俳句庵

8月『天の川』全応募作品

(敬称略)

大阪府      藤田康子
天の川せめて小さき笹の橋
天の川なみだの川が決壊す
愛知県      遊泉(ゆうせん)
銀漢の触るるばかりや能登の海
吾独り峡の湯宿の天の川
宇宙なる枯山水や天の川
妻癒へて天に謝すれば天の川
物故者の多き会報天の川
新潟県      近藤博
きらきらと光り帯なす天の川
しろがねの煌めくやうな天の川
天空を支へ高々天の川
天球をぐるり一巻き天の川
海境(うなさか)の闇に流るる天の川
宮城県      石川初子
枕辺にこぼれてきたり天の川
香川県      佐藤奈都子
詰将棋のぞく童や天の川
江戸切子地酒溢れし天の川
鍵盤の指軽やかに天の川
天の川ギンガムチェックの似合ふ人
千葉県      柊二
舫いたる一本松に天の川
栃木県      鹿沼 湖
洋上のデッキ耀ふ天の川
舟あらば流るるままに天の川
後の世は君と渡らむ天の川
愛媛県      渡邊國夫
銀漢や稽古帰りの豆剣士
修験者の往き来し径や天の川
天の川茶漬一杯独りの餉
水清き町に銀河の夜々流る
街灯は大正モデル天の川
栃木県      垣内孝雄
天の川星を見るのがすきでした
天の川天動説と地動説
天の川忘れられない人がゐる
天の川ネオンの街に埋もるる
赤い灯の街の交番天の川
東京都      五十嵐顕人
俳句を去る夜空かな天の川
函館は正にサファイア天の川
函館の星を散らして天の川
函館の夜空欲しき天の川
函館を去り小樽入り天の川
岐阜県      金子加行
天の川遊ぶ子みな他所へ去る
天の川探しに母の手を引きて
リハビリに天の川指す語が戻る
帰郷せし日の最上の天の川
テント泊岩肌抉る天の川
カナダ      森井健二
姫の恋 とどけ彦星 天の川
一途にも 織姫祈る 彦いずこ
天空の恋 年に一度の 彦と姫
東京都      石川昇
光年の欠片を生きて天の川
ふるさとは山から山へ天の川
栃木県      片柳実
人変わり 地球変わるも 天の川 
都市眠らず どこに消えたか 天の川
姥湯来て 半世紀ぶりの 天の川
猛暑日を 天から眺む 天の川
天ありて 海山ありて 天の川
兵庫県      はなちる
一人行く砂漠に影の天の川
星河のトンネルくぐり故郷へ
天の川氷に映る小宇宙
天の川地上の光を眺めをり
天の川ぼんやり見てる君の顔
島根県      GONZA
天の川さざ波寄する杉木立
朝焼や裾より消ゆる天の川
天の川はっきり聞ゆ糸電話
山小屋の屋根に天の川近し
星の人住む星もあり天の川
東京都      勢田清
天の川銀河鉄道遠き日々
牽牛と織女はあれよ天の川
見たことも無い星の数天の川
天の川あれも星なり指のさき
子と仰ぐ星の夜空や天の川
岐阜県      ときめき人
星宿る円空仏や天の川
兵庫県      噂野アンドゥー
きれいだね 天の川にて 二人逢う
天の川 妻に先立つ 一人星
天の川 水をすくって 飲みたいよ
星空を 泳いで渡る 天の川
短冊の 舟を流した 天の川
神奈川県      佐藤博一
旅の夜の胸に流るる天の川
逢いたきは亡き人ばかり天の川
銀漢や星の布石に隙の無し
母の忌を修して仰ぐ天の川
天の川仰ぎ見る人背を正す
神奈川県      月のうさぎ
天の川賢治に耽る停留所
神奈川県      後藤真子
銀河澄みピリオド誓う片想い
小さき星も世の光なれ天の川
十勝川原野に浮かぶ銀河なり
うつむけば井戸の底にも天の川
日々きみと生くるしあわせ天の川
東京都      片桐啓之
銀河濃し昼間の空の深きほど
天の川シルクロードととこしなへ
故郷の川が濫觴天の川
信濃なる山は銀河の空支ふ
天の川見る片恋の二人かな
千葉県      伊藤博康
洪水の心配要らぬ天の川
天の川端は地球に仕舞ひけり
穿たれし数多の穴や天の川
嶺みねを繋ぎ留めたる天の川
一度でも見たき砂漠の天の川
宮城県      林田正光
逝きし人星となりけり天の川
天の川銀河鉄道途中下車
選ばれし天の川から招待状
愛媛県      砂山恵子
終点で同人誌買ひ天の川
天の川発掘孔にシート掛け
銀漢を夜間飛行の灯のまたぐ
今父の逝きしとメール天の川
廃線路の端に銀河の駅求め
東京都      遠藤慧子
仰ぎ見て楽しく作る七夕ソーメン
長野県      木原 登
大空に銀河大地には大河
オルゴール鳴らし銀漢流しそむ
袖振りあひしはいくたりなりし天の川
霊魂は消ゆることなし天の川
天の川仰げど仰げど兜太亡し
大阪府      永田
折鶴の鋭角の首天の川
無音なる砂漠を行くや天の川
青森県      竹浪誠也
酔ひ醒めて路地に銀河のさんざめく
改札を出れば津軽の天の川
コーヒーの残りひとくち銀河濃し
銀河濃し職員室の灯は消えて
アルバムに街着の母や天の川
東京都      伊藤はな
コッヘルに沸かすコーヒー天の川
東西に姉妹離れて天の川
母の忌の空の高さや天の川
晩年や時遠くして天の川
ランタンの灯り落として天の川
大阪府      木山満
天の川目指す極致は何光年
急再会銀河に飛びし友いずこ
天の川白馬の背にて渡りたき
星屑の犇めき合いて天の川
長生きの吾が髪洗う天の川
徳島県      白井百合子
思い出の夜道は遠く天の川
故里の棚田にかかる天の川
短冊に真は書けず天の川
笹飾り流されてゆく天の川
天の川スカイラインに続きをり
東京都      内藤羊皐
湯治場に肌の匂へて天の川
天の川尸解の術を諾へず
おとうとの通夜を綴れる天の川
天の川塚の盛り土の頽れり
宮刑のをのこ臨みし天の川
大阪府      津田明美
銀漢やたぐり寄せたき人ばかり
白絵具闇にはじかせ天の川
母今も銀河に生きて白寿なり
鬼一人残し銀河にかくれんぼ
天の川島の眠りを妨げず
神奈川県      河野肇
禅堂の影ふかまりぬ天の川
銀漢をわたる機影の涙かな
銀漢や老々介護のしづけさに
禅寺に警策の音天の川
いつしんに乳吸う吾子や天の川
東京都      佐藤博重
天の川北信五岳稜線に
天の川には洪水の無かるべし
天の川地球は水の惑星ぞ
東京都      岩崎美範
銀漢や小さく瞬く姉の星
漕ぎくるは平和の使者か天の川
百年を生きて母逝く天の川
ジョバンニの釣り糸垂れる天の川
尻青き嬰の見上ぐる天の川
大阪府      金成愛
人間も鳥も眠るや天の川
神奈川県      塚本治彦
許されぬ恋こそ甘し天の川
赤道を越える漁船や天の川
移民船発ちし港や天の川
金平糖零したるごと天の川
青鮫の泳いでゐさう天の川
東京都      石井昌男
今帰るホームで送信天の川
神奈川県      亀山水
尿して銀漢未だ手に入らず
キラリキラリとテント場の天の川
天の川掴んでみたく山の上
天の川流星群の只中へ
星空を貫いている天の川
神奈川県      井手浩堂
天の川登山電車の始発駅
標高の高き駅降り天の川
宅配の車夜まで天の川
神奈川県      原川泉水
中天を貫く銀河波靜
天の川織物掲げ姫が呼ぶ
長雨に呼び声のみの天の川
天の川巡る鉄道今何処を
酔眼に銀河茫茫背にベンチ
ブラジル      西山ひろ子
天の川一つ燦めく孫の星
縁てふ不思議な逢瀬天の川
天の川国を違えて父母の墓
天の川異国暮らしも五十年
異国とは云へぬこの国銀河濃し
福岡県      西山勝男
高虚子の一句ひもとく天の川
天の川九死に一生得て仰ぐ
大なる阿蘇を横たへ銀河濃し
降臨の峰になだるる天の川
身の丈の暮らしに仰ぐ天の川
兵庫県      山地美智子
天の川見えぬは老いの目の所為か
街の灯の上にうすうす天の川
故郷の変わらずにある天の川
平均寿命までは生きたし天の川
山里は消灯早し天の川
京都府      田端敏弘
右の手が応える返事天の川
過疎の闇光るせせらぎ天の川
何もないけどが口癖天の川
奈良県      平松 洋子
健康の願ひ続けと天の川
星座にはのらぬ星の名天の川
天の川昔の光いつもあり
東京都      原井壮
手に届くスカイツリーや天の川
知床の漁村の匂ひ天の川
天の川北半球に棹を挿す
天の川野営の陸上自衛隊
筆圧の高き願ひや天の川
神奈川県      ぐ
銀湾や灯台に海ひかめきて
目に見えぬ数多の蟻へ天の川
追伸きりんの首は天の川まで
天の川ひつくり返すおもちゃ箱
ゆつくりとカヌーの進路天の川
岡山県      岸野洋介
瀬戸の海松籟やさし天の川
天の川ともに眺めし妹を恋う
大河の流れに沿いて天の川
父母なくて故郷遠し天の川 
教え子の先に逝きけり天の川
兵庫県      岸野孝彦
肌寒き夜空仰げば天の川
天上の花と呼ぶべき天の川
恋人と別れましたと天の川
笹の葉に短冊揺れて天の川
天の川父母が並んで岸に立つ
東京都      豊宣光
天の川見えぬ夜空の暗さかな
ジョバンニの列車過ぎゆく天の川
一粒が宇宙の宝石天の川
亡き母の星はいずこに天の川
子の夢は宇宙飛行士天の川
神奈川県      龍野ひろし
天の川夜行列車の追ひかけて
山小屋の早き夕餉や天の川
故郷の闇に探すや天の川
山口県      山縣敏夫
子等の夢無残に砕く天の川
氾濫をするとは意外天の川
氾濫の初勧告や天の川
舟頭の呼ぶ声高し天の川
逢い引きは一年延ばす天の川
三重県      後藤允孝
悠久の刻の流るる天の川
遠恋は終わりにしたき天の川
阿智村の里騒がしや銀河濃し
わだかまり溶けぬ二人の天の川
銀漢やビルの谷間のネオン街
神奈川県      萩原照代
天の川 ドレスに飾り 浮き立ちて
大舞台 両手いっぱい 天の川
銀河降る 山門めざし 駈け抜ける
埼玉県      まんたろう
寝転べば少女の頃の天の川
再びの帰宅かなはず天の川
天の川だんだん空が好きになり
ホスピスの窓に灯りの天の川
登山口見上げる空の天の川
神奈川県      矢神輝昭
砂金採り思ひ溺るる天の川
天の川負われ眺めた母は無し
天の川億兆分の縮図かな
天の川風にはためく映画会
天の川横切る船の宇宙船
新潟県      加藤正子
露天湯の歓声ふたり天の川
銀河降る無住の故郷帰りたき
東京都      中田ちこう
楼蘭を埋めし流砂や天の川
大阪府      太田紀子
天の川沖の漁火瞬けり
天の川見えず都会の喧騒に
逝きし子の無事天の川渡りしか
埼玉県      櫻井俊治
青々と穂高にそそぐ天の川
紺碧のさざ波立ちぬ天の川
山口県      ひろ子
短冊の夢の数多や天の川
ハンモック揺れて誘う天の川
テント張る若人うらやむ天の川
神奈川県      成田あつ子
継紙の墨痕美しき天の川
天の川星落ち海の砂子なり
天の川誕辰ごとに友と会ふ
指差しを覚えし吾子と天の川
天の川草の上なるコンサート
広島県      永野昌人
天の川韓の国より立ちにけり
天の川過ぎる衛星一つあり
星屑は恋のかけらや天の川
星屑となりし初恋天の川
架けるなら橋は十連天の川
神奈川県      梶満理子
天の川宇宙と地球結ぶ橋
天の川横浜の海渡りける
天の川幾光年の旅をする
願いごと異国の吾子へ天の川
天の川流れ入るさき我故郷
ブラジル      玉田千代美
人生は長き短き天の川
提灯の二つ揺れ合ふ天の川
入浴も命がけなり天の川
天の川これより先は神だのみ
ブラジル      林とみ代
アマゾンの魔境を跨ぐ天の川
父母乗せる船は何処や天の川
海浜に砂の裸像や天の川
北欧の旅に出会ひぬ銀河かな
原始林の開拓小屋や天の川
神奈川県      伊原文夫
水澄みし地球を見てる天の川
天の川地球の川も美しき
愛知県      斉藤浩美
天の川上流下流なかりけり
これがあの芭蕉の銀河佐渡に佇つ
人悼むため天の川見上げけり
君と話すために見上げて天の川
戦艦は海に眠りて天の川
大阪府      山岡和子
天の川君と影踏み遊びした
浜の砂蹠にぬくし天の川
浮き燈台ゆらぐ灯一つ天の川
白樺の幹白々と天の川
ありがとうをあなたに一言天の川
三重県      西井治男
待ち望むたしなしの夜天の川
天の川りゅうぐうからも助け舟
愛知県      新美達夫
天の川見える角度に母起す
光年を咫尺に納め天の川
熊野路や孫に見せたき天の川
銀漢や十津川郷は川伝ひ
裏からも回つてみたき天の川
東京都      かつこ
天の川夫婦の夢は宇宙旅
九十九里の夜の飛行機天の川
東京都      岩川容子
天の川波の飛沫の届く駅
忌を終えて見上げる空の天の川
海峡を出でて帯なす天の川
銀漢や浮灯台の灯が走る
京都府      山辺木綿子
ツァラトゥストラの語るがごとき大銀河
天の川深々と夜の更けにける
ダムの底に眠れる村よ天の川
歌声の蒼く流るる天の川
鳴き砂の浜とぼとぼと天の川
埼玉県      哲庵
銀漢や自決の御霊集ひをり
銀漢やキューポラ赤く錆朽ちて
今夜また君へ漕ぎ出す天の川
ツリーからタワーへかかる天の川
柄杓にて喉潤すや天の川
千葉県      入部和夫
街に出て故郷遠き天の川
滋賀県      村田紀子
会いたいと黒板にある天の川
人恋し一陣の風天の川
温暖化その一言と天の川
神奈川県      白銀
天の川 地球接触  フレンチキス
天の川  天声人語 糧となれ
天の川 幾多の時を  越えたドラマ
7月は 星空ラブを 天の川
壁画にて 星粒いっぱい 天の川
石川県      大友まり子
天の川ジョバンニの旅思いつつ
天の川潮騒だけを褥とし
砂山にネコと見上げる天の川
千葉県      横井隆和
楡の木に掴む童や大銀河
良寛の流るる筆や天の川
磯木焚く柴の庵や天の川
三重県      倉田 伊都子
雨上がる ちり一つなし 天の川
天の川 仰ぎて一つ 願いけり
雲流れ 早き流れの 天の川
洪水の 天災もなき 天の川
流れ来て 御堂の先に 天の川
北海道      飯沼勇一
二次会場出ればどどーんと天の川
いざ往かん天の川の尾摑まえに
大平原ここに我をり天の川
病窓を斜に流る天の川
真青なる空の底には天の川
埼玉県      守田修治
昭和史を語る縁台天の川
無人駅おかえりなさいと天の川
天の川空がもっとも澄んだ夜
終バスの尾灯もまじる天の川
谷中路地軒に隠れる天の川
東京都      遠山比々き
臨終のゲーテのことば天の川
千葉県      山田香津子
卵焼きを抜く星型に天の川
天の川孫が型抜き卵焼き
岐阜県      雅風
御巣鷹に幾年月や天の川
橋架けて渡つてみたし天の川
湖暮れて降るるばかりの天の川
深眠る白川郷や天の川
お東とお西を跨ぐ天の川
大阪府      椋本望生
天国の門で待ちます天の川
黒雲の滲み出したる天の川
天の川待つて下されトンツーツー
赤子泣くミルキーウェイを呼ぶやうに
片減りの硯の海に天の川
愛媛県      加島一善
仰ぎ見る回る銀河の広さかな
寝転べば空一面の銀河かな
天の川そこからドラマ生まれけり
メーテルを探す銀河の鉄路消ゆ
息すれば落ちて来そうな銀河かな
神奈川県      皆空眞而
詩人棲む銀河辺境地球号
山際は街の明りか天の川
天の川星一つ減り吾子生る
銀河果て氷溶けゆく北極海
千葉県      高倉真生
五十年眠る酒樽天の川
天の川噴いて鎮まる活断層
途絶えざる献花の人や天の川
福岡県      多事
踝まで薄く浜砂天の川
ゴスペルの響く船出や天の川
我が内に唾棄すべき詩天の川
働き方そうは変われぬ天の川
猿人も囁きしかな天の川
埼玉県      彩楓(さいふう)
アマゾンの森林の熱天の川
屋上に寝転び見上ぐ天の川
京都府      中村 万年青
いつの日か辿り着きたや天の川
秋の夜やミルキィウェイは雲隠れ
銀河より地球は見えぬか病螢
東京都      豊島 仁
釣宿の風呂の先客天の川
こうなれば命捧げん天の川
遺言を破り捨てたる天の川
天の川大人のための湖畔宿
プロポーズ二人で行こう天の川
東京都      綾部 捷子
一瞬の幸せ祈る天の川
東京都      飯田 哲司
天の川年に一度の出合い川
いつの世も夢をみさせる天の川
天の川空を気づかう男の子
天の川不滅の力限りなく
平安の古典育てし天の川
神奈川県      髙梨 裕
島の灯に残る祖母の手天の川
天の川青春を無くした向ふ岸
天の川何処で暮らす隣の子
祖父を待つ雲梯の空天の川