水ぬるむコップが落ちたから割れた
水温むじいちゃんばあちゃんわかいわい
神奈川県      白銀
寒波の日 樹氷が舞う 水温む
水温む 夏日和なり 小春日で
古井戸の せつない空気 水温む
西方角 起点回せば  水温む
水温む 飛び石の怪 苔ももに
兵庫県      紫 桔梗
水温む水切り競ふ親子かな
手術痕だんだん薄れ水温む
餌競ふ鯉の大口水温む
水温む圃場整備の始まりぬ
水温む水車の回る道の駅
神奈川県      長田真紀
水温み岩から伸びる亀の首
水温み羽根整える白い鳥
スイスイと鳥一列に水温む
水温み水車の音も軽くなる
水温むちょっとお茶でもしましょうか
埼玉県      岸保宏
秩父路に遍路の杖や水温む
水温み後を押したる受験子や
水温む水玉模様ブラウスや
長野県      木原登
青き地球に住める倖せ水温む
機嫌よき雲を浮かべて水温む
こころの武装解くごと水の温みけり
魚偏に国字の多し水温む
さざなみは湖の鼓動や水温む
京都府      田端敏弘
水温む不自由な脚で廻る畔
工作を提げて道草水温む
水温むオールを止めて告げる事
水温む泥に小さき泡の粒
水温む母の残した旬のつぼ
東京都      石川昇
水温み鰭よく動く緋鯉かな
復興の未完のままに水温む
東京都      内藤羊皐
狂言は狐忠信水温む
水温む吃水線を滑らせり
先頭の木馬尿りて水温む
水温む玻璃の花瓶の六角形
水温む吉祥天の裳裾かな
ブラジル      林とみ代
水温む厨仕事も軽やかに
こだはりの失せて安堵や水温む
乳母車集ふ公園水温む
水温む頃の予定や船の旅
水温む恋の噂もちらほらと
神奈川県      佐藤博一
水底に魚影きらりと水温む
高瀬川まくらの下の水温む
手を打てば鯉の寄り来て水温む
菜を洗ふ妻のハミング水温む
故郷は井戸ある暮らし水温む
兵庫県      噂野アンドゥー
雨が降る 花びら落ちて 水温む
風呂の蓋 閉めずに放置 水温む
水温む 海つめたくて あたたかい
春なれば お酒ぬるめの 燗でいい
水温む 沖縄告げる 春濁り
東京都      伊藤はな
街道の川の渡しや水温む
野の猫の舐めて行きたる水温む
ゆるやかに母の繰り言水温む
多摩川の寂の流れ水温む
水温む午後の散歩に車椅子
千葉県      伊藤博康
水温み子どもの服は泥だらけ
水温み泥んこ遊び始まりぬ
下流から水の温みの遡り
水温む長靴に泥付きにけり
陽の射して硯の水の温みけり
神奈川県      川島欣也
舟端をたたく小波水温む
船頭の鼻唄軽ろし水温む
朝まだき俎板の音水温む
水温む亀の親子の甲羅干し
擦る墨の輝く池や水温む
神奈川県      片桐栞志
水温みどつこらしょつと腰浮かす
水温みいつもの場所へ出社する
駅弁に入りし青菜や水温む
水温みのろりのろりの水面かな
米を研ぐ厨の朝日水温む
東京都      千味幸太郎
歯磨きの香りほのかに水温む
河馬の尾のピクリと動き水温む
ゆっくりと沈む雑巾水温む
朽ち果てし放置ボートや水温む
水仕終え触れる妻の手水温む
長野県      横山一成
田の畔の土黒々と水温む
なにはともあれ峡の水温む
草むらに少年の靴水温む
老婆たち見つめる川の水温む
水温み瀬に戻りたる魚の影
東京都      岩崎美範
被災地に戻る笑顔や水温む
シャンシャンの膝かつくんと水温む
水温むまつたり流る木の葉舟
求愛の河馬の欠伸や水温む
水温むいつもながらのことなれど
兵庫県      はなちる
鍵盤の熱き指先水温む
水温む胎児でっぷり居座るや
水温む君の肩越し逝く風や
水温むモデルの如く闊歩する
初登山リュックも軽し水温む
埼玉県      飯塚璋
水温む鯉の口元丸く開く
埼玉県      よしこ
水温む汽笛の一つ秩父線
水温む厨の窓辺砂時計
流木の溜まる渡し場水温む
水温む青春切符二枚買ふ
苔むすや瀬音かそけし温む水
兵庫県      山地美智子
池の端で休む散策水温む
農業は国の礎水温む
水温む新幹線の見ゆる郷
旧友と歩く故郷水温む
水温む田毎に違ふ畝の向き
東京都      早川高典
髪ゆだね美容師に恋みずぬるむ
神奈川県      原川泉水
水温む川辺の草踏み子等が行く
若狭井の水も温むや東大寺
水温む池面さわがし鯉の群
水温み淵の蛟龍天睨む
おたいまつ消えて若狭の水温む
神奈川県      井手浩堂
船頭と交す一ゑ水温む
洗ひ場の石のつややか水温む
とも綱の張りて滴る水温む
すつぽんの潜める池や水温む
朝な夕な米研ぐ水も温みけり
神奈川県      長瀬正之
半ズボンにても濡らす児水温む
水温む水車のグリス注ぎ足しぬ
水温む水切り石の5段跳び
腰落とす生業忙し水温む
水温むハンドクリーム棚の奥
兵庫県      岸野孝彦
水温む鎌倉歩み銭洗う
プラモデル不沈大和に水温む
翠なる堀は光て水温む
水温む還暦過ぎの孤児となる
水温む待ち続けた日今日も来ず
三重県      後藤允孝
豆腐屋の仕込みの水も温みけり
あやす子の頬柔らかや水温む
指先の痺れもとれて水温む
水温む遠回りして帰ろうか
銭洗ふ弁財天の水温む
大阪府      森村富美
池の端洩れる来るひかり水温む
青沼に波紋のひとつ水温む
漉きげたの和紙やわらかく水温む
栃木県      長浜 良
分校に女先生水温む
分校の自然観察水温む
婚の日の近き先生水温む
水温むついと一尾の魚影
神奈川県      塚本治彦
水温む漕ぎて進まぬ盥舟
厨房の賄飯や水温む
フラスコを洗ふ教師や水温む
蒲鉾の塗り包丁や水温む
使ひ減りしたる俎水温む
奈良県      一人坊
水温みめげる気払い発つ遍路
歩数計五千歩毎に水温む
水温む帰路射す陽光夜勤明け
大阪府      椋本望生
水温む家のパンダは肩の上
薬食ぶ七十の気骨水温む
老残のコヨーテ急げ水温む
黄泉を向く吃水線や水温む
白鷲のスローモーション水温む
東京都      五島洸
水温む青き地球を宇宙より
墨を磨る水も温みぬ遺言書く
白雲の触れゆく水のぬるむかな
画板抱え繰り出す子等に水温む
水温むコップに入れ歯哄笑す
奈良県      平松 洋子
縮こもる山野もいよよ水温む
夫婦仲時に気配り水温む
優先席座ること慣れ水温む
茨城県      山県太
弁財天琵琶抱きついて給い水温む
あそぶ子の声の明るさ水温む
出逢いしは古里の水温む頃
山なみは朝のむらさき水温む
水温む岩間を走る魚の影
神奈川県      猪狩千次郎
いまはなき塔への野道水温む
水温む雀どうしが喧嘩して
硯石の池渇きたり水温む
大阪府      藤田康子
静まりし泥土の池も水温むけど
南よりふふふふふふと水温む
大阪府      津田明美
水温む山ふところに聞く読経
三川の平野くまなし水温む
小康の検査結果や水温む
古都水都豊かに下り水温む
山寺に小さき手水舎水温む
神奈川県      梶満理子
雨のあと街路樹映す水温む
水温む小石投げあう子らの声
キラキラと水面が揺れる水温む
公園に子ら来て遊ぶ水温む
水温む時を忘れて話し込む
三重県      西井治男
水温み陣取り合戦たけなわに
水温む大陸からの送りもの
新潟県      じゃすみん
水温む小中学校統合す
北国の風船一揆水温む
地下鉄へ曳く旅鞄水温む
旅に巻く赤いバンダナ水温む
転院の介護タクシー水温む
神奈川県      矢神輝昭
水温む水かけ不動相崩し
懺悔して解るる情け水温む
水温むとぎ汁鉢へ注ぎおり
水温む豆腐の角もまろくなり 
孫抱きて父の一徹水温む
埼玉県      哲庵
堀端の思い出ベンチ水温む
捨舟に番の家鴨水温む
鎌倉の十井巡り水温む
軋みつつ開く閘門水温む
唯足るを知る蹲や水温む
神奈川県      河野肇
八十年泳ぎおよぎて水温む
黒光る書道部の床水温む
図書館の守衛の笑みや水温む
人生といふフラダンス水温む
乳癌と告げられてあり水温む
神奈川県      守安雄介
ビル谷戸の電動瀑布水温む
水温む恋の溜息吐きし鯉
水温むスカイツリーの影ゆるむ
水温む亀の頭の反りかえる
水温む孫の水切り十を超す
ブラジル      玉田千代美
水温む心もゆるみ忘れがち
水温む苦労した日も今は過去
神秘なる底抜け池も水温む
神奈川県      鴨野箸
顔すすぐ回数増えて水温む
水温む八方塞ぎ良くなれと
埼玉県      櫻井俊治
せせらぎに青菜濯ぐや水温む
水温む太き二の腕樽洗ふ
宮城県      林田正光
太鼓橋草履の響き水温む
水温む水面の子虫水尾つくる
穏やかな朝の洗顔水温む
故里の小川笑ひて水温む
水温むスキップの幅拡がりぬ
岡山県      岸野洋介
小流れをまたぐ飛び石水温む
包丁を研ぐ指先や水温む
堀巡りあやつる水棹水温む
この町は二度目の旅居水温む
妻の忌の来ればせせらぎ水温む
東京都      右田俊郎
待ち侘びた報せ届きて水温む
水温む細胞検査結果白
釣り堀に常連の顔水温む
主治医より退院の許可水温む
水温むひたすら浮きを見つめをり
大分県      輝久
近道に兄と小川や水温む
水切りの童や独り水温む
水温む庭で一振り考の竿
石臼の布袋やくるり水温む
石橋を仰ぐ素描や水温む
神奈川県      月野木潤子
舫ひ舟触れ合ふ岸や水温む
水温む頃なり郡上忙しかろ
夫逝きしころなり水の温むころ
水温む影といふ影抱きつつ
春水や動き初めたる散居村
山口県      ひろ子
菜園の水やりやさし水温む
水温む名水運ぶ車列かな
放課後の子ら声からし水温む
福岡県      西山勝男
水温む鳳凰堂を影と添ひ
水温む賀茂の河原に人の影
小流れの音も清かに水温む
水温む筧の流れよどみなし
水温む阿蘇の源流とこしなへ
山口県      山縣敏夫
校庭に子等の呼び声水温む
愛犬と朝の散策水温む
賑やかな子等の登校水温む
華やかな五輪を終えて水温む
久し振り妻とドライブ水温む
東京都      勢田清
水温む浅瀬に魚の影多し
足裏に貝の感触水温む
山際の浅瀬早くも水温む
川底の砂踏む素足水温む
対岸に濯ぐ人在り水温む
富山県      岡野満
水温む気の向くままに理髪店
スキップの園児の声や水温む
水温む門出の準備急ぎけり
神奈川県      ぐ
万物の輪郭ゆるむ水温む
産声のまろき牛舎や水温む
水温めば我が腸の旨味増す
春月を夜毎みたして水温む
粘性の圧力まとひ水温む
東京都      紫温
水温む ファールボールを 素手で捕る
水温む 終日(ひねもす)猫は 毛繕う
グローブの 柔らかくなり 水温む
東京都      温笑
水温む 饒舌なりて 猫日和
猫のあと 追って日当たり 水温む
水温む 洗濯屋さんへ 足繁く
東京都      球温
合格の 報せ手水の 水温む
オープン戦 球音高く 水温む
水温む 猫も気にする 花粉症
ブラジル     広田ユキ
水温むモネのアトリエ訪ひし日も
水温む釣り人一人また一人
青空を映して池の水温む
水温むつと折り返す稚魚の列
水温む放流稚魚のよく育ち
愛知県      斉藤浩美
キッチンより鼻唄洩れて水温む
水温む袖まくり上ぐ割烹着
板長の鼻唄水は温みたる
水温む金子兜太てふ光りかな
部室には部室の匂ひ水温む
北海道      飯沼勇一
亀甲羅干す大石や水温む
脱藩の道の手水舍水温む
腰伸ばす農夫の影濃し水温む
釧路川下りの舟や水温む
湖の端子らの歓声水温む
東京都      豊宣光
皿洗ふ妻の白き手水温む
水温む故郷の川変はりなし
水温む亀が首出す寺の池
さまざまな別れの時や水温む
海望み走る江ノ電水温む
三重県      平谷富之
水温む川面の魚も元気よく
食器洗ふ介護士の笑み水温む
東京都      中田ちこう
進路きめ汲む閼伽水の水ぬるむ
神奈川県      龍野ひろし
縦横に巡るクリーク水温む
掘割に土蔵の影や水温む
水郷の堀に洗ひ場水温む
福岡県      多事
練りわさび利き落ちにけり水温む
水温む夫の部屋の荷いかがせむ
老鷺のミリも動かず水温む
トーストのかなり跳ねたり水温む
ガサガサにクラムボンゐた水ヌルム
神奈川県      伊原文夫
水温む陽だまりの先街光る
愛犬のリード緩めて水温む
鯉ゆるり口を開けたり水温む
神奈川県      三好康子
同郷の歯科医の池や水温む
現れて消ゆ気泡の吐息水温む
雲映し風をうつして水温む
水温む岸辺に亀の甲羅干し
閼伽桶を洗う手やさし水温む
埼玉県      彩楓(さいふう)
新任の小隊長や水温む
水温むバリウムごくと飲めませぬ
半襟は淡き桃色水温む
沈下橋くぐる川船水温む
母と子の追いかけっこや水温む
埼玉県      守田修治
水温む京への車窓放浪記
台所盗酒旨し水温む
水温む灯は釣の宿だろう
水温むアナウンサーうれしげに
展望台眺るはるか水温む
神奈川県      永井良和
浚はれて池は黙せり水温む
池の辺に七つの花壇水温む
水温むせせらぎ蒼く光りけり
水温む池を追はれし外来種
水温むセットし直す万歩計
神奈川県      秋風子
道のべの匂ひの渚水温む
ゆるやかに空ゆく雲や水温む
水温むゆっくりわたる太鼓橋
裏路地の井戸端会議水温む
球体に蒼き静脈水温む
北海道      北野きのこ
水温む足裏そして足首へ
水温む別居の父と鴨川へ
水温む別居の父を待つ妊婦
水温む鳥のとぷんと潜りけり
水温む墓前にあそこの銅鑼焼きを
神奈川県      海野優
水温む九に八を掛け四を足して
こんこんと狐の嫁入り水温む
東京都      岩川容子
水温む池の静寂やぶる鯉
朝市の生みたて卵水温む
水温む笑みやわらかき伎芸天
水温む痺れやわらぐ指の先
東京都      皆川里枝
水温むすこうし鯉の動きたり
つくばいの映す青空水温む
水温む母の得意ないなり寿司
水温むラ音の広がる水琴窟
水温む洗濯物のゆるむ音
滋賀県      村田紀子
水温み時間忘れて立ち話
猫の目に誘われ歩む水温む
話し声穏やかとなり水温む
二重跳び出来たできたと水温む
水温む握手する手に夕日射す
千葉県      横井隆和
・水温む框に素足の退院日
・しなやかに豆腐断つ手や水温む
愛媛県      加島一善
母の忌に洗う墓石や水温む
どんこ船漕ぎ出す堀や水温む
泡ひとつ遅れてよっつ水温む
御手洗池泡出づ頃や水温む
少女笑むルノワールの絵水温む
東京都      住澤義英
泳跡にカモが顔出し水温む
水温む葦刈跡のエサ探し
陽だまりに地蔵の如く水温む
水温む孤高の鳩の声ひとつ
水温むスピード緩めランニング
東京都      遠山比々き
紙パンツ破りて重し水ぬるむ
神奈川県      成田あつ子
水輪なき雨の芦ノ湖水温む
池の面の雲動かずや水温む
銀輪と乗り込む渡し水温む
水温む赤き長靴放りだし
水温む湧水に砂躍りけり
埼玉県      小玉拙郎
老い猫の先に気づくや水ぬるむ
水ぬるむ荷物の軽き南旅
ハイボールますます薄く水ぬるむ
神奈川県      石川 夏山
水温む草がぽよぽよ湧き出でる
水温む土手を散歩の車椅子
公園に子どもがどっと水温む
水温むブランコを漕ぐ高く漕ぐ
愛知県      新美達夫
杭に乗る鵜の横並び水温む
水温む幅一間のお殿橋
水温む六万石の小京都
茶袴の大正ロマン水温む
神奈川県      皆空眞而
せせらぎに玩具の水車水温む
鷺の腹濡らして水の温みけり
釣糸をひとすじ沈め水温む
兵庫県      ぐずみ
墨壺の弾ける香や水温む
猫顔を洗ふ小川や水温む
ナウマン象眠れる湖や水温む
マリンスノー降る黒潮や水温む
着衣せしアダムとイヴや水温む
岐阜県      村瀬佐智子
水温むベーコンエッグとビバルディ
一斉に飛び立つすずめ水温む
スケボーの若者の声水温む
水温みわだかりまでも解けてゆく
水温む散歩の道ののびてゆく
京都府      新井ゆかり
許せると気付いた時から水温む
東京都      内山岱鵬
水温み渡り廊下を行く裸足
手水鉢宇宙(そら)を映して水温む
水彩画ゆらりと緋鯉水温む
運動靴買いに孫連れ水温む
湧き水のコップ凹みて水温む
千葉県      下総真里
地下足袋の副園長や水温む
水温む靴の踵を張替えて
東京都      松下 早苗
石段に少年三人水温む
水温む寄り道多き散歩犬
水温む亀は首伸べ外気浴
東京都      飯田 哲司
水温む野辺で草摘む祖母と孫
水温む水もをすべるつがい鳥
近き国水温むのはいつの日か
神奈川県      髙梨 裕
水温む掘り割り渡るトラクター
水温む真中じわつと外来種
水温む郡上八幡鯉の径
水温み生き長らえし微生物
水温む地球どこかで揺れており
京都府      中村万年青
水温み樽の金魚も楽しそう
朝夕の水仕捗り水温む
待ち侘びし水道水の温みたり