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- 俳句庵 2018年12月 作品一覧
俳句庵
12月『年の市』全応募作品
(敬称略)
- 岐阜県 金子加行
- 人ごみを好みて向ふ年の市
- 潰されぬやうに母連れ年の市
- 裏通り知りて素早く年の市
- 人ごみに会話途切れし年の市
- 旅の人邪魔な歩きや年の市
- 長崎県 塩谷人秀
- 独身の膂力が迷子年の市
- 郊外が鯔背なるほど年の市
- 千葉県 唯我独善
- 年の市行き着く先は街の黙
- 年の市売っていますか父の影
- 年の市買いにきました父の影
- 年の市父の匂いはかの匂い
- 居並ぶは金歯の売り子年の市
- 神奈川県 守安雄介
- 気がつけば諸手の袋年の市
- 買わでがも人につられる年の市
- 髪結うて下駄で立ってる年の市
- 断捨離を忘れておりし年の市
- シャッターの救う暮らしの年の市
- 千葉県 柊二
- 妻のあとカートを引いて年の市
- 東京都 勢田清
- 法被着て店員若し年の市
- 人混みに流され行くも年の市
- 駅前に屋台並びて年の市
- 年の市ほそき裏道通り抜け
- 妻と来てはぐれそうなり年の市
- 新潟県 近藤博
- 年の市行き交ふ人の手ぶらなく
- 妻のメモ渡され出掛く年の市
- あれやこれ買ふにまごつく年の市
- 年の市ところ狭しと並ぶ店
- 買ひ過ぎや財布の軽し年の市
- 兵庫県 岸下庄二
- 手造りの夫婦箸買ふ年の市
- 嵩のある物は後にす年の市
- 余所見して妻と逸れる年の市
- 年の市抜け道もまた人の波
- 冷やかしの客も数多や年の市
- 大阪府 藤田康子
- 二人でずっと生きて来し年の市
- 黒門の賑はひ見たさに年の市
- 神奈川県 月のうさぎ
- 片隅の傷痍軍人年の市
- 埼玉県 飯塚璋
- ポケットに入る熊手を年の市
- 年の市屋台の幕間猫通る
- 年の市何買ふでなく一回り
- 愛媛県 砂山恵子
- 皿底に昨日の雨や年の市
- 銀紙の星拾ひをり年の市
- 雨降れば閉店の札年の市
- 年の市余りたるもの前に置き
- 蛸の無きたこ焼きのあり年の市
- 東京都 柳井裕一
- 年の市穏やかな雑踏の音
- 熊本県 貝田ひでを
- 年の市冷凍食品まとめ買ひ
- 年の市並ぶガラポン最後尾
- 混雑も時には楽し年の市
- 年の市妻のお伴の荷物持ち
- 愛媛県 渡邊國夫
- スーパーの軒下借りて年の市
- ちら見して過ぐ押し合ひの年の市
- 年の市女子学生のアルバイト
- 確かむる買物メモや年の市
- 限界集落暮の市なる車来る
- 島根県 GONZA
- 居ながらにネットで済ます年の市
- デパ地下の産地直売年の市
- 山里に移動販売年の市
- 混み合えるサービスエリア年の市
- 年の市乾物屋まで遠回り
- ブラジル 西山溥子
- 忙しげに聞ゆる響き年の市
- 温度計三十五度や年の市
- 掛声のシャツ一枚の年の市
- 熱帯の果物山積み年の市
- 青空に雲立ち昇る年の市
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 年の市思はぬ人と出逢ひけり
- 売り声のただ懐かしき年の市
- 掛け声の風突き抜くる年の市
- 東京都 新保徳泰
- ひやかしに覗いてみたる年の市
- おがくづに海老の跳ねたる年の市
- 年の市要らぬものまで買ふはめに
- 糶り声に気圧されてゐる年の市
- 寅さんのやうな口上年の市
- 栃木県 仲川光風
- 年の市チョコばななは孫へかな
- 赤べこも起き上がり小法師も買ふ年の市
- 年の市たこ焼食べる子の笑顔
- 神奈川県 佐藤博一
- メモ帳を確かめながら年の市
- 日めくりを最後に買ひて年の市
- 通り過ぎまた戻り来る年の市
- 売り上手買ひ上手いる年の市
- ポチ袋いくつか求めとしのいち
- 愛知県 遊泉(ゆうせん)
- ひやかしも客も絡げて年の市
- 値切られてやぶれかぶれの年の市
- 乾物を山盛りにして年の市
- 参道に野良猫ふえて年の市
- あちこちと議員の走る年の市
- 長野県 木原登
- アメ横の雑踏泳ぐ年の市
- 妻の父へ盆栽を買ふ年の市
- 年の市買ひしは醤油差一つ
- 亡き母の指図なつかし年の市
- 来し方は昭和平成年の市
- 神奈川県 金剛
- 金髪の男衆のいる年の市
- 来年もあなたと生きる年の市
- 買い物のメモどこへやら暮の市
- 暮の市はや酒盛りの小屋の裏
- 暮の市さいごに供花買うてゆく
- 神奈川県 川島欣也
- 人込みに連れ見失う年の市
- 平成の最後みとるや年の市
- 喧騒のなか身を浸す年の市
- 裏道の裸電球年の市
- 年の市財布小銭を残しけり
- 宮城県 武田悟
- 男とは買い物下手や年の市
- 勢いにまたも散財年の市
- 青森県 竹浪誠也
- 呉服屋は閉店セール歳の市
- 店先に野菜せり出す年の市
- 人混みの心地ほどよき年の市
- 昼酒の許し請ひたる年の市
- 混むほどに独りも楽し年の市
- 東京都 岩崎美範
- さりげなく粧せし妻の年の市
- あやにくの雨となりけり年の市
- 壊れゆく母の手を引く年の市
- 激動の昭和がここに年の市
- 浅草に人かきわけて年の市
- 大阪府 金成愛
- 年の市嫁は姑を恃みつつ
- 兵庫県 はなちる
- 年の市大黒さまに父の背や
- 人絶えて満天の星年の市
- 看板に墨新しき年の市
- 頭上からダルマ睨むや年の市
- 年の市人波避けてカップ酒
- 愛知県 木下澄枝
- 年の市思ひおもひの品並べ
- 呼び込みに買ふもの忘れ年の市
- 年の市どの路地ゆくも人の波
- 年の市門をはみ出す店あまた
- 托鉢僧なども出てゐて年の市
- 東京都 内藤羊皐
- 年の市同じ帽子の人ばかり
- 唄ふごと三本締や年の市
- 年の市同級生も爺となり
- 母の背を見失ひたり年の市
- 昼酒にからだ軽しや年の市
- 山口県 山縣敏夫
- 連れ合いと仲むつまじく年の市
- 年の市ハトが飛び立つ浅草寺
- 行列のできる店内年の市
- あな嬉し孫と一緒に年の市
- 古希過ぎてどこか愛しい年の市
- 愛知県 当卯
- 人と荷に押されて押して年の市
- レジ袋の持ち手食ひ込む年の市
- 年の市軋む発泡スチロール
- 物売の風に嗄れ年の市
- 埼玉県 まんたろう
- 冷かしも顔に出にけり年の市
- 賑はひの方へ方へと年の市
- あれこれと目移りばかり年の市
- ぶら下がる裸電球年の市
- 人集り爪立つ後ろ年の市
- 広島県 永野昌人
- 年の市酢章魚は赤く染められて
- 雑踏に妻と逸れて年の市
- 屠蘇散も忘れずふや年の市
- ゴム紐で吊るす銭籠年の市
- 大将の塩辛声や年の市
- 静岡県 城内幸江
- 鐘の音に早足となり年の市
- 人混みを覗き込みたる年の市
- 無造作にお釣り渡され年の市
- 東京都 石川昇
- 正月に孫来る知らせ年の市
- 暮の市思えば災害多き年
- 兵庫県 岸野孝彦
- 年の市終わり知らせる鐘の音
- 借景はスカイツリーや年の市
- 父母の手の温もり偲ぶ年の市
- 年の市美登利駆け行く夕べかな
- 年の市翠の堀の城下かな
- 宮城県 林田正光
- 楽しげに袖振り合ひて年の市
- 人波に逆らひて行く年の市
- 売る声の天まで届く年の市
- 年の市掘出物に目が止まる
- 忙しなき寺社境内は年の市
- 神奈川県 井手浩堂
- 来客の数年頭に年の市
- 妻のあとつきゆくばかり年の市
- 姉さんと気安くよばれ年の市
- 呼び声の渦の中行く年の市
- 幾度もメモを確認年の市
- 兵庫県 髙見 正樹
- 灯が入り絢爛競う年の市
- 年の市まずは下見と通り抜け
- 三重県 後藤允孝
- 平成のこれが見納め年の市
- 臥す父のパジャマ求むる年の市
- 声高に店主呼び込む年の市
- 年の市人の流れに逆らゐて
- 何を買ふことも決めずに年の市
- 徳島県 白井百合子
- 決心し備前手に取る年の市
- 年の市家路を急ぐ松阪牛
- 年の市最後の勝ちに叩き売り
- 待ち惚け一人黙って年の市
- 満員の駅三つ過ぎ年の市
- 神奈川県 塚本治彦
- 境内の句碑を隠しぬ年の市
- 物々の交換もあり年の市
- 現金でなければ売らず年の市
- 場所割りの禰宜の指図や年の市
- 売り買ひの喧嘩腰なる年の市
- 岐阜県 ときめき人
- 年の市ひょいと現る寅次郎
- 栃木県 垣内孝雄
- 年の市手提げにあまるもの買ひぬ
- 年の市買ふをためらふものばかり
- 年の市頼まれものをまず買ひぬ
- 年の市けふもあしたも混みさうな
- 年の市あれやこれやと目を遣りぬ
- 神奈川県 矢神輝昭
- 年の市貯金箱割り駆けださん
- 年の市吟行気分で物見遊山
- 年の市買物さらけ店の裏
- 大当たり鉦よく響く年の市
- 年の市家族の下着買うており
- 千葉県 伊藤博康
- 外人の口上や良し年の市
- 年の市知らぬ子供の手を引けり
- 田舎にはいなかの作法年の市
- 山の人海の人来る年の市
- メモ帳のチェック確かむ年の市
- 神奈川県 萩原照代
- 青い目の 少女に出会う 年の市
- 年の市 しめ縄抱え 人ごみへ
- 千葉県 長谷川ぺぐ
- 年の市売り勘定の大雑把
- 投げ売りのこゑ高々に年の市
- 値切らずに買ふ縁起もの年の市
- 年の市踏んで踏まれて睨まれて
- 年の市押され揉まれてままならず
- 東京都 佐藤博重
- 下駄履きて少し背の伸び年の市
- 年の市白き鼻緒の桐の下駄
- 下駄履いて背伸びしてみる年の市
- 仲見世をからんころんと年の市
- 神奈川県 松風子
- 買ふでなく見るを楽しむ年の市
- 押されあふこと今はなき年の市
- 胴間声の馴染みの顔や年の市
- マネキンの外を見てゐる年の市
- 懐かしき匂ひ漂ふ年の市
- 千葉県 四葩
- 取り皿は有田と決めて年の市
- 小さき町の小さき賑ひ年の市
- 母の後歩けば楽し年の市
- 駅前の俄か八百屋や年の市
- 神奈川県 猪狩 千次郎
- 裏道の仄暮れ急ぐ年の市
- 年の市三日の月と帰りけり
- 夕映の塔見上げつつ年の市
- おほらかに小銭散らすや年の市
- 老僧の下ろし金買ふ年の市
- 東京都 右田俊郎
- 賑わいに触れたくて行く年の市
- 雑踏の中に身を置く年の市
- 年の市挨拶かわす顔なじみ
- 年の市売り手買い手のべらんめえ
- ふるさとの訛り飛び交ふ年の市
- 奈良県 平松 洋子
- 呼び込みも楽しみながら年の市
- 補助券を集め福引き年の市
- 来年の福を探しに年の市
- 年の市寂しくて買ふ花ひと束
- 兵庫県 山地美智子
- 深刻な話をしつつ年の市
- 年の市独り暮らしの友も行く
- 姑の指示に従う年の市
- 年の市老父の力頼りにす
- 買い忘れ夫に頼みし年の市
- 大阪府 津田明美
- 年の市馴染みの香具師の赤ら顔
- メモになき物も幾つか年の市
- 平成の最後賑わし年の市
- 人いきれ酔いて出直す年の市
- 年の市どこからこうも人人人
- 東京都 伊藤はな
- 若き日や夫とはぐれた年の市
- 年の市むしろ囲ひの裏の闇
- 抽選の鐘にこをどり年の市
- 観音のてのひらにゐる年の市
- こまごまとメモを片手に年の市
- 東京都 伊藤之忠
- 昨夜からの雨も晴れ晴れ年の市
- あおあおと飾りの匂ふ年の市
- 年の市やんややんやと買はで過ぐ
- 鉢巻の声に足止む年の市
- さんざめく加勢の手締め年の市
- 神奈川県 龍野博史
- 年の市お国言葉の飛び交へり
- 年の市身を乗り出して値切りをり
- 岡山県 岸野洋介
- 年の市街の四つ辻社会鍋
- 古本屋ここだけ静か年の市
- 赤札をまた差し替える年の市
- 年の市青しめ縄の匂いたつ
- 搗き立ての餅売る姥や年の市
- 神奈川県 酔宇
- 歳々に飽かず見て来し年の市
- 買わず行く人の流れや年の市
- 引退の親父が座る年の市
- 和尚出で笑うて終わる年の市
- 年の市帰りの道は飲みに寄り
- 埼玉県 水夢
- 年の市ビルの真上に昼の月
- 年の市大判焼きをふたつ買ふ
- 夫の背を小走りに追う年の市
- 年の市近道探すふたりかな
- うなぎ屋の看板古び年の市
- 三重県 西井治男
- 年の市人里離れ座禅組む
- 足早に右往左往の年の市
- 埼玉県 櫻井俊治
- 山積みの注連縄選るや年の市
- 参道にはや小屋掛けの年の市
- 愛知県 斉藤浩美
- トロ箱の崩れてきたる年の市
- レポーターも試食してをり年の市
- 年の市景気を問へばぼちぼちと
- トロ箱を逃げ出す蛸や年の市
- 一本締めあちらこちらに年の市
- 千葉県 横井隆和
- ・傾く眼に肩で泣く子や歳の市
- ・歳の市外れて路地の月明かり
- 富山県 岡野満
- 狭い道なお狭くして年の市
- 定番の臼杵並べ年の市
- 足早に横目でチラリ年の市
- 山形県 齋藤碩志
- 年の市杖突き老人紛れ込み
- 通販と競り合う今年の歳の市
- メモを片手に賑いの年の市
- 病み上り顔強張りし年の市
- 余所見してぶつかり合いの年の市
- 鳥取県 風紋
- 年の瀬や何に追わるる訳でなく
- 東京都 かつら
- 路地裏の いつもの店へ 年の市
- 外っ国の 嫁と買い出し 年の市
- 空港へ 見送りがてら 年の市
- クラクション 野良着脱ぎ捨て 年の市
- 年の市 赤子誕生 ラインあり
- 三重県 倉田 伊都子
- 年の市 忘れ物あり また覘く
- 品により 行列なりし 年の市
- 東京都 ねぎみそ
- 懐郷の風吹き抜ける年の市
- 奈良県 一人坊
- ぬかるみも早足の嫁年の市
- 寒空や売り買い急ぐ年の市
- 大根葉生き生きと立つ年の市
- 神奈川県 白銀
- 夕方に ひっそりと行く 年の市
- 年の市 新年会に 達磨市
- 年の市 念願の思い 煩うに
- 昔を思う 年の市あれば 下調べ
- 年の市 冬の空気で 薫る花
- 大阪府 永田
- 家族増え彼方此方と年の市
- 滋賀県 船岡房公
- 年の市藁の香青し注連飾り
- 年の瀬の気配薄れし年の市
- 機嫌よき妻と連れ立つ年の市
- ガラポンは白玉ばかり年の市
- 弘法も終ひとなりぬ年の市
- 大阪府 椋本望生
- 試飲などしなきやよかつた年の市
- 赤札をせしめて重き年の市
- 狛犬のよく啼く朝ぞ年の市
- 波に酔ひ風にも酔うて年の市
- エンジンを侍らせ年の市らしき
- 神奈川県 皆空眞而
- 空き箱を山と積上ぐ年の市
- 年の市法被姿の鯔背かな
- 書付を手に年の市巡りたる
- 東京都 中田ちこう
- ガサ市や松の香残る闇となる
- 青森県 飯沼勇一
- あれやこれ買うて独居の年の市
- スーパーの一角賑わふ年の市
- あと何度買ひに来れるや年の市
- 渾身の売り手の声や年の市
- 年の市空気だけ買ひ戻りけり
- 栃木県 鹿沼 湖
- ぶつからぬやうに歩くや年の市
- 伝言の二三のありき年の市
- 見慣れたる癖字のメモや年の市
- 愛媛県 加島一善
- 呼び込みの声無き寺の年の市
- 暮市や抱える桶の檜の香
- 大黒と恵比須顔売る年の市
- 福を売る恵比須顔いる年の市
- 空っぽの財布を拾う年の市
- 神奈川県 ぐ
- 年の市耳にも背にも眼あり
- 年の市耳鳴りひとつ買つて帰路
- 年の市離婚届けを出す往路
- 店裏の闇に目がいく年の市
- 神奈川県 志保川有
- おざなりに子を叱る母年の市
- 切身鮭紅の輝年の市
- 前掛の売声かする年の市
- ポケットは小銭とレシート年の市
- 年の市ガザ地区の死者二百人
- 大阪府 太田紀子
- 年の市缶コーヒーの温かし
- 年の市かがみて小銭拾いひをり
- 帰り道背の荷の重し年の市
- 滋賀県 村田紀子
- 読みかけの本を片手に年の市
- 掛け合いに参加してみる年の市
- 霧深き日々吹き飛ばす年の市
- 古希過ぎて活気求めて年の市
- 青物を求め彷徨う年の市
- 福岡県 西山勝男
- 片隅に易者も在す年の市
- 垂れ幕に人の流れや年の市
- 闇市の跡とは床し年の市
- はやばやと神棚買ふも年の市
- 注連を売る戸板一枚年の市
- 神奈川県 海野優
- 年の市身振り手振りの異国客
- 年の市軽四輪を店がはり
- 年の市青い眼をした主かな
- 今日のもの買ふてからゆく年の市
- 商ひも世間話に年の市
- ブラジル 玉田千代美
- 年の市有り金しぼり買ひ漁り
- 年の市長い列にて疲れ果て
- 年の市若い人等の楽しみに
- 年の市我も我もと急ぎ居り
- ブラジル 林とみ代
- 売る方も買ふも必死や年の市
- 人波を掻き分け漁る年の市
- ボーナスの配分如何に年の市
- 孫にだけ財布の緩む年の市
- 老の身に余所事なるや年の市
- 東京都 石井まゆみ
- ふるさとの鉄路辿るや年の市
- 海からの上るけあらし年の市
- お知らせは広報カーなり年の市
- 年の市人の流れに流されて
- 築地には門跡通り年の市
- 神奈川県 梶満理子
- あてもなく人に押されて年の市
- 年の市この日ばかりは太っ腹
- 東京都 岩川容子
- 威勢よき手打ちの音や年の市
- 人の出に押されるままに年の市
- 年の市物見遊山の人の波
- 山口県 ひろ子
- 園芸店割引並ぶ年の市
- 店数の減り町さみし年の市
- つつがなくそぞろ歩きや年の市
- 神奈川県 成田あつ子
- 昼間より燈の明るき年の市
- 呼び声に勢いで入る年の市
- 人だかり多きを先ず見年の市
- 買ふ店をいつも決めゐる年の市
- 行き行きて又戻り来る年の市
- 茨城県 菊池風峰
- 掛け声の飛び交う街や年の市
- 焼きいかの香りの誘ふ年の市
- 母の手を離さぬままの年の市
- 注連縄を立てて歩きし年の市
- ガス灯の香り懐かし年の市
- 新潟県 加藤正子
- 人混みに母の背小さき年の市
- 泣き笑ひ籠に詰めゆく年の市
- 年の市呼び込みの声豊かなり
- 埼玉県 哲庵
- 町会の補導係や年の市
- 羽子板のかんざし揺るる年の市
- 笠売りの爺は何処に年の市
- 大根をおまけに付ける年の市
- 初孫の羽子板買ふや年の市
- 東京都 笹木弘
- 年の市干支の箸置探し買ふ
- 庖丁を研師に頼む年の市
- 篝火の爆ぜし火の粉や年の市
- 薬研堀の七味を買ひし年の市
- 狛犬に灯の及びたる年の市
- 埼玉県 守田修治
- 楽しみの無法地帯か年の市
- あみだくじ当たってうれし年の市
- 一葉も下駄突っ掛けて年の市
- 年の市応挙のトラの売りと買い
- 人ごみに寅さんがいる年の市
- 福岡県 多事
- あの声はなかなか成らぬ年の市
- モヒカンもカシミアもゐて年の市
- 摩利支天黙つてをらる年の市
- 東京都 遠山比々き
- 鍛へたる聲立ちならぶ年の市
- 神奈川県 後藤真子
- 白髪のきみ生き生きと年の市
- 電飾にも雪つもりし暮の市
- 暮市の人みな幸を求めおり
- キリスト者なれど楽しき年の市
- 腕まくりよ熱き声よ年の市
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- 素見して異国の屋台年の市 素見して(ひやかして
- 年の市出汁の試飲のかつぶし屋
- 海の幸山盛りにして年の市
- 嗄れ声のねじり鉢巻き年の市
- 売り声に逸る心地や年の市
- 神奈川県 三好康子
- 歳の市筵に並ぶ縁起物
- 母の忌の供花を買ひ来し年の市
- せはしなき母の忌となる年の市
- 年の市香具師の寅さん探しをり
- 特別の勢ひと人出年の市
- 長野県 土屋竜一
- 年の市みな温もりを買うてゆく
- 懐に暖忍ばせて年の市
- 年の市母そつくりなひとがゐる
- 先代はお元気ですか年の市
- 年の市幸せさうな客ばかり
- 千葉県 みやこまる
- 年の市飛行機雲をしたがえて
- 禍福とは生きることなり年の市
- それぞれの腕に抱きし年の市
- 悪しきこと良きことも連れ年の市
- 左手(ゆんで)にも右手(めて)にも幸や年の市
- 千葉県 堀川真里
- 母の字に謎の品名年の市
- 売り声の波濤はるかに年の市
- 釣銭の湿っておりぬ年の市
- 京都府 山辺木綿子
- 年の市赤くかがやく偽りんご
- 颯爽と歩きゆく巴里年の市
- うどん屋の長き行列年の市
- 年の市平成の世の移りゆく
- 神奈川県 佐々木 僥祉
- 父好む肴購う年の市
- 川岸に一息つくや年の市
- 山海のめぐみ呼び寄せ年の市
- 持つ指の冷たくなりぬ年の市
- 灯の下に茹で立て売るや年の市
- 東京都 飯田 哲司
- 歳の市孫にこれだと杵や臼
- ぼろ市や下町しのぐ歳の市
- 歳の市裸電球あたたかく
- 伝統を背負って続く歳の市
- 土地々々の歴史感じる歳の市
- 東京都 綾部 捷子
- 雑踏に揉まれもまれし年の市
- 東京都 五十嵐 顕人
- 年の市先づモンブランより選りぬ
- 大津には花登の本や年の市
- 信楽の箸置き求む年の市
- 神奈川県 髙梨 裕
- 空店舗飾りて年の市となり
- 木焚いて景気話も年の市
- 松作る女庭師や年の市
- 雨上がり灯りて華やぐ年の市
- 御飾りもつましくなりし年の市
- 東京都 豊島 仁
- 年の市一年ぶりの友に会う
- 目が合いて福助買うや歳の市
- 新婚の二人が歩く歳の市
- 昨日今日明日も平和に歳の市
- 江戸の風吹けば手締めの歳の市
- 京都府 中村 万年青
- 大手筋はソーラー天井年の市
- 注連縄を路地で商ふ年の市
- 錦市場のごった返すや暮の市