俳句庵

11月『蜜柑(みかん)』全応募作品

(敬称略)

色づける蜜柑や海の見える丘
はじかれて小粒みかんの甘しこと
お願いね!母のメモ書きみかんのる
さあおいで蜜柑ころがし餌付台
みかんむく袋の数を競ひつつ
潮の香を引き寄せ甘くなる蜜柑
鳥がきて啄ばむみかん熟す順
鈴生りの蜜柑気になる無人駅
テーブルに笊山盛りのみかん置く
思春期の口は重たく蜜柑剥く
酸っぱいと片目を瞑る子の蜜柑
葉の付きし蜜柑が売れる道の駅
木枠入る暮れの金無垢玉蜜柑
蜜柑の皮上手に剥きて美味しそう
味忘る昭和の遠き蜜柑水
蜜柑狩海見えるまで登りけり
蜜柑剥く手に湯上りの温かさ
潮風に甘み増すてふ島蜜柑
胃袋に落ちて微熱の蜜柑玉
地下街で合ふ故郷の伊予蜜柑
湯煙やジッチャと孫と蜜柑玉
海光をひねもす浴びて蜜柑熟る
夕日射す網棚に揺れ蜜柑籠
海峡の入日見下ろす蜜柑山
みかん色クレヨンにぎり空をぬる
回覧板届けて蜜柑呼ばれけり
風邪をひきホットみかんに母の愛
マジックで大書してあり蜜柑の値
みかんの木乗って実をもぎ夕日見る
エアコンや蜜柑文化を変えにけり
皮干して湯ぶねに浮かべみかん色
剥き捨ての皮に滑りし蜜柑狩
虹の先ミカン畑と海の藍
針穴に果汁浸み出す蜜柑釣り
黒潮を浴びて色増す蜜柑かな
外からは甘さ分らぬ蜜柑かな
記念樹の数ふるほどの蜜柑かな
蜜柑箱洗濯物が届きけり
蜜柑吸ふベツトの母のおちよぼ口
摘み食い匂いでばれる蜜柑かな
蜜柑二個小さき頬あてはいチーズ
初孫の名前思案や蜜柑むく
棟上やエプロン広げ蜜柑受く
鬼平の頁繰る指みかんむく
蜜柑むく太き指先父の膝
蜜柑剥く薬缶の息のやわらかし
皮一つ君は優しく蜜柑脱ぐ
英単語暗記カードや蜜柑剥く
蜜柑山橙滲む麓の灯
一人聴くヘレン・メリルや蜜柑剥く
群青の空を夢見る蜜柑畑
みかんむくなんでもない夜の句読点
蜜柑投げ機関車は行く舞踏会
みかん山木のある限り清々し
蜜柑積みポアンカレ予想想いけり
旧藩の名もある八百屋の蜜柑箱
蜜柑箱蛍雪節時代夢の中
ていねいに筋取る蜜柑の生ぬるき
伊予からの孫の知らせと蜜柑来る
手にすればまず揉んでみる蜜柑なり
じゃんけんでみかん取り合う幼き日
蜜柑剥く乳臭きものに溺れつつ
あまそうに見せる蜜柑の赤ネット
母が剥く冷たき蜜柑温かく
縁日の賑わう参道みかん飴
蜜柑狩りまだまだ軽い孫を抱く
子の行事欠かさず持たす蜜柑かな
お日さまの色閉じこめて蜜柑山
食卓の真ん中にあるみかん山
手の爪を黄色くさせて蜜柑剥く
読みかけのページに蜜柑を載せて置く
半分に分けた蜜柑まず愛でる
活断層隆起の走る蜜柑畑
まだ青き蜜柑が熟す仏前で
額縁の車窓の富士や蜜柑剥く
群青の海を見下ろす蜜柑山
岬には岬のひかり蜜柑熟る
選りあひて蜜柑は固きもの残る
日とひかりここに集めて蜜柑山
真ん中にみかん団欒卓となる
蜜柑は膝駅弁の箸口で割り
団欒の果ての夜中の蜜柑かな
濃みどりの葉むらに照るや熟れ蜜柑
5年経ちやっと二つの庭蜜柑
瀬戸内の島々蜜柑の山の見ゆ
海側と山側のあり蜜柑山
蜜柑狩葉むら向ふも嬉々の声
朝市の詰め放題の蜜柑かな
かの島は吾が古さとの蜜柑畑
海沿ひの道に蜜柑の袋売り
蜜柑狩まづは試食と一つもぐ
山盛りの籠の蜜柑やテレビ見ゆ
残照にいよよ色映ゆ熟れ蜜柑
蜜柑剥く指を黄色に染めにけり
旅人に冷凍蜜柑もらいけり
みかん箱千代紙ちらしおもちゃ箱
降り立った駅に蜜柑の花薫る
海はるかゴンドラ渡る蜜柑山
雪だるま夫婦のように蜜柑乗せ
木製の昭和は遠きみかん箱
美しい女の手の平みかん色
硝子戸の日差しを膝に蜜柑剥く
窓際に蜜柑並べてインテリア
給食のみかんポッケの仲間かな
しあわせは篭いっぱいの蜜柑かな
新聞紙広げみかんの皮干しぬ
わが妻と出会いし頃や青蜜柑
君と食む蜜柑の味は炬燵色
蜜柑出て炬燵の姿定まれり
青かりし蜜柑の皮の生意気や
遠き日の爪を染めたる蜜柑かな
蜜柑むく母の手にしわなかり頃
一房に一言交わす蜜柑かな
駄菓子屋に昭和の瓶にみかん水
丁寧に蜜柑の筋とる父の癖
眠る子の頬に涙と掌にみかん
蜜柑ある限りは続く会話かな
蜜柑落ち転がる先は瀬戸の海
寂しさに海光の中蜜柑剥く
密柑山みかんの色の陽が沈む
しずけさや老いばかりゐて蜜柑島
告白に蜜柑一個を宙に投げ
鍵つ子の「ただいま」を待つみかんかな
クレヨンでみかんお日様同じ色
テーブルのメモを押さえるみかんかな
遍路道みかんの花の風だより
お駄賃のポッケ膨らむみかんかな
みかん山まもりし従姉旅立ちぬ
弁当の隙間を埋めるみかんかな
店頭のみかんの色のいろづきぬ
おすそわけ戻る容器にみかんかな
みかん山色づき元気な過疎のひと
北国の訛飛び交ふ蜜柑島
蜜柑むく父母祖父祖母のゐるやうで
つらし夜や少しぬるめの蜜柑風呂
人柄を見抜かれそつと剥く蜜柑
お手玉の蜜柑るんるん弾む祖母
友の指みかんに染まり旬を告ぐ
結願の朝の蜜柑のたわわかな