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俳句庵
3月『桜餅』全応募作品
(敬称略)
- 独り居も又よし緑茶と桜餅
- 手頃なる土産に求む桜餅
- 道明寺糒の紅や桜餅
- 縁側に茶を持ち出して桜餅
- 手の窪に香り移せり桜餅
- 懐紙から移り香匂う桜餅
- ながらえて葉の香いとほし桜餅
- 桜餅母の土産にもう一つ
- 白もあり薄紅もあり桜餅
- 祖母の部屋桜餅の香漂えリ
- それありとかすかな香桜餅
- 茶柱も立ちて華やぐ桜餅
- 葉脈の様窪みある桜餅
- 桜餅香る包みの隣席
- 濹東といへば荷風よ桜餅
- 正客の葉まで食いたる桜餅
- これでもかと葉を着せられて桜餅
- もう少し待ってみるかと桜餅
- 長命寺父の忌毎の桜餅
- 桜餅主役はどちら茶を点てる
- 桜餅長命寺てふ寺はなし
- 孫の手に幸せ余る桜餅
- 女には女の話さくら餅
- 一粒に恋の香りて桜餅
- 桜餅しにせ店舗の改装中
- 入園を香が呼び起こす桜餅
- 日のあたるベランダの椅子桜餅
- 何ゆえに仄かが似合う桜餅
- デパ地下へ下りたついでの桜餅
- 桜餅蟠りの消えし頃よ
- 喜寿の坂野良着のままの桜餅
- 二人の桜餅一人桜餅
- さりながら仔細などなし桜餅
- 陽だまりの光景過ぎた桜餅
- 幕の間に二つたいらげ桜餅
- ほんのりと赤子のほっぺ桜餅
- 酒も好き桜餅も大好きで
- 懐かしや亡き母匂ふ桜餅
- 父のため砂糖ひかえめ桜餅
- 桜葉のアロマ毛布で餅眠る
- 望郷はふと湧くものよさくらもち
- 桜餅君を想ひて胸キュンと
- 新海苔の香りご飯ののぼる湯気
- 桜の葉お餅に着せて衣替え
- 桜餅半分あげる好きだから
- 桜餅お皿に載った春二つ
- 桜餅香りに遠い日の記憶
- 遠く来て買い求めけり桜餅
- 留守番をお願いとメモ桜餅
- 訪ふ君の変わらずにをり桜餅
- あの人の恥じらふ笑みや桜餅
- 残る葉に残る香りや桜餅
- 鍵っ子の今日のおやつの桜餅
- 桜餅皿に残る葉残らぬ葉
- 幼子のはにかむ仕草桜餅
- 路地入るや香り豊かに桜餅
- 桜餅食べて思い出またひとつ
- 桜餅知らず知らずの笑顔かな
- 桜餅毎年感じる家の味
- 婆さまが孫と分けあう桜餅
- 甘党の夫に土産の桜餅
- 注文が来てから作る桜餅
- 遠回りしても買いたき桜餅
- 桜餅女ばかりの賭けマージャン
- 常連の能書き聞くや桜餅
- 桜餅女系家族の格闘家
- お土産の味は昔の桜餅
- 不器用な男なりけり桜餅
- 酒やめて舌は老舗の桜餅
- 厨にて足る友のゐて桜餅
- 婚約の整い後の桜餅
- 初物を食べて長生き桜餅
- 白亜なる天守を供に桜餅
- 数読の途中休憩桜餅
- 天城越え踊り子来る桜餅
- 少女趣味抜けぬ翁や桜餅
- 桜餅地蔵に供う渋茶かな
- 初物に西向き笑ひ桜餅
- 桜餅指折り数え娘買う
- 桜餅家族団欒てふ昔
- 桜餅紅き毛氈千の風
- こんな日は母と二人で桜餅
- 建長寺天下禅林桜餅
- デパートのショウウィンドウの桜餅
- 墨堤のそぞろ歩きや桜餅
- 雨の夜一人で食べる桜餅
- 菓子折の片方に寄りぬ桜餅
- 雛壇に一つ供(そ)えたい桜餅
- そのままの葉ごと食むべし桜餅
- 桜葉のほのかにかほる和菓子かな
- 恙無く齢を重ぬ桜餅
- ほのかなる春の香(か)かおる桜餅
- 緋の床几掛けて相席さくら餅
- 桜餅食べて思うは母のこと
- 相席に軽き会釈やさくら餅
- 春の香(か)がほのかに薫る桜餅
- 年金の日日にもゆとり桜餅
- ほのかなる母の想ひ出桜餅
- 母在らば百の齢やさくら餅
- 桜餅やっと塩味の調和知り
- 桜餅まづ香と色を味はへり
- いつもながら風呂敷より桜餅
- ポケットに句帖を仕舞ひさくら餅
- 桜餅紅の加減を茶匙ほど
- 桜餅買ってあるよと母の声
- 桜餅葉を食べる母すてる父
- 葉一枚残して尽きぬ桜餅
- 桜餅別腹ありと妻は二個
- 嬉しきは花の添へある桜餅
- 店先に水琴窟や桜餅
- 食べ終へてなほも残り香桜餅
- 桐箱のカステラ並ぶ桜餅
- うとうとと眠りのなかに桜餅
- 桜餅書(ふみ)のとなりに座りたり
- 菓子皿に三つ四つ在す桜餅
- 桜餅回転寿司の皿にあり
- 仏前に桜餅好く母なりき
- 一周忌父の墓前に桜餅
- 花どきを一足先に桜餅
- 桜餅居間の偕老むつまじき
- 葉にこそ季節の移ろふ桜餅
- 桜餅口のかおりは大島や
- 桜餅ガラスの奥でよい感じ
- 桜餅ぶつぶつありし道明寺
- 初恋をほんのり偲ぶ桜餅
- 桜餅少女の眼して食みぬ
- 少しだけ大人になりて桜餅
- ままごとへ訪ふ客の桜餅
- ハイヒール脱いでいただく桜餅
- 鉄瓶の炉に湯のたぎりさくら餅
- 一年生大きな希望桜餅
- 華やぐや桜餅売る婆の庵
- 桜餅今日はバレエの発表会
- 上棟の神にも供へ桜餅
- 会席の水屋に匂ふ桜餅
- 桜餅うれしき重さ買ひにけり
- 毛細管のごとき葉脈桜餅
- 桜もち食みて別れし友の亡く
- 桜餅春慶塗の楊枝添え
- 桜もち母とふたりの時過ぎて
- 少女より乙女になりぬ桜餅
- 送別の句会に配りさくら餅
- 陳列の紅で微笑む桜餅
- 桜もち懐紙に移り香の仄か
- 桜の葉優しく包み笑ってる
- 穏やかに齢重ねて桜餅
- 瞳を閉じて桜の香りもっちりと
- 塩漬の桜葉うれし長命寺
- 食べようかはずして食べる桜の葉
- 天平の貌で食せり桜餅
- もっちりと桜の色の花びらよ
- 桜餅見守るように織部焼き
- わびさびの香り嗜み茶をすする
- 桜餅散らない内に召し上がれ
- 桜葉の塩味キリリと舌を過ぎ
- 矢絣や赤い床几に桜餅
- 深更に独りで食べる桜餅
- 文字数字かすむ齢に桜餅
- 妹の雛飾りに桜餅
- 元禄の色と香りの桜餅
- 茶を飲んですべて消え去る桜餅
- 宴席はことばの坩堝桜餅
- 京都旅行道明寺粉の桜餅
- 孫を抱きほのかに香る桜餅
- 葉は鹹く生地は薄く餡は甘く
- ダイエット敵となりたる桜餅
- 酒豪とは昔のことよ桜餅
- 葉っぱまで祖母の味する桜餅
- 花見れば道は自ずと長命寺
- 桜餅君と食べたら尚甘き
- 目つむれば遠き日のある桜餅
- 四代が好みし物や桜餅
- てのひらも桜に染まり桜餅
- 食紅の色ほんのりと桜餅
- 真っ白な懐紙に透けて桜餅
- 早春を手作りにして桜餅
- 桜餅伊万里の小皿に咲きにけり
- 一服の茶をたて愛でる桜餅
- 風向きの変はりし隅田川桜餅
- 病む母に四分の一の桜餅
- 味噌っ歯が笑って照れて桜餅
- 遠回りして買ふ長命寺桜餅
- しばし沸く老人ホームや桜餅
- 気疲れの妻との旅や桜餅
- 初孫へ香りだけでも桜餅
- おほかたは眼楽しむ桜餅
- 毛氈に男も交じる桜餅
- 無造作に桜餅食ふ若さかな
- 薀蓄の終り待ちかね桜餅
- 皿選ぶ楽しさのあり桜餅
- 桜餅強き女も口細う
- ひとつかみほかに匂う春の餅
- 桜餅葉っぱ食べよか残そうか
- 満開の桜思いつつ桜餅喰う
- 葉を求め母娘で作る桜餅
- 桜餅匂いを乗せて遠出する
- 桜餅一つに句座の和みけり
- おもい切り葉まで食らう長命寺桜もち
- 長命寺道明寺とて桜餅