俳句庵

1月『正月』全応募作品

(敬称略)

富山県     露玉
正月の電柱姿勢よく並ぶ
埼玉県     小玉 拙郎
湯治場の正月タオル新調し
静けさは正月テレビを点けぬうち
正月や死んでなるかと餅を食う
元旦も律儀に三度の薬のむ
千葉県     隼人
正月や願懸け仰ぐ朝日かな
正月や真白き母の割烹着
正月やお猪口傾く父の指
北海道     澤野まひる
静けさの静けさを呼ぶお正月
東京都     鈴木 眞由美
起きて寝て呑んでまた寝て正月か
正月を待つも迎ふもふたりかな
正月やグラスかえても同じ味
正月の天気予報が出て来たよ
岐阜県     ときめき人
正月や凛とするのも三日なり
群馬県     クズウ ジュンイチ
正月や背骨は竹のごとく伸ぶ
東京都     紫旦
正月や 光優しき 障子桟
正月の 神神しさに 紙垂震え
東京都     初紫
紙垂揺れて 正月気分 右上がり
寝正月 死語となりけり 女正月
東京都     紫垂
正月や 障子格子の 四つ分
正月や 郵便受けへ 一張羅
東京都     丸山清子
子の顔に愁眉開くやお正月
愛知県     石川 順一
正月は夜から始まり朝に寝る
正月や今日から始まる自分史話
神社まで正月だから人が居ぬ
正月を酒飲めぬ日と決めにけり
正月を睥睨すれば小者なり
愛知県     古賀 敦子
玄関に靴の溢るるお正月
正月や金箔入りの神の酒
軒下に遊ぶ雀やお正月
トーストのこんがり焼けてお正月
正月や上戸に下戸に神の酒
広島県     永野 昌人
正月や一茶の軸の掛けてあり
子の友をはじめて知るやお正月
子の友の声が二階に寝正月
正月を小原庄助地で行きぬ
正月や凪ぎて船なき瀬戸の海
三重県     石川 喜美子
久々に 子孫と過ごす お正月
三重県     平谷 富之
正月や 我が顔似ている 人そろう
正月や 一人暮らしを 満喫す
埼玉県     哲庵
正月の凧にくっきり和の一字
大吟醸たっぷりくらい寝正月
正月や戦無き世よとこしなへ
正月や辿れば王の血筋とか
正月の凧に大きく税の文字
福井県     相澤 竜次
姪たちの 成長うれし お正月
お正月 食卓囲む 人変わり
正月の 食卓包む 子の笑顔
ブラジル     林 とみ代
正月や旅路行く孫より電話
南国の正月に慣れ齢重ね
郷に入れば郷の正月気分にて
正月の年玉の数孫の数
正月や旅を楽しむ若者等
大阪府     太田 紀子
正月のキッチンに射す日の光
水耕のヒヤシンス咲きお正月
稜線のくつきりと立ちお正月
神奈川県     相模太郎
正月やひと日万歩と誓ひけり
正月や我はマラソン大会へ
正月の貌して猫の通りけり
正月や家族一同健やかに
東京都     岩川 容子
離れ住む人の往き来やお正月
正月やはためく国旗のたたみ皺
神橋の紅鮮やかにお正月
参道に長蛇の列やお正月
東京都     石見 光夫
老夫婦普段のままにお正月
正月の願いは戦なき世なり
岡山県     渡辺 牛二
正月や父一番に起きだして
正月の一日の長き子供かな
数へたる羊の数多寝正月
正月や宮司袴で雪を掻く
北海道     飯沼 勇一
孫ふたり増えてをるなりお正月
仮設にも正月はあり笑ふ声
正月や金髪目立つ浅草寺
正月や貯金を殖やす小学生
大掃除せずの正月老ふたり
東京都     森 清
正月や神おり賜ふ心地して
正月の長い石段のぼりけり
客あれば和室にとほしお正月
老いといふ課題おもたきお正月
老ゆることもめでたきことやお正月
千葉県     黒田 一季
歳の計 胸におさめて 寝正月
尾長鳥 飛ぶ勢いや お正月
正月の 日の出新たに 合掌す
神奈川県     井手 浩堂
正月や和服の妻に会ひし時
正月や開くカルチャーガイド表
ノーベル賞の余韻新たにお正月
大阪府     永田
子を叱る声おだやかにお正月
五世代の履物つつむお正月
埼玉県     守田 修治
正月に飽きてグラヴにオイル塗る
キネマ館はしごして行くお正月
正月やアナウンサーの得意顔
正月や車座漁師の高笑い
正月や湯島本郷下駄の音
大阪府     津田 明美
正月の風の奏でる琴の糸
子の背丈伸びて正月華やげり
これ以上何を望もう大旦
千葉県     藤鷹圓哉
正月やおれのこころは普請中
東京都     水野 二三夫
正月やさらの下着を枕辺に
正月の髪結へば汝も淑女なり
正月や愛し妻のなほかがやきぬ
はなやぎの日や母と子の女正月
幾星霜母を忘れず女正月
東京都     沖田 顫童
正月や明ければ直ぐに職探し
東京都     蘭丸
正月や首筋張りて山の声
正月や普段使ひの皿増える
慣れぬ手の棋譜思ひだすお正月
大阪府     弗椿
正月や猫は宴と距離を置き
正月の番組に飽きショパン聴く
埼玉県     長澤 千鶴子
静かなる老の正月猫とゐる
正月や二人三脚老夫婦
寝正月七〇回目の誕生日
お正月恩師の声のはぎれよく
亡き母のお料理まねてお正月
茨城県     たいようたろう
鏡見て決める今年の面構え
元朝の歯ブラシことに縦使い
三日目の猫ねんごろに顔洗う
年を越す金魚逆立ち泳ぎして
若水を汲んで星くずちりばめる
兵庫県     山地 美智子
正月の予定それぞれ三世代
気掛かりは故郷の老母お正月
テレビ見て食べてばかりのお正月
正月や白寿の母を中心に
お正月よきことばかりありそうな
福岡県     平山 なな子
福袋 買い求めると 長い列
手に余る 熊手求める お幸せ
新成人 着慣れぬ振袖 もてあまし
栃木県     長浜 良
手に触れて子に正月の飾り物
正月や写真の中へ三世代
正月や高値に遊ぶ競りの声
正月や踝寒き宮参り
山口県     山縣 敏夫
愛犬の両目に映える初景色
出初式居並ぶ皆の顔新た
初詣で行き交う顔の輝けり
伊勢海老が皿全体を一人占め
羽子板や昭和の路地の音がする
奈良県     佐藤 靖
正月や家族揃いて3倍増
節料理孫に合わせて様変わり
この日だけ徳利で燗のお屠蘇かな
息子らと歩いて信貴山初詣
お年玉孫たち経由着地は子
埼玉県     米田 哲
檀家より氏子にかはるお正月
稲孫田の金剛煌めくお正月
朝の気の昨日と違ふお正月
正月や凜と畏み小辺路ゆく
正月やま向かひ拝むサンライズ
埼玉県     櫻井 俊治
正月や外で遊ぶ子いま何処
正月に木遣り響くや町お練り
鳶売りし正月飾り匂いけり
大阪府     高塚 政宜
正月のスカイツリーに寝る児かな
正月のエレベ-ターに抱く児かな
富山県     岡野 満
柏手を打って正月始めけり
正月の雑事忘れて旅の宿
目出度さもないが達者なお正月
神奈川県     矢神 輝昭
正月の初顔合はせ気恥づかし 
正月や新の下着を枕元  
迎え撃つ年玉込めるポチ袋
静かさや正月の朝祓ひおり
お正月三日坊主も未練あり
佐賀県     平吉 俊郁
掛替えのない顔揃いお正月
東京都     村上 ヤチ代
お正月てふ一日の始りぬ
愛知県     岩田 勇
運勢の良いも悪いもお正月
正月や気分改まること少し
正月の空ぼんやりと飛行船
正月の烏おっとり塵漁る
ずるずると過ぎて正月終わりけり
埼玉県     岸 保宏
お正月去年と同じ箸揃へ
お正月先ず富士山の姿見に
散歩道犬もおしゃまなお正月
山梨県     天野 昭正
懐かしきお正月の雑魚寝かな
正月や猫と二人の炬燵番
俎板の音心地よきお正月
孫の来て正月の犬吠え通し
正月の膳より磯の香りけり
神奈川県     佐藤 博一
正月や曜日忘れて過ごしをり
家事一切忘れて来る女正月
街中が礼儀正しきお正月
正月や本当の空戻り来る
ものすべて定位置にあるお正月
神奈川県     梅野 光博
正月の変わらぬ時を過ごしけり
正月の日暮れの崩れかけてをり
移りゆくものに正月飾りかな
千葉県     犬槇庵 光晴
東を照らす灯台お正月
熊本県     貝田 ひでを
正月も犬と散歩の夜明け前
正月もナースのノートに注意書き
コンビニの売り子の笑顔お正月
正月のテレビ見飽きてウオーキング
東京都     かつこ
お正月座布団一枚ふえにけり
お正月エレベーターと上りゆく
群馬県     今野 涼人
蕎麦すする 音ただ一つ 寝正月
正月や 門松の葉は 凛と立ち
カーテンに 一縷差したり 初日の出
正月や 去年忘れる 酒の味
正月の 子供笑いて 福となり
岐阜県     金子加行
正月の撮られる顔の締まりなき
正月に渋滞のなき救急車
正月に読み直したき本を積む
孫特区なるや我が家のお正月
ユーモアの光る子となるお正月
兵庫県     岸野 孝彦
正月や父母に引かれて赤鳥居
正月や壽の文字あかあかと
正月のまどろみやふるさとの富士
正月や黒猫の目光る風
正月や川は光りて鳥の影
東京都     岩崎 美範
変りなく暮す幸せお正月
普段着にエプロンの母お正月
誰もかも子供に還るお正月
戦てふ匂ひかすかにお正月
トーストに紅茶で祝ふお正月
北海道     みなと
正月や波濤の高き浦に住む
お正月客人と居て旅心
正月のスナップショットと言はれても
わが浦の百戸の灯りお正月
お正月豊麗線のはたと消ゆ
神奈川県     川島 欣也
正月や決意練り直し五十年
昨日今日みな正月や阿弥陀仏
正月や冥土の渡しまだ見えず
正月や火種絶やさぬ登り窯
正月や電波の運ぶ越天楽
山口県     ―
息災を祝う笑顔や屠蘇かわす
十歳の孫の手早しかるた取り
兵庫県     岸下 庄二
正月の出船の汽笛高らかに
老い二人正月礼もそこそこに
正月の忙しく暮るるひと日かな
正月や父の齢にあと四年
健やかに目覚めてうれしお正月
広島県     安冨 正則
長旅やはやぶさ2もお正月
長野県     木原 登
はるかなる日々を昨日に喪正月
お正月運ぶ鈍行列車かな
二十年子と会へざるも正月来
お正月絵馬も嘶きそめにけり
正月のかなしきものに夕茜
福岡県     紙田 幻草
正月に神妙なりしわが心
正月や二人の父の忌の近し
めでたさの連なつて来るお正月
正月や改めて孫子頼もしき
正月や香煙絶えぬ大悲殿
北海道     江田 三峰
二日はや孫と手を引く友とあふ
女正月愚痴をこぼしに来るかな
ポケットに小銭ザクザク初詣
神棚に準備万端お年玉
羊雲羊蹄山の初日受く
東京都     直木 葉子
大鍋の出番となりぬお正月
正月の爆笑の渦赤ん坊
奈良県     和田 康
正月のアダージョのごと過ぎにけり
正月や百人一首かるた取り
今年また柿の葉寿司でお正月
正月の村上春樹を忘れゐる
餅を食べワインを飲んでお正月
新潟県     近藤 博
正月に数へ年ならなほ一つ
正月の子らの遊びは故にもどり
正月は晴れ着でるんるん子ら愛し
「お」なる字を冠して祝ふ正月は
寝正月妻の望みは許すまじ
神奈川県     守安 雄介
日本の美取り戻したるお正月
補聴器と眼鏡と入歯寝正月
電話機を囲む笑顔やお正月
お正月言葉も所作もあらたまり
北海道     藤林 正則
サハリンへ続く海原初明り
利尻富士裾曳く沖へ初荷船
厠にも掛けておきたる新暦
初凪や島行く船の水脈蒼し
啼き声の殊に親しき初雀
京都府     中村 万年青
伊勢の宮午前令時の初詣
稲荷山脇道抜けて拝殿へ
三輪の山旭に光る黒鳥居
正月や明日へ続く今朝の空
元旦や年賀葉書に春の色