俳句庵

6月『夏帽子』全応募作品

(敬称略)

京都府     中村 万年青
夏帽子青草の上コロコロと
夏帽子「あべのハルカス」かぶせたし
幼き日池に落せし夏帽子
夏帽子園児の頭一列に
夏帽子一陣の風受け止めよ
山口県     ―
茂みより動いて居りぬ夏帽子
神奈川県     佐々木 僥祉
陽に灼けた大仏拝す夏帽子
京都府     昴弥
アルバムのそばかす美人麦藁帽
さざ波や仔犬あと追ふ夏帽子
麦藁帽見えて隠れて白砂丘
埼玉県     哲庵
ヒーローのバッジ鈴なり夏帽子
天満橋カンカン帽の似合う伯父
太平洋越えて空飛ぶ夏帽子
夏帽の天蓋めくや車椅子
立志伝あみだにかぶるパナマ帽
東京都     安西 信之
銀ぶらの老舗息衝くカンカン帽
夏帽子山の徽章の重たかり
宿の子の麦藁帽子お出迎へ
二つ目も谷に落とせし夏帽子
芸人は高座が命カンカン帽
埼玉県     守田 修治
にっこりと近づく宗匠夏帽子
夏帽子母の知らざる父の顔
お手本は昭和天皇夏帽子
夏帽子老人海を見ていたり
夏帽子祖父に男の気負いなく
神奈川県     遊頭
なげてうけうけてまたなげ夏帽子
煙草吸う脇に転げし夏帽子
夏帽子若きオードリーヘップバーン
顎紐ののびきるゴムの夏帽子
大阪府     都女
漕ぐほどに 風とらえたる 夏帽子
東京都     蘭丸
風分くる勝鬨橋の夏帽子
草稿に重き夏帽放りけり
東京都     辻 翠
指そろへ膝に置かるる夏帽子
タグゆらし矯めつ眇めつ夏帽子
碓氷峠越へし遠き日パナマ帽
風の佳きカフェに置かるる夏帽子
夏帽子今日のリボンは海の色
神奈川県     素数犀
夏帽子 汗の匂いで むせ返り
いやいやを なだめゴムつけ 夏帽子
夏帽子 選んだ君は 帰り来ぬ
あの時の 夏帽子をさがせ 夢の中
磯遊び グッチョリ濡れた 夏帽子
東京都     森 清
夏帽の日は土に落ち光堂
夏帽子一日干してかぶりそめ
傘立の傘にかけたり夏帽子
愛知県     山歩
林間の課外授業や夏帽子
少し遅れ殿を行く夏帽子
高原の駅の一団夏帽子
夏帽子電子辞書手に颯爽と
夏帽子小夜の中山越えにけり
千葉県     藤鷹圓哉
夏帽やのら猫追いかけやぶのなか
夏帽をかぶりて次の職探し
東京都     相場 恵理子
夏帽の膝に置かれし軽さかな
夏帽子音符みたいに飛んでった
北海道     高橋 まりえ
懐かしき映画の中の夏帽子
虫捕りは兄には負けぬ夏帽子
東京都     比呂志
夏帽子応援席に君光る
夏帽子すぐ脱ぎたがるニキビ面
夏帽子網を持ってる方が兄
夏帽子はがき一枚ポストまで
夏帽子機上の人となる明日
埼玉県     小玉拙郎
夏帽子カバー真白き一年生
禿頭になってスッポリ夏帽子
ポマードの匂いの残る夏帽子
靴を替え上着を替えて夏帽子
夏帽子手にして入る書道展
東京都     石見 光夫
学帽に白布のカバー夏帽子
前方よし車掌指さし夏帽子
夏帽子畳にはふりおーいお茶
夏帽子トンネル入りすっとびぬ
東京都     鈴木 眞由美
探しには誰も戻らぬ夏帽子
寝癖ある白髪にけふも夏帽子
連なりをはみ出してゐる夏帽子
愛知県     石川 順一
ブラックの夏帽子デビューはコーヒーと
カラオケに麦藁帽子が揺れて居る
投げたくて麦藁帽子は投げなくて
夏帽子家の中まで密着し
関心は夏帽子では無くてその・・
兵庫県     新本 繁樹
農具小屋父の遺せし夏帽子
神奈川県     相模太郎
硫気噴く禿山をゆく夏帽子
じつと海見ているだけの夏帽子
かぶりみる破調さまざま夏帽子
ひらひらと舟に乗り込む夏帽子
地下鉄へ転がり込めり夏帽子
岐阜県     ときめき人
夏帽子臨時教師がやつて来る
北海道     飯沼 勇一
古写真和服下駄履き夏帽子
夏帽子ベンチに席を占めてをり
壁掛けに父の形見の夏帽子
夏帽子脱いで遅れた詫びを言ふ
叔父来しを報らす卓の夏帽子
東京都     摩耶
夏帽子三つ並ぶや理髪店
爪の色いつもと変へて夏帽子
夏帽子お客の絶えぬ屋台かな
千葉県     横井 隆和
幾つもの空の蒼知る夏帽子
網棚のカバンに寄り添う夏帽子
不戦の碑へ灼熱の影夏帽子
千葉県     藤原 純夫
笠地蔵色香ただよふ夏帽子
夏帽子畦道スキップうきしずみ
夏帽子地球も欲しかろ温暖化
はにかみて野に立つ仏夏帽子
夏帽子おくれ毛からみ息をのむ
東京都     小世界
咲乱る 花の上から 夏帽子
東京都     呑気
竿かかげ小川へ走る夏帽子
神宮のこぼれ陽浴びて夏帽子
遊歩道夫婦そろいの夏帽子
東京都     岩川 容子
夏帽子斜めにかぶり自我通す
潮の香を連れて乗り来る夏帽子
夏帽子おしゃべり好きな姉妹
豆電車見守っている夏帽子
大阪府     太田 紀子
飛行機のタラップ下りし夏帽子
癌病棟前にさまざま夏帽子
乳母車の青空保育夏帽子
千葉県     隼人
砂浜を駆け行く少女夏帽子
ちちははのセピアの写真夏帽子
兵庫県     北前 恵嗣
故郷の風の浜辺や夏帽子
戯れに被る大きな夏帽子
振り向けば笑顔の妹の夏帽子
埼玉県     大野 美波
夏帽子風がさらって海へゆく
十六の少女が被る夏帽子
夏帽子色の白さが浮立って
子はとても空をよく見る夏帽子
にっこりと田舎の先生夏帽子
栃木県     長浜 良
指先に挟むストロー夏帽子
終点の棚に残りし夏帽子
夏帽子鍔広ければうつくしき
トンネルの車窓皆の夏帽子
神奈川県     川島 欣也
麦帽と首の手拭野良仕事
麦帽子手に持ち替えて風おくり
鍔広の夏帽美女を隠しけり
夏帽をぬぎ光頭を拭いけり
川遊び子の夏帽のすくい網
岡山県     八木五十三
夏帽子井戸端会議を素通りす
やつがれの母となりたる夏帽子
夏帽子ときめきのまま揺れにけり
アルバムの麦稈帽の匂ひかな
初恋や記憶の中の夏帽子
東京都     紫包
太陽へ 触れる夏帽 富士山頂
パナマ帽 防虫剤香が 息吹なる
東京都     紫暑
防虫香 夏帽箱から 解き放つ
夏帽子 愛着感ず 去年(こぞ)の染み
東京都     紫帽
夏帽子 球児の美技を 凝視する 
夏帽子 持ちてやさしき 風はエコ
神奈川県     井手浩堂
夏帽のあご紐しめて吊橋へ
デッキより大きく振られ夏帽子
もう三里ほど歩き来し夏帽子
追ひかけて吾子に被せぬ夏帽子
夏帽に野の花挿せる旅心
兵庫県     山地 美智子
マドンナは老いて慎まし夏帽子
夏帽子被り余生も健やかに
車いすに乗せて被らす夏帽子
毎日の散歩今日から夏帽子
引き売りのいつも大きな夏帽子
山口県     保田 尚子
遺影の目澄み切っている夏帽子
夏帽子はるかに見渡す古戦場
夏帽子古城の翳を踏み歩く
夏帽子汐の匂いの漢佇つ
夏帽子取りて出雲の神に会う
東京都     岩崎 美範
下町のダンディー気取りパナマ帽
はとバスの棚にぽつんと夏帽子
特大の父の形見の夏帽子
夏帽子十頭身のマネキンに
青春の旧軽井沢夏帽子
大阪府     のひろ
夏帽子飛ばして吾子の風を切る
想い出の小箱にひそむ夏帽子
夏帽子ナイスショットの幸を呼ぶ
夏帽子夢はひとすじ風渡し
夏帽子君の情熱ひた隠し
山口県     山縣 敏夫
夏帽子汽車の窓から飛びにけり
夏帽子浜にポツンと残りけり
街騒を悠々泳ぐ夏帽子
バスの中親子が座る夏帽子
遠い日の麦藁帽子今いずこ
大阪府     津田 明美
夏帽子投げて戻るは母の胸
ただいまと駆け寄って来る夏帽子
夏帽子土星半分隠しおり
ブーメランなりて帰らず夏帽子
神奈川県     窪田 みやこ
夏帽子 虫取り網と 青い空
汗だくの 我が子の姿と 夏帽子
福岡県     紙田幻草
夏帽を高くかかげて振り返る
投函にゆくそれだけの夏帽子
波の果て遠く見てゐる夏帽子
静岡県     珠楓
水飲んで園児一列夏帽子
太陽に被せてみたき夏帽子
抗がん剤効きめいずこに夏帽子
兵庫県     岸下 庄二
夏帽子部下に贈られ退職す
相席の場所を抑へる夏帽子
夏帽子人文字動く甲子園
出国のゲートに消える夏帽子
あれこれと試着の楽し夏帽子
千葉県     飯島 史朗
手を握る母の腰際夏帽子
快音に鍔が斜めの夏帽子
夏帽子捕虫網の先に乗せ
東京都     三浦 靖男
いい女いかす夏帽いい散歩
六地蔵揃いの赤き夏帽子
夏帽子あみだに被り喜寿だい
紫外線サングラスかけ夏帽子
セーヌ河畔スーラの画面夏帽子
愛知県     河村 仁誠
髪型に夏帽子の跡残りけり
似合はぬも畑に欠かせぬ夏帽子
あご紐のゴムの伸びたる夏帽子
三重県     平谷 富之
これもまた お洒落の一つ 夏帽子
夏帽子 同じマークで 固まる子
街中を 色もカラフル 夏帽子
三重県     ―
夏帽子 再び味あう 幼き日
子が生まれ ひとつ増えた 夏帽子
被りなと 夏帽子くれた 懐かしさ
夏帽子 共に飛んだ 人いずこ
愛知県     岩田 勇
飛ばしたる夏帽はるか伊勢の海
汗しみる父の遺愛の夏帽子
うずしおを観むと夏帽目深にす
夏帽子犬にも被せ散歩かな
集めるが趣味となりたる夏帽子
大阪府     黄山木
網棚にひとりぼつちの夏帽子
夏帽子太平洋を飛翔する
「ごきげんよう」返す会釈の夏帽子
山梨県     天野 昭正
夏帽子被つて園児砂遊び
夏帽子忘れて炎天引き返す
二の腕の日焼け激しき夏帽子
切株にふるさと眺む夏帽子
沖縄の旅に似合いの夏帽子
長野県     木原 登
海の落日見むと夏帽脱ぎにけり
夏帽もベレーでありし亡き師かな
若き日の幾座越え来し登山帽
黙々と鍬振る麦藁帽子かな
オードリーヘップバーンの夏帽子
富山県     岡野 満
釣り人のしばし動かぬ夏帽子
一陣の風に油断の夏帽子
夏帽の二つ揺れ合う浜辺かな
眩しげに手を翳すや夏帽子
ブラジル     林 とみ代
ツアー客の目印となる夏帽子
おしやれなる母の遺品や夏帽子
サッカー戦勝って飛び上ぐ夏帽子
夏帽子のリボンひらひら風に舞ふ
亡き夫のパリ土産なり夏帽子
兵庫県     岸野 孝彦
夏帽子哀悼込めて胸に脱ぐ
無人なる終着駅や夏帽子
夏帽子ちぎれるように振りし夏
夏帽子開聞岳もかぶりけり
夏帽子うすき乳房をかばいけり
神奈川県     佐藤 博一
夏帽子いつか身に添ひ手離せず
被り癖父そのままの夏帽子
隠せざる齢を隠し夏帽子
かくれんぼすぐ見つけたる夏帽子
少年の被りたがらぬ夏帽子
熊本県     貝田 ひでを
夏帽子母より高き子の背丈
手をつなぎ双子お揃ひ夏帽子
島を出る人夏帽子振る別れ
夏帽をうちわ代わりに一服す
再会に駆けて夏帽押さえつつ
愛知県     柵木 充義
朝市の野菜を運ぶ夏帽子
染めむらを良しとす藍の夏帽子
ルノアールの少女を思ふ夏帽子
くしゃくしゃの被ればしゃんと夏帽子
顎紐は飾りにあらず夏帽子
岐阜県     金子加行
夏帽子飛ばすやダムを渡る風
今日晴れるネット画面や夏帽子
朝にもうごみ出す場所へ夏帽子
雑草を残さず抜くや夏帽子
夏帽子並びて富士を見しフェリー
愛知県     齊藤 清子
再会に弾む歩幅や夏帽子
自転車の弾む母子の夏帽子
広島県     安冨 正則
おいでませ夏帽子ゆく錦帯橋
北海道     江田三峰
吟行の師の殿や夏帽子
鍔広の夏の帽子に赤リボン
虫取りの麦藁帽子見え隠れ
北大のキャンバス過客夏帽子
夏帽子振りりぬ別れのフェリーかな
大阪府     高塚 政宜
笠雲やどう見ても麦藁帽子
夏帽を大仏殿に翳しけり
学び舎に眩しき記憶夏帽子
埼玉県     井上 寿郎
夏帽子ゆっくり渡る太鼓橋
木屋町を風ひきつれて夏帽子
あぜ道を夏帽の子の声の行く
加賀城下東茶屋街夏帽子
饒舌な老船頭の夏帽子
千葉県     ―
江の島やお気に入りの夏帽子
夏帽子好きな先輩探しけり
高原の木の枝に夏帽子
夏帽子靴に合わせて買ひにけり
小さき児が鏡に映す夏帽子
埼玉県     岸 保宏
石けりの石数へたる夏帽子
夏帽子遍路地なりの列ができ
すれ違う傾げし女の夏帽子
佐賀県     平吉 俊郁
中庭に咲きたる妻の夏帽子
新潟県     近藤 博
八十路すらちよとお洒落に夏帽子
夏帽子被り直して外出かな
つば広く握手妨ぐ夏帽子
夏帽子父の被るる遺影かな
日除けならずスタイルよしと夏帽子
埼玉県     佐藤 茂
今もつてあれは初恋夏帽子
唇の妻に似てをり夏帽子