俳句庵

8月『墓参』全応募作品

(敬称略)

東京都     安西 信之
風抜けて山の香の過ぐ墓参かな
神奈川県     佐々木 僥祉
一杓の涼を供ふや墓参り
その小径ともに歩みし墓参り
山梨県     天野 昭正
子も孫も揃い賑やか墓参
職人で頑固な父の墓洗う
近いうち母になる娘も墓参
墓らしき小さき嵩にも参りけり
遠縁の人も来ている墓参
東京都     右田 俊郎
吾のあと継ぐ者もなし墓参
墓参りほどなく吾もゆくと告ぐ
ちっちゃな手合はす幼子墓参
墓参り何か良いことした気分
子らもどり一家そろうて墓参
東京都     辻 翠
颯と風や京見はるかす墓参り
どちらからともなく会釈墓参り
バスを待つベンチ老母と墓参り
旅鞄携へまずは墓参り
目印の大樹伐られし墓参かな
東京都     安西 信之
殿を孫の勤めし墓参かな
墓詣墓碑より低くなりし母
父の下へ母の手を引く墓参かな
兄弟の欠ける事無き墓参かな
東京都     比呂志
時候なき肩たたき軒墓洗う
父親も百を超え墓洗う
ジッポーの匂い懐かし墓参
岐阜県     ―
墓参り蚊と戦いて合掌す
墓参り三世代の波感じゆく
線香の香り新たに盆まいり
墓前立ち背伸びで測る目の高さ
墓参り花束絆の深さあり
東京都     鈴木 眞由美
酒カップ二つ供へて墓洗ふ
墓参隣りの塔婆新しき
母の手を取りし石段墓詣
ブラジル     林 とみ代
ブラジルの祖となる夫の墓参り
過去を侘び父母の墓前に参りけり
開拓の兵眠る墓参り
千の風となりたる夫の墓参かな
掃苔や先駆者眠る丘に立ち
北海道     十佐
オホーツクの風を背中に墓参り
お隣の墓にも供花の墓参り
爺婆に大き報告墓参り
神奈川県     相模 太郎
覚えなき人と会ひたる墓参かな
御供えは庭の花もの墓参り
いつそうの精進誓う墓参かな
火を点けし煙草を供ふ墓参かな
早早に墓参をすませ旅立ちぬ
愛知県     幅 茂
蜩の声聞きに行く墓参り
東京都     石見 光夫
墓参り好みしコーヒー供えたり
その後に生れし児もいる墓参
千葉県     炭茶尼
我が墓碑は不要なれども墓参り
にぎやかにいきてかえるがはかまいり
東京都     笹木 弘
線香の消えるまで居る墓参り
ふるさとの水で洗ひし父の墓
黄泉のこと聞けど答えぬ展墓かな
閼伽桶の水を両手に墓参り
はらからの揃ひて洗ふ父母の墓
千葉県     横井 隆和
墓持たず西の夕陽や墓参り
墓の空仰ぎ指折る友の数
愛知県     石川 順一
墓参して茶店に行くのは躊躇はれ
生き物を慈しむ心墓参り
散々に雨を呪ひて墓参り
天を裂く如き啓示に墓参り
歯磨きは忘れるべからず墓参り
岡山県     山本 美香
墓石に水掛けられて君涼し
汗伝う喉をぬぐって墓参
墓参桶柄杓持つ手は冷えて
北海道     飯沼 勇一
クルマで来クルマで帰る墓参かな
遺言の欅の樹への墓参かな
寺男自家の墓参はそそくさと
碧い目を姪連れて来る墓参り
真っ新の墓碑銘の墓墓参する
東京都     蘭丸
屁理屈を何度も詫びて墓洗ふ
代行の一礼長し墓参
埼玉県     小玉 節郎
ちゃん付けで今も呼ばれる墓参り
当分はこの世にいます墓参り
墓参り家名の穴より蜘蛛が出る
難関は長き石段墓参り
墓参り行きも帰りも無人駅
千葉県     ―
朝露に 青草薫る 墓参り
白き香を 墓が纏いぬ 盆の朝
護国せる 英霊しのぶ 十五日
むせる声 賑やかなりぬ 墓参時
墓参り あちらへ焚ける 香る橋
岡山県     八木五十三
山に掌の足老ゆ父の墓参かな
お互ひに顔知らぬなり墓参り
一滴の水惜しみ墓洗ひけり
母の香や線香の香に墓参り
青森県     森  惇
墓参り 夜の銀河に 祈る幸
墓前にて 座り流るゝ 言の風
泣き声に 心手向ける 墓参り
黄昏の 後光生まるゝ 墓前かな
墓参り 蝿追い払う もみじの手
埼玉県     守田 修治
墓洗う古稀となりたる次男坊
村相撲弱かった父の墓洗う
墓洗う汲み上げ井戸水いい気持ち
反戦の遺志をぶつけて墓洗う
父の声母の声聴く墓参り
神奈川県     野川 喜一郎
在りし日のタスキの母や墓参り  
住職の変わらぬ説教墓参り
名前あれど顔知らぬ墓碑墓洗う
幾年ぶり孫連れて来る墓参り
孫の目はただ珍しき墓参り
大阪府     都女
真新し 戒名滲む 墓参り
墓参り 不慣れな読経 涙雨
墓参り コソ泥烏 経覚え
ギースチョン 読経のごとし 墓参かな
岐阜県     ときめき人
眼をとじて囁きかける墓参り
大阪府     瀬戸 順治
すつかりと周りが変わり墓参かな
埼玉県     ―
蝉しぐれ 先祖にそっと 感謝する
埼玉県     哲庵
墓詣り世界遺産の麓まで
菩提寺の無縁仏の墓洗ふ
墓洗う戦無き世を祈りつつ
線香を聖火リレーす墓参り
初孫を肩車して墓拝む
千葉県     内田 誠
隣にも線香分くる墓参かな
墓参後は故人通ひし店巡り
最後かなまた思ひつつ行く墓参
墓参後はややおごりたる食事する
気が向きし時の墓参や空青し
山口県     ボケ爺さん
胸を張り 親父を越えたと 手を合わす
孫二人 手引き背押す ボ参道
報告は 今年も孫が二人増え
きついねぇ 今年は角度が 5度UP
まだ早い 親父が叱る 墓同居
福島県     小野 和宏
手のひらにたましい載せる彼岸かな
参道に童心寄せる曼珠沙華
母さんはかあさんのまま夏送り
兵庫県     山地 美智子
独り来て黙祷長き墓参かな
一族の賑やかにゆく墓参り
車いすの母も行くてふ墓参り
誘い合ふ者なき故郷の墓参かな
恩師への礼が墓参となりにけり
千葉県     隼人
若かりしちちははの声墓参
一冊の父の形見や盂蘭盆会
訪ね来る生家は廃墟墓参
東京都     夢久乃音
墓参りそっと供えてあった花
高齢で遠路に参る墓参り
墓参り石の代わりに育つ木々
墓の前そこは留守との歌もあり
墓参り終の住処の下見兼ね
佐賀県     平吉 俊郁
墓参の子自分の名字さがしたり
仏壇に行ってきますと墓参り
千葉県     中原 政人
葛餅や月命日の母の墓
線香の煙のなぞる夏の墓
母眠る墓地を抜け行く秋の風
供えもの烏を忌みて持ち帰り
東京都     岩川 容子
細ぼそと墓参につなぐ縁かな
墓洗ふいかつき父の背を思ふ
墓参り墓地に裏門表門
虫除けは用意万端墓掃除
東京都     若槻 泰治
墓参り偲ぶ故人と会話する
偲ばれて紡ぐ絆に夢を見る
また来たよ眠る故人と会話する
長野県     木原 登
年々に母に近づく墓参かな
大阪府     きのと
四時間の高速バスや墓参
草取りからまずとりかかる墓参
両親に無沙汰をわびる墓参
山口県     山縣 敏夫
墓洗い眼下に見遣る基地の街
ワンカップ供えて父の墓詣で
犬連れて小高い丘の墓参り
夢に出たうるさい父の墓洗い
墓詣で見知らぬ人と会釈する
愛知県     松本 廣行
墓参り父と同歳になりにけり
もうすぐの終の棲家や墓参り
戒名の他人のごとき墓参り
母連れてここでいいかと墓参り
墓参り戒名擦れる月日かな
神奈川県     井手 浩堂
母がせしやうに参りて父の墓
海隔て開聞岳見る墓参かな
虚子の墓参り汀子と出会ひけり
東京都     三浦 靖男
孫生まれお墓参りの足軽き
鎌倉や散華いただく墓参かな
墓参して憲法異変父母に告ぐ
受け継ぎし命の旅路墓参かな
あじさいが墓参の道にを濡れふさぎ
広島県     岸保 真理子
立ち昇れ 天へと墓前の 百合の香よ
墓参り 寡黙な父と 向かい合い
産まれ来ぬ 子に供え菓子 母の愛
手を合わせ 感謝伝える 墓参かな
墓掃除 無心に帰る 涼し朝
山口県     ―
海の色はるかに澄みし墓参かな
東京都     丸山 清子
わが影とふたりきりなり墓参
東京都     岩崎 美範
父に酒母にも酒の墓参かな
大阪府     津田 明美
先人の齢はるかに墓参かな
東京都     梶浦 公靖
墓洗う 世俗の塵の ひとつまで
墓参り 増えし家族を 紹介す
手を合わす 遠くに聞こえる 踊り歌
蜩の 経読む声か カナカナと
我よりも 長く祈りおり 孫三つ
東京都     星多
近況を報告に行く墓参
朝の鐘聞き一番の墓参
方言が遠来もてなす墓参
神奈川県     川島 欣也
墓参り父語りだす出自かな
刻まれる句に額寄せ展墓かな
父母の背摩るがごとし墓洗ふ
掃苔やながの無沙汰を詫びながら
違ふ嫁姑も鬼籍墓参り
千葉県     伊藤 和幸
掃苔やいつしか超ゆる父母の齢
わがままを父母に深謝し墓洗ふ
東京都     靖
吾もまた父母と眠りし墓参かな
丸まりて白きうなじの墓参かな
それぞれの歩を異にして墓参り
母の背のこれほどまでに墓参り
マニュキュアの指す先暮れぬ墓参り
埼玉県     岸 保宏
義母に共墓参の仲間多かりき
報告を箇条書きする墓参前
墓参後にみたらし団子二つ買い
静岡県     蓮花寺
墓洗ひ一山に水行き渡る
墓参り黄泉のささやき線香ゆれ
広島県     安冨 正則
この朝の 涼しきうちに 墓参り
新潟県     小林 美博
蝉しぐれ 先祖の墓に 降り注ぐ
盂蘭盆会 寺の小坊主 経を読む
親族が 墓を囲んで 盂蘭盆会
春彼岸 墓にちらつく 小雪かな
盂蘭盆会 一月後には また参り
兵庫県     銅彰
墓参後に 故人ヒイキの 居酒屋へ
墓参後に 故人くぐった 縄のれん
墓参人 となり向かいも 代替わり
故人まね 墓参の後の わらび餅
木々の葉の 積りし墓に 許し乞う
福岡県     星ゆきな
顔知らぬ 先祖に挨拶 墓参り
花を持ち あなたに会いに 墓参り
辛い時 話に行きたい その場所に
ありがとう 心の中で つぶやいて
水をかけ 綺麗に磨き 心にも
兵庫県     鈴木 優子
墓参 線香の香を残して モーニング
神奈川県     山崎 祐一
雲と行く ふるさとの風 墓参
巻戻る 時が流れる 墓参
墓参 道を悟すか 砂利の音
過ぎた日に 心をよせて 墓参
こころざし 叶えてくれよと 墓参
兵庫県     岸野 孝彦
母の手を父の風引く墓参かな
潮騒や花投げいれし墓参り
真新し悲しみ刻む墓参かな
君が呼ぶ海坂上る墓参かな
義母なりし妻の話や墓参り
神奈川県     守安 雄介
路線バス乗り継ぎ姉の墓参り
妻墓参チチロの番持ち帰る
お供への除草剤もて墓参
ガイガー計携へ墓に参りけり
打ち揃う墓前の宴三回忌
愛知県     たつを
墓洗ふ家名絶ゆるは是非もなく
墓参兄当歳に遺影なし
掃苔やむかし野鍛冶のありし道
その人の知らぬ孫あり墓参
長野県     木原 登
庭に出てお墓参りの花を切る
妻と吾の二人となりし墓参かな
日本みつばち巣くふゆゑ墓洗はれず
桔梗を提げて墓参の人となる
兵庫県     岸下 庄二
賑やかな宴の如き墓参
ちちははに近況を告げ墓洗ふ
墓石まだ建たぬ恩師の墓詣
三年の無精を詫びて墓洗ふ
掃苔や故郷だんだん遠くなり
北海道     江田三
孫と来て口数多し墓参
墓参挨拶交はす田舎径
墓参竹馬の友に逢へる径
親戚も集ひ酒酌む墓参
ふる里の山河静かや墓参
東京都     ―
僕の妻、顔よりデカイ、スイカ食べ
千葉県     長谷川 公二
墓参り墓に転居の人増えて
小さき児に墓参の作法教へけり
墓参り墓誌の父の名なぞる母
南無南無と手を合はす児の墓参かな
墓参して父に決意を伝へけり
神奈川県     佐藤 博一
面影は今も童顔墓参り
帰郷して何はさておき墓参り
もう一度叱って欲しい墓参り
寿福寺に虚子を偲べる墓参り
幼名で呼ばれ振り向く墓参かな
神奈川県     神谷 喜美代
今頃は夫の墓域にすみれ咲く
郭公や山の裾野の墓参り
郭公や水かけてかけ夫の墓
東京都     きょうやん
ふるさとはいつも青空墓参り
山鳩の声響くかな墓参り
紫のムクゲ咲く頃墓参り
東京都     岩崎 美範
いつの日か入る予定の墓洗ふ
父に酒母に団子の墓参かな
異国から子等も駆けつけ墓参り
埼玉県     佐藤 茂
ジョギングの気の向く時に墓参
東京都     紫繭(しけん)
子が継ぐは 父の好物 墓参り
墓参り 報告すること 止めどな
東京都     紫涼(しりょう)
花言葉 永久の愛なる 墓参り
「また来るね」 顔近づせし 墓洗う
東京都     紫雹(しはく)
夕立も 祖父の墓石を 洗い去る
墓参り 祖母は必ず 一張羅
大阪府     黄山木
ご無沙汰を詫びる婆さま墓洗ふ
和やかに参る三代墓地公園
あの人の好きな洋花墓参り
神奈川県     むこう
墓参り ばあちゃん元気? 楽しんで
墓参り 先客来てた 花具合
磨き上げ 一番きれいに してる墓 
代々の 先祖に感謝 今がある
悩んだら お墓訪れ 落ち着かせ
長野県     中田 博美
墓参 木桶の重さ 身にしみる
風雪に 耐えし墓前に 手を合わせ
福岡県     紙田 幻草
おだやかな人の背中や墓参り
掃苔や気になる墓の一つあり
家族連れ多くなりたる墓参り
愛知県     柵木 充義
琵琶湖をば一望となす墓参かな
誰ならんわが師の墓に手合はすは
墓参する人には吠えず寺の犬
改宗をひたすら詫びて墓拝む
見たかろう孫達つれて墓参
神奈川県     パラレル
昇進の報告もする墓参り
神奈川県     矢神 輝昭
遠き地に恩師の墓参一人旅
高野山墓参の方位富士こえて
墓参り祖母の尻押し上り坂
墓参して食事賑やか妣もいて
墓参して見上げる空に雲ひとつ
熊本県     貝田 ひでを
愚者賢者なき兄弟の墓参り
孝行の報告できず墓洗ふ
忙しさ言いつつ揃ひ墓参り
墓参り終へて一族ファミレスへ
入り口に石屋来てをり墓詣
佐賀県     小野 ゆみこ
ひたすらに他力本願墓参り
墓参り太くて温いにわか雨
雑草で墓が見えない墓参り
行き着けぬ長い山道墓参り
蜘蛛の巣と落葉山盛り墓参り
大阪府     高塚 政宜
刻み字を拭いて整ふ墓掃除
墓詣済みて見渡す燧灘
墓参代行頼む仕儀となり
新潟県     近藤 博
いつの日か吾も入るらむ墓参かな
人行き来墓地狭きほど墓参り
酒好きの亡父に供へ墓参り
墓参り誦経小声に掌を合はす
京都府     中村 万年青
遠き日に芙美子の墓に巡り逢ふ
ワイン一ツ信長公の墓に在り
近江なる翁の墓に初参り
盆参り闇に提灯墓園かな
新盆や父母の墓前に未だ行けぬ