俳句庵

3月『大試験』全応募作品

(敬称略)

大試験終へて問はるる出来不出来
今までの力出し切れ大試験
終わったと己をほめる大試験
大試験終えてゆっくりトイレかな
人生の試練の一つ大試験
大試験父母の背を超え肚据える
大試験首を洗って結果待つ
大試験合格は神のみぞ知る
答案は白紙に近し大試験
大試験矜恃を持ちて祖父を訪う
大試験次の機会に託すのみ
大試験自己採点は合格点
机には傘の落書き大試験
大試験弾みし声のさくらさく
をちこちに鼻すする音大試験
大試験車で送る程の距離
三歳から親も緊張大試験
人生の補助輪外す大試験
お賽銭多めに祈願大試験
大試験明治昭和は遠くなり
明日までは家族ひっそり大試験
窓灯り昔は受験いま俳句
及第まであと1点くれと頼み込み
試験落ち一年間は重苦し
大試験嗚呼マドンナと隣り合う
受験期の即席ラーメン嗚呼昭和
繰り返し見ても落第掲示板
受験子にピリピリしてる家族たち
年上の後輩ならむ大試験
大試験末は博士か大臣か
友待てる学食まばら大試験
それぞれに広き空あり大試験
及第を伝へ食らふやナポリタン
大試験終へて頭をまるめけり
大試験来期も世話になるノート
学業のゴール目指して大試験
赤門の先の青空大試験
メタセコイヤ凛と空指す大試験
一つ伸びしてゆるむ大試験
母ひとり子ひとりなりし大試験
女には過ぎたるものか大試験
頭を叩き脳味噌絞る大試験
手を止めて眼鏡拭きたり大試験
大試験前夜の夢に閻魔王
今日も晴れ明日も晴れよ大試験
息ほつと吐いて席立つ大試験
のど飴を噛み砕きたり大試験
大試験来し方遠くなりにけり
大試験兄と机を並べけり
大試験今では遠い「サクラサク」
茶柱の立つあしたなり大試験
大試験いつも滑った夢ばかり
信号の変わるを待つや大試験
大試験消しゴムの滓山となり
新品の鉛筆揃へ大試験
ぶつかつて跳ね飛ばされて大試験
欠席の机あまたや大試験
大試験頭の中が真つ白に
大試験待つ間いくたび厠へと
面接のしどろもどろや大試験
及第に泣ゐて抱き着く寮母かな
大試験結果ともあれかくもあれ
短冊に念を込めたり大試験
大試験終へておつかれさまの声
大試験バイトの数を減らしつつ
大試験終えて安堵の背伸びかな
又しても選に漏れたり大試験
深呼吸一つしていざ大試験
下宿屋の主気遣ふ大試験
就職に試練の面接大試験
通信や妻の気遣ふ大試験
日本中いっせいに始まる大試験
三四郎池に石投ぐ落第子
向かひ合ふ見合ゐの席や大試験
大試験一か八かのヤマ当たる
気配りは 母のおにぎり 大試験
受験子のゲン担ぎたるオクトパス
大試験 ナース夢見る 乙女かな
父と子に合格通知届く朝
大試験 竹馬の友も ライバルに
胴上げの祝福受ける合格子
誕生日重なり勇む大試験
就活のまっただなかの大試験
大試験双子姉妹の席離れ
大試験 夢また夢の 登頂旗
大試験終えてゲームの指軽し
難問より 風邪が難問 大試験
大試験母だけが押す太鼓判
気配りの 母の夜食も 大試験
哲学は三人だけの大試験
風邪引かず 家族総出の 大試験
人よりも二年遅れの大試験
本名を知らぬ句友の大試験
着くたびに駅を確かむ受験生
失恋というも卒業試験なり
就活の始まってゐる大試験
鞄にはホツトハチミツ大試験
受験票机の隅に大試験
病室で学年試験を受けており
番号と名前まず書く大試験
脚そろえ進級試験の逆上がり
大試験巣立ちの前の試練かな
落第を告げし手紙は速達で
マドンナと隣り合わせの大試験
受験子にコーヒー断ちし事言はず
人生のこれが最後の大試験
大試験終えたる後の夕日かな
どの子らもみんな気張れや大試験
大試験鉛筆五本削りおく
大試験終えし子映すテレビかな
天上の母を想ふや大試験
乗り合わす電車大方受験生
教室の音なき音や大試験
ともかくも終えたる子らの大試験
大試験終へて車中の人となり
笑む顔を見せてくれしよ大試験
雪嶺の間近く見へて大試験
どどどどと駅を左に受験生
夜の汽車の北斗へ向かひ大試験
大試験結果はとまれほっとせり
少年の眼の澄みて大試験
大試験これもて最後社会人
鉢巻を譲り渡され大試験
左見右見周り気に掛け大試験
大試験富士に向かひて絶叫す
そてぞれの進路定める大試験
大試験三姉妹のそれぞれに
大試験知的な空の晴れ渡る
大試験君への天の試練なり
親よりも伯母に報告大試験
入門に立ちはだかるや大試験
大試験鞄に挫折しまい込む
喜寿ひとり参加しをるや大試験
大試験最後まで見る英単語
大試験天候往きつ戻りつす
さらさらと時とは砂か大試験
大試験 口耳の学(こうじのがく)を 省みる
大試験母の弁当固く冷え
徹夜して 東雲見たり 大試験
大試験赤門の上の蒼い空
心拍数 天井知らず 大試験
数学の後の沈黙大試験
冴ゆる朝 一枚厚着し 大試験
お守りやかばんの隅の大試験
大吉に 背中押されて 大試験
大試験ラジオで気づく午前二時
大試験 あとの半分 神頼み
大試験懐中時計父形見
一夜漬け 学成り難し 大試験
大試験小樽の地獄坂上る
大寝坊 呼吸激しき 大試験
大試験終へて鼻唄帰宅かな
山を張り 神に縋って 大試験
大試験終り海外旅行かな
大試験みな秀才に見えてきし
大試験想定内と言ふ子かな
大試験変わらぬものに赤き門
大試験[サクラサク]電文(ふみ)懐かしく
大試験残る一手は神頼み
今もなほ夢にまで見る大試験
何回も追試許され大試験
大試験十八年の白さかな
結婚の決まりし後の大試験
此の紙が俺を試すや大試験
先ず衣服整えてゆく大試験
大試験黒鉛滑る隣席
学業より世間に慣れて大試験
大試験昔の親は野良仕事
大試験の結果は知らずアルバイト
大試験ロトシックスに似たりけり
落第子電話一本掛けてこず
幾度も受けてもやはり大試験
合格の絵馬の重み大試験
イスラムの白いスカーフ大試験
大試験親に甘えて生きてきて
早起きの母の見送る大試験
大試験崖の上から落ちる夢
大試験首尾を見る間のうつろなる
大試験キレイな花を見るゆとり
大試験音一つなき大教室
大試験母の朝食食べにけり
弁当の母の温もり大試験
大試験周りの人はデキそうだ
大試験まな板の鯉の気持ちや
転んでも死にはしないよ大試験
張りつめる重い空気や大試験
大試験ごくりごくりと喉仏
地図幾度確かむ子らの大試験
大試験隣国は科挙未来あり
大試験迎へる首の守り札
大試験床屋気遣う髪容
大試験シャワーで洗ふ首臨む
吊革に力も入る大試験
悲壮さの顔でなき子の大試験
雲ひとつなき今朝の空大試験
試験日を花マル記す子の決意
円空の仏見守る大試験
大試験終へたる笑みの子を迎ふ
持ち歩く英語辞典や大試験
大試験控えて少女無口なる
気晴らしはディズニーランド大試験
学舎の暮色に染まる大試験
苦学生はすでに死語なり大試験
受験の子帰路カラ缶を蹴り飛ばす
筆圧の強き文字にて大試験
親友もけふはライバル大試験
鉛筆を削り揃えし大試験
大試験左足より家を出る
大試験解らぬ時は右に○
駅の名のメモポケットに受験の子
雪降って転ばぬように大試験
大試験英語のスペル諳んじて
大試験終えて安堵の笑顔かな