俳句庵

5月『清水』全応募作品

(敬称略)

京都府     中村 万年青
柄杓手に音羽の滝の汲む清水
御香水汲めども尽きぬ清水哉
染の井の旨し清水や御所隣
清滝や清水さ走る岩の上
日本一旨しと思ふ白菊水
神奈川県     髙梨 裕
人生の余白に山の清水かな
山ガール清水掬いて口含む
山路来て清水休まる老いの足
手の平に清水受け止めこぼれ落つ
弘法の水一口の清水かな
東京都     石見 光夫
奥多摩の清水が造る名酒かな
神奈川県     佐々木 僥祉
連聳の雲からめとり清水湧く
清水ありシエラカップとる間ももどかしく
岡山県     渡辺牛二
清水くむ煤けし薬缶いつぱいに
水神にまずは一礼岩清水
埼玉県     守田 修治
いつだって青春の味岩清水
足馴らし山は高尾の岩清水
下鴨の清水に泳ぐ豆腐かな
いざ飲まん不老長寿の岩清水
過疎なれど清水の美味さに人の列
宮城県     遠藤 正寿
底清水進化の川を辿る獣
兵庫県     山崎ぐずみ
国境に雲の湧きをり清水かな
石清水湧きてすぐにと流れをり
草清水湧きてはたまた潜りたり
手のひらや三筋の皺のうく清水
手間仕事なして清水を飲みにけり
愛媛県     アリマノミコ
古代より地球を救う清水かな
熊本県     貝田 ひでを
順番を急かれて清水飲み憩ふ
飯焚きに清水を使ふ贅沢さ
飲み終へて「フー」と一息岩清水
富山県     岡野 満
掬う手にチカラ漲る岩清水
登山する人の集うや清水湧く
霊峰に千歳流るる清水かな
北海道     飯沼 勇一
火の山を母に海へと岩清水
潜り来し千年の刻岩清水
碧き空押し上ぐごとく清水湧く
故郷の味濃き清水汲みに行く
城内の清水の枯れて掘淀む
東京都     岩川 容子
八方に尾根の入りくる岩清水
くずし字のように流れる山清水
双掌に刃の如き清水受く
山麓に名もなき寺や清水湧く
福島県     いらくさ
宇宙人降り立ち掬ぶ山清水
水の星UFO寄せる草清水
草の葉のカップに青き朝清水
苔清水鳥と分かちて利きにけり
強清水弘法清水乳母清水
東京都     紫滴
掬うより 腑に染み渡る 石清水
石清水 人と交わる 情なし
東京都     蘭丸
庭清水農史を繋ぐ古刹かな
真清水や裂け目なにくれ旅鞄
愛知県     新美 達夫
一筋の清水大河に注ぐ夢
狷介なわが掌なりけり岩清水
滋賀県     村田 紀子
風止んで清水に響く鳥の声
登山道笑み呼び戻す清水あり
蝶々舞う清水に休む親子連れ
山道で地蔵が招く水に会う
被災地に清水届ける人と人
山口県     ひろ子
ふるさとの清水のめぐみ被災地へ
岩清水みつけてごくごく飲みにけり
東京都     山宮 有為子
割れ目から 雫となりて 岩清水
神奈川県     中村 光男
坑道の出口の清水朝日なか
清正の清水に日矢の射し込みぬ
鎌倉の谷戸の石仏岩清水
行者道日矢の射しをり岩清水
鍾乳洞たどれば響きなす清水
千葉県     隼人
すぐそこに稚魚悠々と石清水
真っ白なハンカチ絞る清水かな
三重県     後藤 允孝
真清水を集め智積の鯉の里
神苑の杜潤して苔清水
山清水飲めば薬の但し書き
膝つきて両手は掬ふ石清水
川底の砂踊らせて清水湧く
鳥取県     瀬尾柳匠
山清水喉に至福の延命水
石清水喉を鳴らして飲み干せり
掌に受けて零るるままに山清水
千年も絶ゆることなき清水かな
汲み置きの山清水もて茶を点てる
大阪府     永田
序破急を乱しに乱し山清水
東京都     中田ちこう
農夫なく風の音消え夕清水
清水汲むヤカンの尻が焙られる
東京都     石井 昌男
膝をつきゆるりと両手山清水
東京都     石井 まゆみ
欠け茶碗濡れ石に伏す山清水
かがみ腰右手が掬う清水かな
清冽な清水湧き出ず最上川
湧き出ずり砂を転がす清水かな
ありがたや大溜息の岩清水
大阪府     太田 紀子
登り来て社の清水掬ひけり
山清水の柄杓新し昼下がり
鳥居二つくぐりて会ひし清水かな
神奈川県     大木 梨紗子
足休め清水に映る風の影
神奈川県     野川 喜一郎
岩清水色気も何も山おんな
ぽったりと時間を刻む清水かな
小流れの清水はやがて地に潜る
水源地しか知らぬ清水かな
小休止清水溜まりに足を入れ
栃木県     青萄
清水汲むわが行楽の空の碧
神奈川県     戸田浮木
杖休め清水掬びや握り飯
杯で清水汲みけり森の中
神奈川県     龍野 ひろし
山清水ボトルに汲みて登り出す
山清水両手で掬ひ小休止
栃木県     長浜 良
真清水に豆腐よどませ峠茶屋
兵庫県     山地 美智子
岩清水まずは柄杓をすすぎけり
埼玉県     飯塚 璋
神仙と思ひて掬ふ清水かな
岩清水青空見えて深呼吸
持ち合はすペットボトルに山清水
ドリンクの浮いて筧の清水かな
滾滾と清水は砂を持ち上げて
岡山県     有吉 一行
セラセラとあと追い立てし山清水
目を閉じて頭にかぶり岩清水
沢ガニの甲羅冷やして清水かな
ヒザ濡らし清水飲み干すうまさかな
地の恵み滴り落ちる苔清水
岡山県     岸野 洋介
山清水妻の墓石にかけにけり
少女らの口尖らせて岩清水
掬う手に緑映れり山清水
富士よりの清水噴き出て柿田川
両手もち掬う清水にひざまづく
神奈川県     矢神 輝昭
石清水手水を溢れ登山靴
清水湧く幾十の年の沈思経て
こんこんと笑ひこけおる清水かな
寺町をお清水流れ下駄の音
梅花藻の清水と連れ添ふ柿田川
神奈川県     相模太郎
こんこんと湧き出づ言葉岩清水
苔の生ふ岩の暗さに清水湧く
岸壁に顔張り付けて吸ふ清水
岡山県     佐藤 邦夫
富士清水名水百選天狗鼻
ありがとう清水潤う地球かな
石清水海苔が舞う舞うランデブー
石清水せせらぎうれし息つなぐ
山走る清水とびこむ霧のつぼ
埼玉県     哲庵
もののふの大刀洗ひたる清水かな
まいまいの殻沈めたる清水かな
絶え間なく水琴慣らす岩清水
きりぎしの菩薩を濯ふ山清水
老犬と命の清水頒ち飲む
大阪府     津田 明美
天川の悠久を湧く清水かな
ここはもう分水嶺か清水汲む
ほとばしり岩肌濡らし清水落つ
地の底の塊も砕きて岩清水
幾層の命吸い上げ岩清水
東京都     田中 永
金色の砂のこをどり山清水
足元の石のぐらつき岩清水
埼玉県     櫻井 玄次郎
法螺貝を遠くに聞くや岩清水
千葉県     横井 隆和
染め揚げる樹海の蒼さよ苔清水
苔清水別れ別れる阿弥陀籤
湧く清水踊る陽砂の乱舞かな
岩清水次いでは目指す秘境の湯
水筒に受けて土産の岩清水
愛知県     清水 陽子
岩清水滴りやがて大河かな
清水湧く魚(うお)よろこぶや柿田川
清水汲む草の柄杓も喜びぬ
まことより綺麗に映ゆる清水かな
覗ければ未来が見えそな清水かな
三重県     平谷 富之
その山の 香りもありて 岩清水
岐阜県     ときめき人
峠越え井月の啜る岩清水
栃木県     すみ女
山清水誰が置いたかワンカップ
ワンカップ苔むしてをり山清水
庭清水武骨な亭主の蕎麦家業
汲まむとす手の色までも苔清水
神奈川県     猪狩千次郎
生の香立つ造酒屋の清水かな
もてなしの初めは裏の清水かな
青い鳥先に来てゐる清水かな
お抹茶に一滴一滴崖清水
飼葉桶口にしばられ清水陰
神奈川県     成田あつ子
膝つけば帽子映すや山清水
アルプスを背に掬ふ清水かな
登り来てわれ先駆ける山清水
香川県     佐藤 奈都子
老女二人清水の前で立ち話
石清水丸眼鏡の父顔洗ふ
標石辿り着く地に石清水
父も子も喉を潤し石清水
目印の角を曲がれば石清水
神奈川県     川島 欣也
山越えの旅を癒すや岩清水
崖清水村を潤し大海へ
信州のパワースポット七誌水
小休止清水ボトルを満たすまで
山小屋の細く留らぬ山清水
兵庫県     岸野 孝彦
黎明の里に湧きたる清水かな
建長寺音も澄みたる清水かな
山蝶や羽を休めり苔清水
還る場所川海空の清水かな
日は昏れて清水のごとき生希む
神奈川県     塚本 治彦
一口のあと顔洗ふ清水かな
一口の清水甘露と呟きぬ
水筒を零して汲みぬ石清水
清水汲み結婚指輪冷えにけり
清水掬む街へ戻れば働く手
神奈川県     守安 雄介
石清水崖を落ちたる光かな
魚まで透き通りたる清水かな
虹色に光る魚影の清水かな
石清水集め信濃の太郎かな
四万十の清流遡る鯉幟
東京都     夏男
背景の山より青き岩清水
石の上まるく流れて山清水
岩清水汲む水筒に羅針盤
足るを知るてのひらに汲む岩清水
少年の腹這いで飲む山清水
岡山県     名木田 純子
岩清水千古を刻む水の音
一山のひかりを零す清水かな
一掬の岩清水酌み古道行く
山口県     山縣 敏夫
古寺に何やら床し苔清水
竹藪を抜けた途端に石清水
源流の沢の近くに石清水
山登り清水を汲んで一休み
山門の脇の近くに山清水
東京都     まどん
屋敷林抜ける風あり朝清水
清水汲む水筒揺らす尾瀬木道
奥多摩はむかし海底清水汲む
清水茶屋見下ろす湖に雲の影
山清水こだまのごとくチェーンソー
東京都     岩崎 美範
手で掬ひ喉を鳴らして清水のむ
冷たさが胃の腑に沁みる山清水
地図拡げ探しあてたり山清水
手に受けてがぶりと飲みし岩清水
飲んでけと婆の差出す清水かな
神奈川県     井手浩堂
清水湧くかそけき音を楽しめり
日に光るところ野中の草清水
岩清水掬ふ紅葉のやうな手に
神苑に流れ一すじ苔清水
土牢の庇に落つる岩清水
新潟県     近藤  博
ぶくぶくと砂を掻き分く底清水
切り岸の岩間湧き出づ岩清水
掬ぶなり渇き和らぐ岩清水
紙コツプ一個放られ山清水
山路来て清涼しくなき清水飲む
神奈川県     佐藤 博一
真清水を酌めばいのちの透くやうな
清水湧く忍野八海富士噴ける
屋久杉の太古支へる清水かな
利根川の源流探れば清水湧く
山清水ひかりとなりて流れ落つ
宮城県     林田 正光
湧き出ずる清水の底を探したし
真清水や掬いし手からこぼれ落ち
山の息山の鼓動や山清水
庭清水集めて響く鹿おどし
戦国の時代も生きた苔清水
東京都     笹木 弘
彼女の後に口で飲む苔清水
目を濡らし疲れを癒す山清水
霊山の岩間に出でし清水かな
笹舟の流れを委ね苔清水
真清水に心をこめて銭洗ふ
東京都     内藤羊皐
真清水の水皺深き影法師
山姥の腕を伝ふ清水かな
木漏れ日の翠匂ふや苔清水
真清水の禽の躯を満たしたり
故郷や谺のうちに清水湧き
大阪府     椋本望生
真清水を掬ふ脳天きゆつとさせ
足の位置確かめ掬む岩清水
飲ませたき二十歳の兄に汲む清水
岩清水青息吐息かと思ふ
清水汲むペットポトルを溢れさせ
岐阜県     金子加行
岩清水獣注意の柵近し
引き込みし清水耐へぬや醸造所
霊山の清水や臓腑引き締むる
岩清水産湯以来の身を委ね
岩清水これより先が長良川
京都府     田端 敏弘
山清水誰設えた丸太椅子
鳥の声湧き出清水相伴す
長野県     木原 登
真清水の水面たばしる水の玉
旅人へ音を絶やさぬ寺清水
共に掬み肩叩き合ふ清水かな
ころころと喉を甘露の清水過ぐ
岳人の一里いとはぬ瑠璃清水
東京都     直木 葉子
身じろぎつ形代沈む清水川
西行をしのびて掬す苔清水
愛知県     岩田 勇
岩清水のみて遠山ながめをり
あくまでも澄む清水かな過疎の村
岩清水小石はずせばほとばしる
そこかしこ甘き清水の峡の里
御清水(おしょうず)を汲む人々のみな優し
千葉県     柊二
岩肌のやうな柄杓に汲む清水
神奈川県     泉水
岩清水心にしみる水琴窟
苔清水水琴窟の音飽かず
口すすぐ清水豊かに五十鈴川
屈斜路湖清水満たして空映す
カルデラの摩周の清水神降るや
兵庫県     岸下 庄二
水鉢に清水捧げる父母の墓
一本の柄杓置かれし苔清水
岩清水汲んで巡礼また歩く
順番に土下座して飲む岩清水
岩清水順番待ちの列長し
宮城県     石川 長二
湧く清水山河たどりて大海に
笹船を浮かべてひとつ清水かな
宮城県     石川 初子
山彦の静まれるまで岩清水