俳句庵

4月『麗か』全応募作品

(敬称略)

鈍足の二塁打に沸くうららかさ
いすみ線カラーリングの麗かさ
生菓子に陽の射しかかる麗らかさ
麗かや麒麟見る子の肩車
麗かに香煙のぼる浅草寺
うららかや紙風船が横切れり
海うらら波の奏でる九十九里
うららかに和菓子の中のうすみどり
じゃんけんのグー・チョキ・パー春うらら
麗らかや引っ越し荷物運ばるる
うららかやスカイツリーに流れ雲
麗らかに一人暮らしの始まりぬ
春うららマネキンの目がぱっちりと
麗らかにパーマの毛先まるまりぬ
アンパンのへそにけしのみ春うらら
心配に次ぐ心配も春うらら
麗かや除染作業を横に見て
麗かにふるさとの山静もれる
麗らかや南米婦人部大集合
麗かや道草食うて一年生
麗らかや国越え移民大会と
麗かや隣村まで用事あり
ボリビアで婦人大会麗らかに
麗かや昨日の言葉振り返る
養国は違へど移民麗らかに
麗かに市民講座の始まりぬ
片言のスペイン語通じ麗らかに
麗かや道を横切る猿の群れ
麗かな光集めて子の昼寝
麗かの向こうにありし光かな
手をにぎり着せる産着やうららかに
麗かや三角形に手を繋ぐ
麗かや高みは翼拡げゐて
麗かにクラス全員手が上がる
雲一つ機影も一つうららかに
麗かや大道芸の剣舞
麗かや異国力士の大銀杏
麗かや鳩笛響く浅草寺
うららかや古書店巡り解禁日
麗かや百歳医師の回診日
うららかや五分遅れの大時計
麗かや野草天ぷら揚げる人
うららかや男が洗うパジャマかな
麗かや道譲り合ふ乳母車
うららかな雲を浮かべて伊豆の海
麗かや皇居ジョギング三周目
試写室を出ればうららの築地かな
麗らかや戻れば今や好々爺
うららかや仕立て下ろしのシャツは青
麗らかや鍵も掛けずに済む暮らし
麗かや象舎の前を動かぬ子
麗らかや怒る時にも笑みし顔
麗かや幼なじみの角隠し
転んでも泣かぬ幼子うららけし
日うらうら母の背にもう三センチ
麗日の花婿乗せて人力車
麗日やふたりでちひろ美術館
出来るまで何度もやる子うららけし
めでたしと目覚むる夢のうららなり
麗かや呼べば寄り来る渡し舟
うららかやフェリー追ひける群鴎
朝の市杖の先より麗かに
うららかや畔の白鷺毛づくろひ
麗かや雀の遊ぶ石舞台
うららかや後幾年のこの命
麗かや訛り優しき城下町
麗かやデートの遅刻五分なら
改装の隣家の出入り庭麗ら
麗かや君との時間いつまでも
麗かや愛犬といふブルドッグ
手の触れて初恋一途うららけし
麗かや釘で尖りし釘袋
麗かや大きなにぎりめしひとつ
麗かや他人任せの車椅子
うららかな緑の津波や阿蘇山河
麗らかや琴を爪弾く宇宙船
のり弁当提げて三春の里うらら
麗らかに欠伸演じるオットセイ
うらら日は舌も忙しや牧の牛
麗らかにうつらうつらの優先席
うららかな海には見えれど煙る底
麗らかや犬に生まれず地域猫
うららかな吉野を杖の九十九折り
麗人がお題の句会春うらら
土手に交う人や日増しに声うらら
麗らかや我が血を待ちし命かな
麗かや座布団二まい縁がわに
麗らかに行き合う人も遍路かな
河馬浮かぶ麗かな目で客を見る
麗かに思い思いの六地蔵
麗かやゆっくり進む車イス
麗かにベニスの舟唄水に溶け
麗かやライオン目蓋閉じしまま
観覧車ゴンドラごとの麗かさ
麗かやオカリナの音風に乗せ
麗らかやさざれ川底雑魚の見ゆ
麗かや猫特大の伸びをする
麗らけし漫ろ歩きの歩を早やむ
うららかや単線海に傾きぬ
麗らかや児らのはしやぐ幼稚園
海うらら手に持ち歩くスニーカー
麗かや妻の床屋に身を委ね
うららかや軽きことばの生まれ出る
麗らかや なを縁側の 心地よさ
うららかやうすもも色に空開く
参観日 麗らかなれど 気が浮かぬ
麗かや昼の部はなき芝居小屋
麗らかに インコがしゃべり 揺れし籠
植替へて仕舞ふスコップうららけし
麗らかに 犬にも一緒に あくびされ
麗かにそれでも解けぬミステリー
麗かや母を追い越す三輪車
薪くべを止めて待ちをるうららかな
うららかといへば劉生麗子像
麗かや影を踏み合ふ母子かな
午前より午後をうららに鳩時計
麗かや話し相手の石仏
うららかや赤松林に子らの声
麗かにゴールネットの揺れにけり
うららかに古稀をうべなふ古稀同士
鬣(たてがみ)も揺れて麗かなる馬上
うららかや雲にもの言ふ人とゐて
少年は振り返らない道うらら
うららかに堰越す水の光かな
地震知る光る小石や浜うらら
宝籤売場に僧やうららけし
日本語の美しき少女や駅うらら
麗かやなべて笑顔の石仏
麗かやあの世にちょっと声をかけ
うららかに色彩競ふ熱気球
麗らかやピアノ誰が弾くアンダンテ
茶を淹れて庭仕一服うららけし
うららかや便箋選ぶ鳩居堂
しがみつく孫の指こそ麗らけし
うららけし唱歌の刻の長寿園
ふるさとの手枕くぐる風うらら
うららけし小さき足見ゆ乳母車
車椅子のけぞり浮けば空うらら
うららかや車夫ゆっくりと曳きて古都
うららかに二十歩こなす介護妻
光陰やそれを追わずに春うらら
皺に滲むミルク風呂かな湯気うらら
麗らかや宇宙の底に春の人
山頂の古希少年や海うらら
麗らかに自分を生きる息をする
麗らかやいらかの波の天守閣
縁側で春うららかなひよこ五羽
いくさ無き空麗らかな日本晴れ
うららかなさくら咲くかな待ちどおし
麗かを味方にビルのガラス拭き
春近くうららかなれば何もせず
麗かの距離まで伸びる万歩計
縁側でお茶とおしんこ春うらら
うららかに引率される園児達
うららかな春の陽を背にわらび採り
植木職庭の麗か使い切る
春うらら九十四歳の手習いや
麗かに隅田に高い塔一つ
春うらら広野とびかうタンチョウの群れ
定年の昼のうららの怠け者
アジ干すや日差し追いつつ春うらら
麗かに空に鉄組み狂ひなし
春うらら日差しを避けて日焼け止め
麗かや円空仏の笑み並ぶ
うらうらと東京タワーも眠たげに
麗かや祭り提灯取りいだす
娘がやっと旅から帰って春うらら
麗かやかつて栄華の峠道
ドバイから娘帰りて春うらら
無人駅列車うららに人拾う
房総や真砂女訪ねて麗かなり
麗日の花嫁衣裳人力車
隅田川ほんに麗か廉太郎
矢絣の大正ロマン麗らかや