俳句庵

5月『薄暑』全応募作品

(敬称略)

京都府     中村 万年青
明治帝薄暑の杜霊鎮む
燕の子薄暑の軒飛び返り
鯉幟薄暑の空無限大
初瀬川薄暑の庭紅に
若葉萌え薄暑まとひ夏は来ぬ
神奈川県     溝口 努
だんだん坂寝ころがる猫夕薄暑
古井戸にアヒルの玩具薄暑かな
砂に書く恋文消ゆる薄暑かな
西の空ひこうき雲の薄暑かな
台車引く商人の声街薄暑
北海道     澤野まひる
観劇の後の銀座の薄暑かな
三重県     平谷 富之
服装も足も軽いや薄暑かな
北海道     飯沼 勇一
訪問着陰を選んで往く薄暑
観覧車薄暑を抜けて上空へ
牛の腹波打っている薄暑かな
相撲取り陰つたいゆく薄暑かな
加齢臭気になる父に薄暑来る
千葉県     聴蓉
ペディキュアの色を濃くする薄暑かな
チケットを確認して行く街薄暑
治験受け結果待たるる薄暑かな
ポストにも薄暑の足音届きをり
薄暑にも変わらぬ祖母の朝支度
東京都     蘭丸
勝島に馬運車連るる夕薄暑
札挟む売り子の出番夕薄暑
碁会所に杖も揃ひて薄暑かな
千葉県     藤鷹圓哉
スクランブル人のぶつかる薄暑かな
木漏れ日とアフターヌーンティの薄暑かな
北海道     佐藤十佐
薄暑かな満艦飾の新造船
陸揚げの漁夫の濁声薄暑なる
牛飼ひの声のくぐもる夕薄暑
千葉県     藤原 純夫
乳白の雲から陽射す薄暑かな
知らぬ街迷い訪ねて薄暑かな
気がきかぬ地下鉄むせる薄暑かな
汗したる過ぎたる世辞に薄暑酷
春遅き山にも来たり薄暑かな
埼玉県     守田 修治
大統領水玉ネクタイ薄暑かな
限定の豆腐売り切れ薄暑かな
根津谷中昭和長屋の薄暑かな
富士の水旬の味する薄暑かな
東京都     石見 みつを
ライオン像前の約束薄暑かな
隣家よりカレーの匂ひ薄暑かな
笑点のイントロ聞こゆ薄暑かな
愛知県     山歩
自販機のペットボトルや街薄暑
菩提寺の磴千段や街薄暑
軽暖や磴千段の奥ノ院
街薄暑歩行者のみの大道
門前の綿菓子売りや街薄暑
岐阜県     ときめき人
熱唱の路上ライブや街薄暑
埼玉県     哲庵
人力車燦めき走る古都薄暑
薄暑よし夜学の窓に笑い声
紙芝居子の群がりて路地薄暑
耶蘇寺の十字架光る薄暑かな
ジョギングの腿の眩しき湖薄暑
神奈川県     川島 欣也
木漏れ日の揺らぎ眩しき薄暑かな
薄暑はや散歩の犬の舌長し
はや薄暑ネクタイ少し緩めけり
あれこれと髪型迷う薄暑かな
薄暑はや生醤油かけるざる豆腐
兵庫県     北前 恵嗣
黄昏の沖輝ける薄暑かな
花抱え薄暑の街にひとを待つ
夕薄暑「青い山脈」流れ来る
東京都     岩川 容子
江ノ電の海側に居る薄暑かな
夕薄暑犬と来ているカフェテラス
ビルひとつ鏡となりぬ薄暑光
糊きかせ白きシーツを干す薄暑
栃木県     長浜 良
川舟に自転車乗せる薄暑かな
薄暑かな樹下に二つのランドセル
参道に豆腐売らるる薄暑かな
神奈川県     遊頭
托鉢僧会釈を軽く薄暑かな
瀬を上る魚影濃さ増す薄暑かな
賑わいのランチ窓際湖薄暑
長廊下雑巾がけや山薄暑
愛知県     高橋 信治
薄暑の川の速さで来る季節
薄暑で木陰をさがす正午かな
東京都     鈴木 眞由美
ページングボードの多き薄暑かな
立飲みに薄暑の雨のいとをしき
幕間に上着剥ぎたる薄暑かな
神奈川県     相模 太郎
干潟まだ夕日の遊ぶ薄暑かな
降りさうで降らぬひと日の薄暑かな
ここまでと次待つ渡し薄暑かな
積読の減らぬ机辺の薄暑かな
コートでの大会準備薄暑光
千葉県     隼人
海はるかきらめてゐる薄暑かな
炭酸水しゅぱっ弾ける薄暑かな
神奈川県     井手浩堂
いつまでも開かぬ踏切薄暑かな
夕薄暑重油のにほふ船溜り
立話別れてよりの薄暑かな
東京都     森 清
一つ脱ぎ白ぞろぞろと薄暑かな
武蔵野の旅に単衣の薄暑かな
薄暑なりマストに青き風のふく
浮草の少しうごくや薄暑光
朝河岸の魚の匂ひや薄暑なり
埼玉県     岸 保宏
山門で腰伸ばしたる薄暑かな
将棋盤塵を除けたる薄暑かな
薄暑かな握るスマホの汗にじむ
大阪府     藤田 雄一
竿だせば水面に輪だつ夕薄暑
夕薄暑団地に灯り母の声
天眺めただただ願う薄暑かな
貨物ゆく土手を登れば草薄暑
蟻に問いお前も知るか庭薄暑
東京都     三浦 靖男
まぶしきは広き胸元薄暑かな
ひた走る戦前回帰薄暑かな
夜目遠目秘密保護法薄暑かな
薄暑来五月一日喜寿だい
あの窓も高齢世帯薄暑かな
愛知県     石川 順一
図書館にせっせと通ふ薄暑かな
図書館の帰りコンビニ薄暑かな
読み聞かせ契約成立薄暑かな
市役所のロビーで歌ふ薄暑かな
オーケストラバックに歌ふ薄暑かな
東京都     紫雲
手水舎の 柄杓に薄暑 絡まりて 
サンダルの 素足に慣れし 薄暑かな
東京都     紫晴
陽光の 眩しき中へ 薄暑来る
香水の ひと振り多く 薄暑かな
東京都     紫風
薄暑来し 網戸を洗う 汗の父
大ファール 外野席でも 薄暑かな
埼玉県     堀口 茂
参道を 見上げ汗ばむ 薄暑かな
薄暑に 舌鼓打つ 田舎そば
大阪府     津田 明美
斜め読むページの多き薄暑かな
再会を約す十字路薄暑光
まだ遠き道に追い来る薄暑かな
たおやかに風生まれたる薄暑かな
ハモニカの音のつながる薄暑かな
兵庫県     山地 美智子
街薄暑鳴きて不気味な群鴉
抱かれたくて両手伸ばす子夕薄暑
紙飛行機ゆらゆらと来る庭薄暑
夕薄暑子の宿題にヒントやる
煙草買ふのみのコンビニ夕薄暑
埼玉県     佐藤 茂
昭和から母の呼ぶこゑ夕薄暑
対局はやがて無言に薄暑光
大阪府     都女
風薫る 薄暑の木漏れ日 青もみじ
風そよぐ 薄暑の木漏れ日 青もみじ
大阪府     瀬戸 順治
路地裏に床几を出して薄暑かな
兵庫県     村山 祥江
そよ風に汗ひんやりと薄暑かな
山口県     山縣 敏夫
薄暑光昼の校庭照らしおり
愛犬に家路を急かす夕薄暑
里山の棚田の嶺に薄暑光
登下校子等の背中に薄暑光
里の駅一番線に薄暑光
神奈川県     佐藤 博一
制服の馴染んで来る薄暑かな
佐賀県     平吉 俊郁
夕薄暑庭の草木が我を待つ
兵庫県     岸下 庄二
入る上がる下がる京都の町薄暑
日時計の影黒々と街薄暑
街薄暑日陰に並ぶ弁当屋
神奈川県     守安 雄介
お臍さへ風に逢いたき薄暑かな
空色のワイシャツ絡ぐ薄暑かな
サンダルを持ちて薄暑の渚往く
試着する水着売り場の薄暑かな
マネキンの布切れ二枚薄暑かな
大阪府     高塚 政宜
草引くも旅心羽ばたく薄暑かな
地図帳に書き散らしけり夕薄暑
山川のあはひに覚ゆる薄暑かな
薄暑なる空に朱塗りの大鳥居
おみくじの華やぐ吉に薄暑かな
千葉県     伊藤 和幸
診察を終えて薄暑に包まるる
異人坂に昔の空気夕薄暑
岡山県     八木五十三
振り向きもせぬ猫跨ぐ薄暑かな
言訳を飲み干してゐる夕薄暑
痩せ我慢また始まりて薄暑なる
東京都     まつおつま
我が家への丸丸坂や薄暑かな
孫を背に娘の見舞いや薄暑なり
隅田川一人散歩の薄暑なり
テノ-ルに酔いたる帰路や薄暑なり
背を抜きし孫のにんまり薄暑かな
兵庫県     新本 繁樹
腕捲り一つ捲りて薄暑かな
富山県     岡野 満
欠伸して信号を待つ薄暑かな
だんだんと街に白さの薄暑かな
兵庫県     新本 繁樹
ネクタイを少し緩めて薄暑かな
川舟の繋がれている夕薄暑
兵庫県     村山 祥江
万緑の輝き眩し薄暑かな
東京都     岩崎 美範
戌の日の水天宮の薄暑かな
あぶな絵をそつと取出す薄暑かな
浅草の鳩に豆やる薄暑かな
海老蔵の大見得を切る薄暑かな
かつたるき恋文を読む薄暑かな
兵庫県     岸野 孝彦
九九唱え母子は坂の薄暑かな
初恋の娘に似たる薄暑かな
薄暑来て尾瀬の黄昏想う風
薄暑光白きセーラーより白く
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芭蕉庵万年橋の薄暑かな
愛知県     柵木 充義
夕薄暑最終便の屋形船
薄暑かな臨海道の一直線
新宿の歩道往き交ふ薄暑かな
街薄暑狭庭は風の通り道
鹿の間に鹿の老いゆく奈良薄暑
神奈川県     佐藤 博一
咄家の羽織を脱ぎし薄暑かな
長野県     木原 登
声あげて髪なびかせて薄暑の子
暮るるまで沖見てゐたる薄暑かな
アルプスの全山目覚む薄暑光
ナターシャの産毛に宿る薄暑かな
からくり時計の駅に汝を待つ夕薄暑
静岡県     今井 克己
軍手とり薄暑の中の土いじり
真っ新な作業着うすき薄暑かな
均したる畝に薄暑のにほいかな
埼玉県     井上 寿郎
悪ガキの昔が集ふ夕薄暑
大腸にポリープひとつ薄暑かな
愛犬と私の寿命夕薄暑
寄席を出て蕎麦屋を探す薄暑かな
大声の行き交ふなんば街薄暑
山梨県     天野 昭正
自販機の朝から売れる薄暑かな
孫生まれ仕事捗る薄暑かな
盆栽の位置を変えたる薄暑かな
カーテンの色を変えたる薄暑かな
釣人の帰り支度や夕薄暑
神奈川県     佐藤 博一
水玉のネクタイ締める薄暑かな
関取の髷の匂える薄暑かな
千葉県     永井 隆
新緑に風音わたる薄暑かな
神奈川県     佐藤 博一
水道の蛇口上向く薄暑かな
大阪府     のひろ
薄暑光また一日を駆け抜ける
二の腕に心地よき風薄暑かな
薄暑光胸のざわめき手に入れる
帽子屋の優しき薄暑戯れる
雨降りて薄暑一幕近付きて
岐阜県     金子 加行
病院に母を預けし夕薄暑
旅行きのファッションを選る薄暑かな
窓近い書類変色せし薄暑
新ビルの風を遮る薄暑かな
硝子鉄冷たき街の薄暑かな
神奈川県     パラレル
遅刻告ぐメール読んでより薄暑かな
熊本県     貝田 ひでを
乾拭きの廊下が光る薄暑かな
薄暑光ソーラーパネル南向き
山口県     保田 尚子
スマホ見る人の居並ぶ薄暑かな
知恵の輪のなかなか解けぬ薄暑かな
猫のヒゲ伸びきっている薄暑かな
下校児の駆けだしたる夕薄暑
船笛の長き尾を引く薄暑かな
新潟県     近藤 博
風やはく額を撫づるや夕薄暑
あすもまた程よき気温か夕薄暑
吹く風に肌のほっとす薄暑かな
程のよき風に救はる薄暑かな
はやばやと半袖かなふ昼薄暑
熊本県     貝田 ひでを
薄暑来て木陰に集ふベビーカー
街薄暑乙女ら集ふカフェテラス
薄暑光ビニールハウスの屋根眩し
広島県     安冨 正則
廃線に電車復活薄暑光
北海道     江田 三峰
ぶらんこや頬を撫ぜ行く風薄暑
知床の五湖の薄暑や心地よし
知事公館児らの遊戯や庭薄暑
コンサート薄暑札幌時計台
集ひたる薄暑札幌大通