俳句庵

11月『落葉』全応募作品

(敬称略)

大阪府     藤田康子
落葉踏むずつと祈りのやうにふむ
眠るてふ安らぎを得し落葉かな
愛知県     遊泉
館跡落葉の谷に埋もれをり
これよりは奈良の都ぞ落葉踏む
外苑の銀杏落葉の別世界
青年僧ただひたすらに落葉掃く
落葉踏むヴィヴィアン・リーの二本立
神奈川県     吉良水里
サックスの音波立ちて落葉かな
踊り子の裾ひるがえり落葉かな
買物の何故か寂しや落葉道
新潟県     近藤博
風に伏しなほ反り返る落葉かな
さくさくとリズミカルなる落葉道
散り敷ける銀杏落葉の黄金道
美しく散り敷く落葉歩の軽し
風に舞ひ一ひら二ひら落葉かな
愛媛県     砂山恵子
手水舎の底の見えなき落葉かな
ヒロシマの慰霊碑横の落葉籠
ヒロシマや落葉ひとつを日にかざし
桜落葉母校の壁の生成り色
老人の白杖触るる落葉かな
東京都     新保徳泰
暮れのこる学園通り落葉踏む
落葉焚き道ゆく人のふり返る
道路にも肩といふもの落葉掃く
閑中の忙のひとつに落葉掃き
旧居訪ふ老いの二人や落葉径
東京都     五十嵐顕人
落葉踏む兄は未婚のまま生きる
落葉道愛犬の臍をくしゅくしゅと
兄のほか既婚でありぬ落葉掃き
神奈川県     守安雄介
本堂の裏に積まれし落葉かな
音良きに落葉プールの浮力無し
落葉分け草鞋虫採る女子大生
濡れ落葉広縁の夫動かざる  18A*75
柿落葉片寄せ掬う泉かな
兵庫県     岸下庄二
掃き癖のつきし箒で落葉掃く
掃き寄せる道の落葉に古軍手
落葉掃く作務衣の僧の青つむり
落葉焚く煙に里の匂ひあり
走り根を隠す落ち葉に躓きぬ
愛媛県     渡邊國夫
落葉敷く陣屋跡なる我が母校
早朝のお宮詣や落葉径
編笠一蓋の旅や落葉踏む
点滴のポトリポトリや落葉の夜
険阻なる修験の径や濡れ落葉
岐阜県     金子加行
別れへの舞を見せつつ落葉す
落葉踏む音の中なる独り旅
草野球ボールやここに落葉掃く
千年の樹の衰へず落葉す
名園の趣さらに落葉かな
千葉県     柊二
サドル振る尻や峠を掻く落葉
神奈川県     佐藤博一
捨てるには惜しき落葉を拾ひけり
吹くたびに光彩なす落葉かな
真向かいに富士を置いたる落葉かな
しばらくは風に任せし落葉掃き
落葉して空透くまでの青さかな
栃木県     垣内孝雄
落葉掃く妻の手馴れの竹箒
落葉径本宮これより半里ほど
馬車道の黄昏どきの落葉かな
落葉踏むまんまる屋根の幼稚園
陵の風に舞ひ立つ落葉かな
大阪府     金成愛
めざめしに身をのばしきる落葉かな
岐阜県     ときめき人
轆轤師の鉋千筋落葉舞ふ
東京都     石川昇
土となる橅の落葉のミルフィーユ
絶え間なく水生む森の落葉かな
島根県     GONZA
噴き上がる如く積もれる落葉かな
折敷て重なる落葉躙り口
恋文は落葉を挟む詩集かな
校長が三時間目に落葉掃く
絶壁や落葉当たって響きけり
奈良県     堀ノ内和夫
情けなや落葉嫌はれ枝切らる
橅林の分厚き落ち葉ダムとなり
樹の戦略や一斉に落葉降る
ブラジル     林とみ代
落葉散る別れのワルツ舞ふ如く
山路来て欧米風の落葉宿
郷愁てふ心の痛み落葉散る
美しき落葉を皿に菓子を盛る
行く先も告げず落葉の風に乗り
兵庫県     髙見 正樹
ベランダに落葉がひとつ風止みぬ
潜むものあるや落葉をそっと踏む
丸まって風に転がる落葉かな
長野県     木原登
落葉松落葉吹雪く峠を越えにけり
ペイネ描く落葉の森に棲みたしよ
ゆつくりと舞ひくる那智の滝落葉
落葉一枚待ちゐる昼のカフェテラス
朴落葉葉脈のみとなりにけり
栃木県     鹿沼 湖
夕暮れのベンチに独り落葉かな
砂山のケーキに揺るる落葉かな
青森県     竹浪誠也
丁度よき風との出会ひ落葉舞ふ
放たれて子等の輪に入る落葉かな
美しき落葉となりて生ひ出づる
ご破算で願ひましては落葉降る
掃かれゆく無念無想の落葉かな
広島県     永野昌人
降りし日の落葉それぞれ美しき
落葉早や大和島根に那由多かな
全きの一つとてなく柿落葉
落葉掃くそばから落葉また落葉
塵取の落葉散らすやつむじ風
静岡県     城内幸江
落葉踏むかけっこ遅くなりにけり
狛犬と目を合わせずに落葉掃く
落葉掃く丸い背中の母といて
公園の足跡雑ざり落葉掃く
埼玉県     岸保宏
また増えし母の白髪が落ち葉どき
三回忌いつもの道の落ち葉踏む
落ち葉かご燃えてるやうに背で揺れる
宮城県     林田正光
落葉掃く人と会釈し帰路急ぐ
落葉踏む一歩一歩の音響く
傘さして落葉時雨と戯れて
公園の銀杏落葉に寝転びて
恐らくは父も歩みし落葉径
福岡県     紙田幻草
参道の出店の銀杏落葉かな
駐車場落葉だまりとなってをり
ゆるやかに川辺へ下る落葉坂
立ち上がる落葉転がる落葉かな
落葉踏み落葉蹴散らし下りけり
兵庫県     岸野孝彦
遠き日の桜落葉の栞かな
柿落葉虫食いあとの虚空かな
竹ぼうき落葉はらはら母逝けり
落葉炊き禁止の里の夕茜
母逝きて庭の落葉の重さかな
東京都     岩崎美範
子の呉れし万歩計つけ落葉踏む
兜太読む栞は庭の柿落葉
首塚に音もなく降る落葉かな
落葉掃くガウチョパンツの少女かな
落葉舞ひ音なき音を奏でけり
兵庫県     はなちる
限りなく庭に積りし落葉かな
山風に過疎地落葉の渡りゆく
ドアの外訪ねし来るは落葉のみ
靴裏に濡れし落葉の美しき
鈴鳴れば落葉はぐれて賽銭箱
神奈川県     海野優
落葉降るものの命の息遣ひ
紅落葉しをりに挟む文庫本
武士の世語り聞くと落葉踏む
サヨナラと外国語めき枯れ葉散る
兵庫県     噂野アンドゥー
火葬場の 落ち葉集めて 灰にする
窓を見る 落ち葉のように 散る命
風が吹く 枯れ葉も木から 落ちていく
芋を焼く ために生まれた 落ち葉かな
葉が落ちて 炎に落ちて 火葬する
東京都     原井壮
落葉の天地を返す木枠かな
神奈川県     井手浩堂
日の温み匂ひもとどめ落葉山
落葉して溶岩の岩肌かくしけり
子を入れしこともありけり落葉籠
肩打つや三千院の朴落葉
落葉掻くかつて兎を追ひし山
東京都     勢田清
落葉降る音聞きながら眠りけり
落葉焚く炎の色の美しき
桐落葉大きな音を立てにけり
落葉道乾いた音と日の香り
休日の道どこまでも落葉かな
栃木県     仲川光風
神官や煙りに隠れ焚く落葉
子らの無き公園渦巻く落葉かな
林間の虚空を泳ぐ朴落葉
落葉や境内の宙澄み渡る
柿落葉ひらりと小鳥降りるよに
東京都     内藤羊皐
むさしのの落葉彩る透谷碑
乳呑子の蹠を触れる落葉かな
揚げたてのコロッケ齧り落葉踏む
ジョッカーの落葉音立つ獄跡
オーボエの音色響める落葉かな
神奈川県     萩原照代
落葉舞う街に楽しむバレリーナ
落葉踏む音と合わせる琴の音
金色の仏にひらり落葉かな
母と行く並木に落葉きらきらと
若宮で静のごとく落葉舞い
愛知県     木下澄枝
木洩れ日や落葉しきつむ石畳
雨しとどさくら落葉の鮮やかに
すべるやうにころがるやうに落葉道
ひとひらのあとは続かず朴落葉
日の匂ひもろとも詰めて落葉籠
大阪府     津田明美
肩に落つ遍路の寺の落葉かな
落葉舞う群雄割拠のスクリーン
馬車道や落葉して行く異邦人
落葉焚燃えぬ手紙の二三通
一つ又一つ音踏み朴落葉
東京都     伊藤はな
落葉風欅並木を攫ひをり
降りしきる銀杏落葉に破れ扇
地の色をすっぽり隠す柿落葉
庭の柿雨後の落葉の艶めけり
欅坂落葉時雨に風の波
神奈川県     酔宇
その刹那落葉となりて山桜
托鉢へ落葉一枚付いて行く
天駆る落葉ひとひら天狗季
降り積る銀杏落葉の古社
見上ぐれば嬉しきほどに落葉降り
東京都     安西信之
野球部の足並み揃ふ落葉かな
遠き日や缶けりかけっこ落葉焚
子のやうに抱かるる仔犬落葉道
パソコンをベンチに開く落葉かな
徳島県     白井百合子
赤き火に昔話しの落葉焚
富士山の落葉踏みたる太い足
何処までも落葉は飛べる風の友
峠越し籠に落葉の土産かな
日は沈む静寂だけの落葉道
神奈川県     矢神輝昭
さで掻や男波女波の落葉掻き
メモリーや落葉の嵩を詰め込みぬ  
洛陽や落葉ふみふみ寺巡り
茗荷畑落葉を盛りてふかふかと
別荘やセダン埋もるる落葉かな
ブラジル     西山溥子
それなりに狭庭を埋めて落葉かな
ふと横に妣の佇つかに落葉焚く
一陣の風に乗りたる落葉かな
樋と云ふ樋を詰らせ落葉散る
はらはらとばさりと落葉降りにけり
奈良県     平松 洋子
散りて尚公園駆ける落葉かな
雨ならば傘も要るよな落葉降る
百メートル勿体なくも落葉掃く
千葉県     四葩
年金の葉書が二通落葉降る
庭石の古びて落葉また落葉
落葉踏む音立てて踏む通学路
落葉道来てジャズを聞く小さき店
岡山県     きしの洋介
野仏の裾を彩る落葉かな
かさこそと落葉駆け来て追い越せり
落葉道こっそり絵馬を掛け帰る
牧水の歌碑たつ乢や落葉ふる
年寄と落葉がたまる辻の堂
兵庫県     山地美智子
タクシーに銀杏落葉も乗って来る
民宿に荷を置く巡る落葉道
道の上の風が動かす枯落葉
とりどりに色の重なる落葉かな
舗装路の落葉を回すつむじ風
神奈川県     梶満理子
落葉掃き収集車待つ青き空
竹ぼうき休む間もなく落葉降る
落葉掃く音聞き目覚め湯を沸かす
吹きたまる落葉や歩道掃き清め
落葉踏む夜の足音耳すます
滋賀県     船岡房公
風道にはらはら落葉時雨かな
御堂筋銀杏落葉を踏みゆけり
幼らのくるぶし埋もる銀杏落葉
桜落葉その赤や美し黄また美し
虫喰いもアートなりけり柿落葉
埼玉県     櫻井俊治
朝の巫女しずしず落葉掃き浄む
かさこそと落葉踏み締む峠道
神奈川県     塚本治彦
杣道の先途絶えたる落葉山
胎のごと落葉休らふ大地かな
覆ひたる落葉賽銭箱の口
押し詰めて背負へぬほどの落葉籠
落葉の香するばかりなり獣道
神奈川県     龍野博史
公園に兵器庫の跡落葉散る
落葉焚じゆつと言はせて終ひけり
寅さんの寺とや僧の落葉掃く
街角を落葉は走り吹きだまる
大阪府     小島文郁
里山の夕日を染めて落葉舞ふ
散り敷きて銀杏落葉の夕明かり
しばらくは足裏に預け落葉道
ふくよかな音心地よし落葉踏む
湖に落葉時雨の色を織る
神奈川県     三枝侑子
その女はらはら落葉のやうに泣く
狛犬も寂しき日あり落葉雨
落葉踏むキャラメル色の銀座かな
落葉して離婚届に判を押す
落葉かなゴーストタウンの昼の闇
神奈川県     金剛
落葉雨追ふ子供らに降る光
杖をつく音の乾きや落葉道
野良猫の骸に寄する落葉かな
落葉ふるサナトリウムの日の翳り
落葉や赤いポルシェが疾走す
神奈川県     白銀
落葉拾い ミレー原作 本公開
落ち葉かき もう冬だなと つぶやく日
落ち葉の影 オサムシかさこそ ご登場
落葉散る  紅葉終わり 冬至る
焼芋で  落ち葉で焚き火 あったかや
東京都     かつら
法螺貝に 唐松落葉 ひかり降る
落葉着て 遠い時間の 中にいる
前掛けの 結び目かたく 落葉掃き
見上げれば 飛行機雲や 落葉焚
蔵出しの 口コミ盛ん 落葉時
山口県     山縣敏夫
平成に別れを告げる落葉かな
落葉踏み今日も児童の登下校
千年の都大路に落葉舞う
山寺の和尚が庭の落葉掃く
作業場に人が集うて落葉焚き 
愛知県     斉藤浩美
落葉積む戦国の世の城跡に
落葉踏むひと駅分の音立てて
柿落葉一枚を追う二枚かな
木の股に小さき祠や落葉期
てんこ盛り入れても軽き落葉籠
三重県     後藤允孝
散り敷ける落葉重ねし並木道
鎮もれる川面の落葉色を織る
通学路の音も十色の枯落葉
散り落葉の色を楽しむ散策路
嵩よりも掃くには重き濡れ落葉
埼玉県     まんたろう
落葉踏む土の匂ひの少しあり
改札を出づればネオン落葉踏む
胸中にふるさと在つて落葉雨
右ながれ又右ながれ落葉風
気掛りな言の葉一つ落葉踏む
神奈川県     後藤真子
讃美歌の天まで届く落葉時
すずめ舞い落葉の色の猫跳ねる
子の髪の落葉をはらう手の優し
落葉道はだかの木々の凛と立つ
夢追わんエルムの杜の落葉踏み
神奈川県     成田あつ子
押し込めば日の香溢るる落葉籠
映画めくウイーンの墓地の落葉かな
落葉踏む杖一本の音のあり
友よりの旅信なるやも朴落葉 
散る音のそれぞれ違ふ落葉かな
東京都     中田ちこう
背負子見ゆ歩荷落葉の尾根登る
千葉県     伊藤博康
夜からの雨が落葉の音を消し
落葉踏み近づいて来る気配あり
仰ぎ見る鳥居を潜る落葉かな
一軒を欅落葉が包みけり
音隠し落葉は暫し休みけり
神奈川県     松風子
死にし子を抱く親猿に落葉降る
朴落葉大往生の媼かな
吹きだまる落葉に落葉重なりぬ
日面の落葉浄土になりにけり
金色の雨降るやうな落葉かな
神奈川県     志保川有
俗念を棄てきれぬ尼落葉焚
ここよりは立入禁止落葉道
降り積もる落葉の数の命かな
古樋に引きとめられし槻落葉
堆き落葉のわきの無縁墓地
大阪府     永田
何方を覆ふや落葉百舌鳥古墳
滋賀県     光汰朗
湖底までゆっくり沈む落葉かな
信長に焼かれし山の落葉かな
大門に吹きたまりたる落葉かな
落葉掃く坊守に降る落葉かな
高校は城内にあり落葉降る
東京都     佐藤博重
落葉掻く玄関までの石畳
落葉の駅に至りし中通り
中尊寺何処も彼処も落葉す
大阪府     太田紀子
散歩道亡夫の杖で落葉踏む
峠道村への道も落葉あり
水無瀬川落葉筏の流れをり
東京都     ねぎみそ
公園の落葉や子らの踏み遊ぶ
落葉掃くきのうのことを捨てていく
富山県     岡野満
肩に降る落葉ひとつの縁かな
落葉して隣の家の近さかな
落葉して幾何学模様浮かびけり
東京都     豊宣光
落葉掃く僧の作務衣や夕の鐘
降る落葉枯山水を彩りぬ
万物は滅びへ向かう落葉かな
落葉して寂しさここに極まれり
積もりたる落葉の下にある秘密
北海道     飯沼勇一
軽トラをこけつまろびつ追ふ落葉
鐘の音や落葉起きたり寝ていたり
次世代に後を託して落葉寝る
小さき手を開けば赤い落葉咲く
落葉踏む音フォルテなるハイヒール
三重県     西井治男
吹かれ舞い三重奏の落葉衆
区の行事落葉集めて知り合いに
愛知県     新美達夫
行員の落葉掃きゐる始業前
吾が庭の意外な広さ落葉掃く
落葉掃く巫女の緋袴赤鼻緒
現役の日々のことども落葉掃く
標無き城址落葉の降り止まず
大阪府     磯川佳子
鹿威し落ち葉に埋もれ音の無く
落葉しきりブルーシートの寺の屋根
葉の落ちて飛行機雲ののびやかに
葉の落ちて空蝉のなおしがみつき
アダージェットのテンポで落ち葉黄昏る
東京都     笹木弘
落葉舞ふ恋の片道切符かな
枝折戸を押さずにくぐる落葉かな
走り根に落葉の溜まる関所かな
虫食ひも栞となりし落葉かな
落葉一枚回転ドアに紛れこむ
神奈川県     皆空眞而
落葉して丹沢見ゆる富士山も
落葉どき芳香放つ私の木
金色に落葉乙乙扇形
新潟県     加藤正子
落葉時豊かに鰭の錦鯉
境内に鬼の声して落葉焚き
柔らかに風の連れ来る落葉かな
滋賀県     村田紀子
急坂も落ち葉の赤に安らぎを
落ち葉見て湧き出る力朱色かな
二年先思う気持ちや落ち葉かな
落ち葉舞う三年前の我のよう
夕餉時落ち葉踏む音子等の声
山形県     白竜
腰を立てボランティアの子落葉掃く
謎多き我が人生の落葉道
落葉掃く我の終結思い込め
濡れ落ち葉踏み分け進む老夫婦
老いし身に落葉の嵩は重荷なり
神奈川県     三好康子
音消えし落葉時雨の石畳
吹きたまる磴の両端落葉掻く
バンダナと作務衣の僧や落葉掃く
落葉掃く山廬の軒に箕と農具
馬車道の落葉明りの茶房かな
千葉県     横井隆和
落ち葉敷く並木の日和やカフェのJAZZ
落ち葉した欅や筑波の峰を掃く
東京都     岩川容子
落葉道介護施設のバスが行く
日を溜めし落葉に猫の来て眠る
部活動始める前の落葉掃き
手つかずの空家に積もる濡れ落葉
掃き終えたそばから落葉また一枚
福岡県     西山勝男
かさこそと日の斑綾なす落葉かな
行道や落葉時雨の只中に
武蔵坊の墓へ散り敷く松落葉
雲水の朝な朝なの落葉掃く
降りしきる銀杏落葉の富貴寺かな
東京都     紫箒
竹箒 使って落葉 無重力
野良猫の 落葉踏む音 4ビート
銀杏を 踏んでたじろぐ 落葉掻き
東京都     紫掃
ままごとの 皿を彩る 柿落葉
風下の 方へと祖母は 落葉掃く
落葉掻く 熊手操る 孫の笑み
東京都     紫掻
山に入り 落葉掻き分け 茸狩る
枯れ木みて 平成最後の 落葉掻く
掻いた跡 好んで落ちる 朴落葉
東京都     右田俊郎
嬉し気によちよち歩き落葉踏む
形良き落葉ひと葉を栞とす
歳時記に落葉はさめば一句生る
何らかの不満の仕草落葉蹴る
掃き集む落葉を風のまた散らす
ブラジル     広田ユキ
走り根に歳月ありて落葉積む
音立てて椰子の葉一つ落ちにけり
ひとしきり落葉時雨の森の径
落葉踏む母と子の音異なりて
大方は隣の落葉今日も掃く
福岡県     紅さやか
車椅子の轍つけゆく落葉道
青空へ落葉まきあぐ親子かな
埼玉県     守田修治
子規庵の落葉に匂いありやなし
落葉散る社に不似合い従軍碑
釣銭を落葉にこぼすご老体
国語辞書栞となりたる落葉かな
落葉踏むまたマンションか測量士
千葉県     入部和夫
今日の日の殊に愛しき落葉踏む
大阪府     椋本望生
昼もまた擦り寄る落葉掃きにけり
庭を見て木々を見返す落葉かな
落葉掃く且つ焚くダリの朝かな
結局は捨てる落葉を手のひらに
落葉焚くひもじ思ひのあの頃も
埼玉県     哲庵
犬ころのもぐってをりぬ落葉籠
落葉掃く登校前の通学路
中にあるもの当ててみよ落葉焚
泣き顔のやうな虫喰ひ落葉かな
幼子の忍法落葉隠れかな
千葉県     高倉真生
落葉掃く若き新人候補かな
真紅なるヒールに踏み抜ける落葉
落葉道母のまどろむホームへと
千葉県     みやこまる
5グラムの風を乗せたる落葉かな
京都府     山辺木綿子
校庭を落葉転がる日暮れかな
あの闇に獣の気配落葉降る
曲がり角隅に積みたる落葉かな
福岡県     多事
青澄める空の渇きや落葉弾く
母追へばいよいよ深き落葉かな
吾が空は祇王寺にあり落葉掃く
落葉にて描かる道化やエスプレッソ
落葉焚く世知辛き世に落葉焚く
兵庫県     ぐずみ
リア王の背中に積もれる落葉かな
裏表作らぬ性の落葉かな
東京都     飯田 哲司
落葉踏む雑木林が遠くなる
せせらぎにひらり落葉やあとたたず
いづこより窓辺寄りそふ落葉かな
はらはらと織りなす落葉大地肥へ
東京都     綾部 捷子
街路樹の銀杏落葉の広さかな
街路樹の銀杏落葉のたちこめる
神奈川県     髙梨 裕
無事暮れる老いの生まれ日庭落葉
炎立つ闇に燃え付く落葉かな
まだまだと落葉踏み締め古希の坂
落葉焚く夕餉の妻を待ちながら
満天の星や落葉の廃村に
東京都     豊島 仁
仲よしと落葉蹴とばし下校かな
落葉掃く僧侶の後にまた落葉
この道やいまは落葉とただの風
晩鐘に急ぐ家路の落葉かな
面影を偲びてそっと触る落葉
京都府     中村 万年青
地の虫やおちばの夜具の温かし
公園の大樹は皆落葉時
枝より出で大地へ還る落葉かな