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- 俳句庵 2017年04月 優秀賞発表
- 俳句庵 2017年04月 作品一覧
俳句庵
4月『鳥帰る』全応募作品
(敬称略)
- 宮城県 石川初子
- 鳥帰るニルス少年旅おえて
- 新潟県 近藤博
- 鳥帰るコンパス持つがに北の空
- 湖に羽撃きしげく鳥帰る
- 日の沈む空に群れなし鳥帰る
- 遠ざかり雲居はるかに鳥帰る
- 北に向け高く群れなし鳥帰る
- 神奈川県 髙橋榮一
- 思ひ出の写真なつかし鳥帰る
- 鳥帰る仁王に確と見守られ
- 餌あげし児らにまたねと鳥帰る
- 空っぽの大池残し鳥帰る
- 人の世のことはさておき鳥帰る
- 岐阜県 金子加行
- また戻る寂しき沼や鳥帰る
- 友の去る思ひに似るや鳥帰る
- 何千年同じ道のり鳥帰る
- 一本の道のあるかに鳥帰る
- 美しき集団演技鳥帰る
- 北海道 吉岡亨徹
- 大湿原ヒロシゲブルーと帰る鳥
- 瑞鳥や崑崙八仙(ころばせ)舞いて雲に入る
- 赤帽子ワルツの軌跡帰る鳥
- 大阪府 藤田康子
- 鳥帰る又会えるとて惜しむなり
- 大空へ又長旅の鳥帰る
- 堀の面に約束残し鳥帰る
- 愛知県 遊泉(ゆうせん)
- 引鳥の列乱れざるビルの街
- 引鳥の北帰行かな雨上る
- 夕暮れの煙る湯の街鳥帰る
- 鳥引くや伊勢神島の海に立つ
- がん病める妻は寛解鳥帰る
- 兵庫県 紫 桔梗
- 大空の道を辿りて鳥帰る
- 一羽発ちそれを機にして鳥帰る
- 鳥帰る今は昔の流人島
- 殿の少し遅れて鳥帰る
- 山城の天守閣越え鳥帰る
- 神奈川県 守安雄介
- 潮騒の津軽海峡鳥帰る
- 阿寒湖を一泳ぎして鳥帰る
- 鳥帰る視力検査の文字となり
- 吾知らぬシベリアに向け鳥帰る
- 利尻富士斜めに過ぎり鳥帰る
- 熊本県 貝田ひでを
- 見上ぐれば児の指す彼方鳥帰る
- 名を変へて蛇行する河鳥帰る
- 鳥帰る村史に謎の古墳群
- 肥後豊後分かつ頂鳥帰る
- 大阿蘇は肥後の宝や鳥帰る
- 千葉県 柊二
- 飛行機のはりつく空を鳥帰る
- 神奈川県 佐藤博一
- 風を読み風に従ひ鳥帰る
- 待つ人のいる幸せや鳥帰る
- 産土の風に誘はれ鳥帰る
- 羅針盤空にあるかに鳥帰る
- 故郷は近くて遠し鳥帰る
- 大阪府 藤田悟
- 鳥帰る馴染む水面を未練なし
- はぐれずにみんなで行けよ鳥帰る
- 神奈川県 衛藤佳也
- 風となり日暈のなかに鳥帰る
- 鳥帰る後ろ姿に決意あり
- 陸とぎれなお海あるに鳥帰る
- 京都府 欲句歩
- 指先を伸ばせば紲鳥帰る
- 島訛り通して遂げて鳥帰る
- 鳥帰る一旦捨てし隠岐訛り
- 神奈川県 野口香緒里
- 雲流れ光の道へ鳥帰る
- 鳥帰る春の訪れまだ遠し
- 鳥帰る鎮守の森へ夕焼けと
- 長野県 木原登
- 啄木の立待岬鳥帰る
- さざ波の綺羅置き去りに鳥帰る
- 天上に亡き師亡き友鳥帰る
- ケ・セラ・セラ好きか嫌ひか鴨帰る
- 昨日今日ありて明日あり鳥帰る
- 神奈川県 白銀
- 鳥帰る 那須烏山 雪解けに
- 鳥帰る 面影待てよ 我が街で
- 鳥帰る 光と闇の 人影に
- 鳥帰る 街角で会い 別れと死
- 鳥帰る やうやう鳴くに 山奥へ
- 千葉県 伊藤博康
- 鳥帰る仲間と一緒ならば行く
- ざわざわと水面を乱し鳥帰る
- 振向きもせずまつすぐに鳥帰る
- 佐賀県 古賀由美子
- 鳥帰るオーロラもまた遥かなり
- 鳥帰る失くした記憶探してる
- 望郷の記憶は遥か鳥帰る
- 抽斗にセピアの写真鳥帰る
- 鍋からはホクホクの湯気鳥帰る
- 三重県 平谷富之
- 母の死を悲しみ鳥は帰りけり
- WBC結果気にして鳥帰る
- 大阪府 ひいらぎ
- 世知辛い日本あきらめ鳥帰る
- 終の地は何処になるや鳥帰る
- 鳥帰る我も故郷を焦がるるや
- 鳥帰るあてなき我の猫背かな
- 鳥帰る赤いゼリーの空の方
- 埼玉県 飯塚璋
- がらんどう岸にさざなみ鳥渡る。
- がらんどう岸にさざなみ鳥帰る。
- 滋賀県 了庵
- 鳥帰る空に国境なかりけり
- 新しき家族を連れて鳥帰る
- 鳥帰る空のどこかに鳥の道
- 湖にさざ波残し鳥帰る
- 一湾を空っぽにして鳥帰る
- 宮城県 林田正光
- 鳥帰る往復葉書返信よ
- 風見鶏回り始めて鳥帰る
- 北を指す磁石どおりに鳥帰る
- 鳥帰る高層ビルのその上を
- 鳥帰る空の駅にて一休み
- 愛媛県 高橋美弥子
- 鳥帰る伝へたきことあまたあり
- 東京都 岩崎美範
- 鳥帰るスカイツリーを旋回し
- ふるさとはあの雲の下鳥帰る
- 達者でと手を振る妻や鳥帰る
- 鳥帰る帰る目処なき地震の街
- 故郷なき東京人や鳥帰る
- 東京都 内藤羊皐
- 鳥帰る311の蒼天遺し
- 鳥帰る淫らな星を道連れに
- 鳥帰る太鼓橋址の空深し
- 夕暮の朱を染めりて鳥帰る
- 襲名の芝居かかるや鳥帰る
- 神奈川県 長島マミコ
- 抱えしは過去か未来か鳥帰る
- 神奈川県 シュリ
- 空の道風満ち満ちて鳥帰る
- 鳥帰る焼き場の煙見送って
- 時の針カチリと進み鳥帰る
- 友残しすまぬと鳴いて鳥帰る
- 大空の道が開きて鳥帰る
- ブラジル 西山ひろ子
- 帰る場所在る仕合はせや鳥帰る
- 大空の一つの道を鳥帰る
- 低く高く乱れぬ列や鳥帰る
- 鳥帰る大きく小さく廻りたる
- 二カ国を移民の如く鳥帰る
- 埼玉県 岸保宏
- 鳥帰る船漕ぐ祖母に風避けり
- 廃校の屋根見下ろして鳥帰る
- 学窓の空狭くして鳥帰る
- 長崎県 内野 悠
- 難民の国境越へを鳥帰る
- 呼ぶ声の見へたるごとく鳥帰る
- しばらくは壱岐に立ち寄り鳥雲に
- 鳥帰る日本の空を汚さずに
- いつせいに泥水零し鳥帰る
- 滋賀県 一斤染乃
- 順々に助走の水面鳥帰る
- 山梨県 万屋あたる
- 恨み言 Twitter にのせ鳥帰る
- 神奈川県 井手浩堂
- 退院の決まりたる窓鳥帰る
- 鳥帰り湖広くなりにけり
- 鳥帰る鎮守の森をまづ越えて
- 帰る鳥海の国境越えるころ
- 鳥帰る水面を羽搏つ音たてて
- 三重県 遊眠
- みちのくは黙とうの午後鳥帰る
- 凄まじや廃炉を越えて鳥帰る
- 鳥帰る群れを離るる被ばく牛
- 兵庫県 山地美智子
- 鳥帰る里に残りし老夫婦
- 帰る鳥郷振り返ることはなし
- 鳥帰るその羽ばたきの休みなし
- 鳥帰る夕日の当たる山の色
- 南北に長き連山鳥帰る
- 滋賀県 村田紀子
- 鳥帰る湖面に波紋輝かせ
- 風止んで子等の歓声鳥帰る
- 帰る鳥見送る翁腰伸ばす
- 鳥帰る飛行機雲を横切って
- 鳥帰り波紋無き湖トンビ舞う
- 大阪府 森村冨美子
- 幾つもの風を乗り継ぎ鳥雲に
- 幾千の山川ながめ鳥帰る
- 湖に残る仲間をおいて帰る鳥
- 風を読み雲を追いかけ鳥帰る
- 帰る鳥飛沫きらめき水面立つ
- 東京都 住澤義英
- 里ごころ今日も明日も鳥帰る
- 鳥帰る飛び立つ先は群れ任せ
- 屋敷林見えては消えて鳥帰る
- 鳥雲に別れを惜しむ鐘の音
- 長旅に望みふくらむ鳥帰る
- 三重県 後藤允孝
- 暮れなずむ空へ一陣鳥帰る
- 北空へ向きを変えつつ鳥帰る
- 友とまた酌み交わす酒鳥帰る
- 蒼天に声つなぎをり鳥帰る
- 鳥帰る夕日に羽を光らせて
- 大阪府 津田明美
- みちのくの復興半ば鳥帰る
- 被災者に帰郷いつの日鳥帰る
- 鳥帰る地は同胞の今もなほ
- 友去りし空を濁して鳥帰る
- 又逢うは祈りに託し鳥帰る
- 大阪府 永田
- 徴兵の国もありなむ鳥帰る
- 復興の完遂待てず鳥帰る
- 愛媛県 加島一善
- 鳥引くや池に静寂戻りけり
- 鳥帰る舞ひ納めたる池の上
- 鳥帰り石の転がる寂しさよ
- 帰る鳥旨き物食い脂肪肝
- 鳥引くや共に去りゆくカメラマン
- 神奈川県 塚本治彦
- 鳥帰る雲一つなき北の空
- 北方の領土還らず鳥帰る
- 任期果つる再任用や鳥帰る
- 鳥帰る水面ひねもす落ち着かず
- 退院の決まらぬ父母や鳥帰る
- 長野県 岩岡啓一
- パンの耳最後の1片渡り鳥
- 兵庫県 噂野アンドゥー
- スワローズ 優勝の力 もう一度
- 夕焼けや 烏帰れば 子も帰る
- 鳥帰る 季節の変わり目 取り替える
- 桜咲き 鶯鳴くや 桜散り
- 春が来た 我が家の軒に つばめの巣
- 岩手県 堤久夫
- 何も無い日高見の田や鳥帰る
- 句帳手に待ちし診察鳥帰る
- 鬼や住む山並みはるか鳥帰る
- 鳥帰る朝餉頬張りアルバイト
- 夫の手妻振り払い鳥帰る
- 東京都 宮下洋
- 破れ羽根を あまた残して 鳥帰る
- 鳥帰る 日となりたるや ざわめける
- 啼き交しつつ遠ざかり 鳥帰る
- 帰る日を 定めゐたらし 鳥帰る
- この空を ひとまはりして 鳥帰る
- 愛媛県 渡邊國夫
- 加茂川に虚しさ残し鴨引けリ
- 鳥帰る山に修験の法螺の音
- 鳥雲に土地改良の扇状地
- 弘法の水湧く浦や鳥曇
- 老農の畦に一服小鳥引く
- 岐阜県 蛙田 環
- 絵手紙の色えんぴつや鳥帰る
- 軒低くく古い町並鳥帰る
- 鳥帰る土産はみちのく金色堂
- 啄ばみて力たくはへ鳥帰る
- 朝市のおばばの手拭鳥帰る
- 静岡県 城内 幸江
- 鳥帰る薄紅に浸りたし
- 水面には静寂はなく鳥帰る
- 雨の日の淡き匂よ鳥帰る
- 東京都 佐藤博重
- 高層の千のまなざし鳥帰る
- 国境といふしがらみや鳥帰る
- 鳥帰る眼下のクルス標とし
- 東京都 伊藤はな
- 光満つ雲の果たてを鳥帰る
- あらましの装ひ見せし鳥帰る
- 引鳥のパスポートレス定期便
- 高々と風を捕まえ鳥帰る
- 引鳥の声の残像風となり
- 大阪府 太田紀子
- 草生ゆる軍人墓地や鳥帰る
- 鳥帰るダム湖に夕日流れをり
- 鳥帰る航跡白き瀬戸内海
- 神奈川県 海野優
- 鳥帰る少女へ思ひ告げぬまま
- 人ごみに異国のことば鳥帰る
- 生涯は短編小説鳥帰る
- 手びさしの少年はるか鳥帰る
- 鳥帰る故郷の思ひ捨て難く
- 奈良県 平松洋子
- 地球儀の記憶辿りて鳥帰る
- 両の手を挙げ振るばかり鳥帰る
- 岬抜け果てなき旅や鳥帰る
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- 鳥帰る農機具小屋に星座盤
- 鳥帰る噴煙高き桜島
- 鳥帰る耳の形は父に似て
- 鳥帰る遺伝子といふ地図を持ち
- 仏間には先祖の写真鳥帰る
- 神奈川県 龍野ひろし
- ロビングの舞ひあがる空鳥帰る
- 鳥帰る飛行機雲を追ひかけて
- 鳥帰る一羽たりとも落伍すな
- 埼玉県 よしこ
- 鳥帰る下総辺り消え行きて
- 鳥帰る数多の人を通り過ぐ
- 大空の先へ先へと鳥帰る
- v字型道ある如し鳥帰る
- 鈍色の空疎らなり鳥帰る
- 東京都 豊宣光
- 夕映えの海静かなり鳥帰る
- 鳥帰る錦を飾り故郷へ
- 難民に帰る家なし鳥帰る
- 水面打つ羽ばたき残し鳥帰る
- 鳥帰る夕べの膳の肉団子
- 長野県 けいこ
- 待つひとが向こうにもいて鳥帰る
- 神奈川県 成田あつ子
- 高窓の富士見へぬ日や鳥帰る
- 大空に道ありなむや鳥帰る
- 惜しむ間もなき別れあり鳥帰る
- 雲路にも世界地図あり鳥帰る
- 眼裏に蒼き湖(こ)とどめ鳥帰る
- 山口県 磯部清昭
- 鳥帰る義父の抑留されし地へ
- 鳥帰る薄らひでゆくあの日へと
- 東京都 右田俊郎
- 鳥帰る校舎の窓に手を振る子
- 鳥帰る都会のビルの無表情
- 吾もまた村離るとき鳥帰る
- また来いと帰る鳥らに呟く子
- 廃校を告げる校長鳥帰る
- 三重県 治もがり笛
- つがい鳥帰る支度を子に教え
- 温暖化予測早めて鳥帰る
- 東京都 遠つ紫人
- 鳥帰る 飛行機雲の 棚引けり
- 茶柱の 立ちし吉日 鳥帰る
- 鳥帰る 4月始まり 日記買う
- 山口県 山縣敏夫
- 登下校群れなす子等に鳥帰る
- 北帰行愛犬供に家路急く
- 北帰行唄う二人の旅烏
- 連れ合いとそぞろ歩きに鳥帰る
- ふる里の棚田の嶺を鳥帰る
- 東京都 紫鴨
- 鳥帰り 戻る冬型 寒気団
- 鳥帰る 飛影図鑑で 確かめる
- 靖国で 開花宣言 鳥帰る
- 鳥帰る 声や無音の ジョン・ケージ
- 鳥帰る 花粉マスクの 多き街
- 目覚ましの スヌーズ三度 鳥帰る
- 神奈川県 矢神輝昭
- 鳥帰る旅路の先へ駆るものは
- 鳥帰る行くてを追うは茜雲
- 鳥帰る吾が故郷へ文頼む
- 旅一座巡業終えて鳥帰る
- 待ちぼうけ夫の任地や鳥帰る
- 埼玉県 小玉拙郎
- 紅灯の地を眼下にし鳥帰る
- 鳥帰り湖岸はもとの殺風景
- 帰る鳥雲居を行くはもう見えず
- 神奈川県 原川 泉水
- 鳥帰る不安と希望胸に秘め
- 故郷の香知ってか途を鳥帰る
- 鳥帰る今宵の宿はありなむや
- 清気吸ひ夢共にし鳥帰る
- 鳥帰る惑はず羽ばたけ幾千里
- 京都府 村田高久
- 鳥帰るあの日の町も通り越し
- 赤鉛筆握りて絶叫鳥帰る
- クレーンの動きの先や鳥帰る
- 鳥帰る昨日騒ぎし池残し
- 鳥帰る鉛筆の芯折れる時
- 東京都 中田ちこう
- 風神の駆ける天空鳥帰る
- ひとひらの雲をとどめて鳥帰る
- 群青の響く学び舎鳥帰る
- 東京都 茜崎楓歌
- 引く鳥や青春不完全燃焼
- 子らの声見捨てるやうに小鳥引く
- 鳥帰る目にゆふぐれを滲ませて
- ゆふぐれに引く鳥はみなくろぐろと
- 鳥帰る眼鏡は寝顔みつめをり
- ブラジル 林とみ代
- 受入れぬ国は避けよと鳥帰る
- しんがりを行くは老いたる鳥帰る
- 黒潮の寄する紀ノ國鳥帰る
- 祖先眠る里を偲びて鳥帰る
- 鳥帰る津波流せし古巣跡
- 石川県 松田文女
- 鳥帰る猫は大きく伸びをする
- 鳥帰る夕焼け空はより赤く
- 鳥帰る三角に空切り裂いて
- 鳥帰る空まで響く子等の声
- 鳥帰る泉は広くなりにけり
- ブラジル 玉田千代美
- 鳥帰る夕焼け雲に踏み込んで
- 鳥帰る我は老い行く杖を抱く
- 鳥帰る故郷は何処かどの国か
- 山梨県 重兵衛
- カリオンの音澄みとおり鳥帰る
- 鳥帰る空に境があるやうに
- 乳母車長き列なし鳥帰る
- 教会の壁のイコンや鳥帰る
- 列長き野辺の送りや鳥帰る
- 富山県 岡野満
- 鳥帰る祭りの後の静けさよ
- 旅立ちの気配も見せず鳥帰る
- 今朝よりは静もる池や鳥帰る
- 山あいに静けさ残し鳥帰る
- 村の空ひと回りして鳥帰る
- 福岡県 西山勝男
- 鳥帰る棹となりゆく空深し
- 降臨の嶺をそびらに鳥帰る
- 鳥帰る軍艦島を方にして
- 鳥帰る魚藍観音遥影に
- 殉教の島を過ぎりて鳥帰る
- 愛媛県 砂山恵子
- 古びたる化粧ポーチや鳥帰る
- 鳥帰り手元にラーゲリ記録集
- チョモランマ頂上越えて鳥帰る
- ロケ班のカチンコの音鳥帰る
- 窓を向く待合ベンチ鳥帰る
- 愛知県 川俣周二
- 高層の南の空を鳥帰る
- 鳥帰る街で働く子は元気
- 鳥は北へ舟は南へ鳥帰る
- 出稼ぎの老夫のごとく鳥帰る
- 釣糸を垂らす彼方を鳥帰る
- 栃木県 長浜 良
- 産土に東南の風鳥帰る
- 鳥帰る坂東太郎の中空に
- 鳥帰る山河輝きいたりけり
- 火葬場に煙ひとすじ鳥帰る
- 東京都 少聞
- あおぞらの青届かずや鳥帰る
- 公園の像皆裸足鳥帰る
- 鳥帰る表裏なき日章旗
- 故郷はいつも青空鳥帰る
- 軍艦は巨なる揺りかご鳥帰る
- 大阪府 椋本望生
- 鳥帰る衛門三郎追ふやうに
- 鳥帰る仮子転がす身の上を
- とぐろ巻くホースの水や鳥帰る
- 弓形の日本を斜に鳥帰る
- 夢捨てて五右衛門風呂へ鳥帰る
- 岡山県 海苔徹
- 大木に赤き実残し鳥帰る
- 大木の緑(あを)の実残し鳥帰る
- 埼玉県 哲庵
- 鳥帰る笑ひ始めし山の上
- 鳥帰る蕉翁像を下に見て
- 白鷺の天守の上を鳥帰る
- 鳥帰るスカイツリーを斜交いに
- 鳥帰る金の鯱かすめつつ
- 東京都 岩川容子
- カギや列ときには乱れ鳥帰る
- 故郷に祖の墓なし鳥雲に
- 鳥帰る数多いのちのあふれ出し
- 鳥帰るクラーク像の手の彼方
- 埼玉県 守田修治
- 雨止んで逆さ富士出て鳥帰る
- 鳥帰る暗い艀が沖に出る
- 鳥帰る汽笛が啼いて置き手紙
- 眼下には外野ノックか鳥帰る
- 砂時計狂うことなき帰る鳥
- 岐阜県 ときめき人
- 鳥帰る北へ北へとへの字かな
- 東京都 からす
- 諦めて 明日に向けて 鳥帰る
- 反省も 次の日向けて 鳥帰る
- 鳥帰る かぞくのもとへ ゆうぐれに
- 今日の日を 思い出しつつ 鳥帰る
- 踏みしめて 羽ばたける日を 鳥帰る
- 千葉県 横井隆和
- ・鳥帰る湖面に静寂の村灯り
- ・鳴く一羽佇む湖畔や鳥帰る
- ・一列に波打つ羽音や鳥帰る
- 北海道 飯沼勇一
- 「帰らぬ」を残し千羽の鳥帰る
- 牛たちの見上ぐ蒼空鳥帰る
- 鳥帰る鳥守りの役引退す
- 湖蹴って未来へますぐ鳥帰る
- 凹凸の大地真白を鳥帰る
- 千葉県 大隅隼人
- 鳥帰る終の棲家の在り足れば
- ふるさとの海の匂ひや鳥帰る
- 千葉県 山田香津子
- 房総の海面のひかり鳥帰る
- おちこちにソーラーパネル鳥帰る
- 上総には高き山なし鳥帰る
- 神奈川県 石鎚 優
- 散りぎはの白極まるや鳥帰る
- 下校児の小さき背中鳥帰る
- 大仏の笑み静かなり鳥帰る
- 帰りなむいざ吾もまた鳥帰る
- 茅葺の鴫立庵や鳥帰る
- 東京都 蘭丸
- 良日に力石触れ鳥帰る
- 翻訳に手こずる手紙鳥帰る
- 千葉県 みやこまる
- 後ろ髪引かれもせずに鳥帰る
- しっかりと夢から覚めて鳥帰る
- 廃校の窓震わせて鳥帰る
- 福島県 いらくさ
- 鳥帰る或は光年飛び越えて
- 引き鳥や歯医者通いをしている間
- 鳥帰る花咲く島は鬼のもの
- 小鳥帰るや彼の森も変わらぬ陽
- 鳥引いて柑橘類に皺が寄る
- 東京都 武蔵野 次郎
- 学び舎の つぼみふくらみ 鳥帰る
- 鳥帰る 伝書鳩かと 悟る日々
- 繚乱に 旅立ち惜しみ 鳥帰る
- 咲き誇る 野山を飾り 鳥帰る
- 千葉県 悠理
- 鳥帰る猛き地層の匂い連れ
- 星の名の列車眼下に鳥帰る
- 存外に長き列島鳥帰る
- 東京都 笹木弘
- 忖度の文字を躍らせ鳥帰る
- 鳥帰る北へ伸びゆく送電線
- 墨東の空を広くし鳥帰る
- 生国に齢増やして鳥帰る
- 兵庫県 山崎衣玖
- 開花の報広がる地より鳥帰る
- 井戸端の伸びたる夕や鳥帰る
- ドロップス溶くる夕焼や鳥帰る
- 鳥帰る空や松葉降る公園
- 五年後の人文字見むと鳥帰る
- 東京都 田村奏天
- 引鳥の尾のなよよかに朝日さす
- 少年漫画破れ鳥帰る声
- 崩し字のaの渦巻き鳥帰る
- 洋館の二階の窓や鳥帰る
- 鳥帰る波は街々結びつつ
- 神奈川県 佐々木 僥祉
- 漕艇の一人下るや鳥帰る
- 神奈川県 髙梨裕
- 飛び立てば遠雲遥か鳥帰る
- しるべなき空を海をも鳥帰る
- 生あらば真実一路鳥帰る
- 鳥帰る山河に夕日残りけり
- 北海の明かり千里を鳥帰る
- 京都府 中村万年青
- 故郷の仲間の元へ鳥帰る
- 追風の津軽海峡鶴帰る
- 国境ひらりと越えて鳥帰る