俳句庵

7月『噴水』全応募作品

(敬称略)

噴水や二本歯見せて笑う吾子
漆黒の海借景に噴水ショー
噴水を伸ばして掴むもみじの手
子等の髪からすの濡れ羽大噴水
噴水や神の慈愛が落ちてくる
脇役に噴水選ぶ青き恋
噴水に心の乾き癒されリ
噴水のある夜景かな都会らし
噴水やしばしの酷暑置きにけり
噴水のシャンデリアかな空の青
噴水や気を取り直しオフィス街
噴水の空に出会いしベルサイユ
噴水の音に孤独をのみこまれ
噴水の形となりて水美(は)しき
名水の噴くも乾きのうるおわず
押し上げて噴水空を押し上げて
木漏れ日の映えて噴水色をなす
雨の日の噴水に人待ちにけり
噴水の音戯れて穂を曲げる
噴水にそつと手を出す子どもかな
噴水の空濡らさんとする高さ
噴水の空を濡らしてをりにけり
孫が聞く小便小僧は噴水か
噴水を玩具としたる子どもかな
山頭火噴水に来て一休み
噴水の勢い借りて告白す
後ろ向きコインを投げる大噴水
噴水を背に座りたる女学生
噴水に介護の人の車椅子
噴水の霧の向こうに虹の宴
噴水の飛沫に掌(て)出づ昼下がり
涌き踊る噴水の前手をつなぎ
噴水のベンチにしぶく風の来て
噴水やメロディ乗せて水の舞
噴水のびしゃびしゃ音す崩る時
山の頂上の噴水目指しいざ行かむ
噴水の止むや激しく池敲く
トレビの泉イタリアの旅夢の中
噴水のはたと止みけり切らるごと
噴水の揚がりて千の風が来る
噴水の鯨思はす噴けるさま
噴水や動けなくなる三輪車
イスラムの人噴水にはしやぎけり
噴水の見えるところで横になる
噴水の止まりベンチの人動く
噴水に胸の辺りを撃たれけり
二人して背の噴水へコイン投ぐ
噴水に濡れても蟻の働けり
約束の噴水に待つ初デート
噴水に攫われたりし心かな
噴水や突如の別れ話かな
噴水で待つ約束も風強し
噴水の高さ極めて崩れ落つ
噴水の向こうの海の碧さかな
噴水を眺めつつまた生返事
噴水のそばでお弁当食べましょう
七色のうるむ噴水寄る二人
噴水の上がる勢い手をつなぎ
噴水や凛たりオバマ大統領
噴き続く平和の証し永久の水
高々と噴水連ね就任式
噴水や悲喜を束ねて天に衝く
あこがれし今朝の日比谷の大噴水
噴水やただ頂きの丸きこと
噴水や亡き幼子の見え隠れ
噴水やオゾンの風の木陰まで
噴水の迎ふるゴジラホームラン
人を待つみな噴水に背をむけて
噴水の磨きし空の青さかな
暮いろに染まる噴水水を脱ぐ
噴水の疲れを知らぬ高さかな
息ひそめ噴水一気に天を衝く
噴水の風に躓き落ちにけり
噴水の高さ越えよと肩ぐるま
噴水に超過勤務の無かりけり
噴水に紙ヒコーキの不時着す
噴水の時折力抜きにけり
噴水やキリンは足を折って寝る
噴水の人待ち顔に囲まれし
白雲に虹色散らす大噴水
噴水は 喜怒哀楽を 宙舞わす
閉園の噴水鎮まる跪きて
噴水も ライトアップの 夜鍋かな
噴水やパティオを囲む大円柱
噴水や あの戦友へ 手ですくう
乱舞する天使の噴水ロココ調
噴水や 頂点極め 雫なる
午後二時の大東京の大噴水
噴水や 遊びし子ども 迎え無し
風の噴水また決断が揺れはじむ
噴水や 鬱屈なだめ 家路着く
噴水の飛沫となりて光りけり
噴水のしぶきは木々の風の色
噴水の北側濡るる地の火照り
噴水の四方はビルの昼餉時
噴水の玉の光となりて落つ
物売の噴水にきて商はず
噴水に喜怒哀楽あるらしく
噴水や子らは笑顔の濡れねずみ
噴水をざぶざぶ洗う趨り雨
ふきみずや枝の高さを越えにけり
噴水に疲労の色あり終電車
ベンチまでくる噴水の飛沫かな
噴水や口に入れたる薄荷菓子
噴水や園児に自由時間あり
噴水や向かいは立食い田舎蕎麦
噴水の音の止まりて落ち着かず
噴水や菩提樹うたうコーラス部
噴水の空に届かず落ちにけり
噴水の三原色の光の輪
待ち人は来ず噴水の音続く
噴水の向こうより来る想い人
噴水の秀の上にある青い空
せめぎ合ふ篠突く雨と噴水と
躍る輪の背なの噴水たちあがる
噴水に裾を濡らして待ちぼうけ
黙祷に噴水しばし休みをり
噴水の飛天舞ひ立つ朝ぼらけ
噴水の背丈を決める今日の風
噴水のしぶき厭はず乳母車
噴水にふうはりと透く阿波踊り
噴水の高さや吾を鼓舞しをり
鶴型の噴水口や天を向く
噴水やバージンロード踏みしめて
噴水に姿を変える仕掛けあり
噴水や友の手術は今日のはず
ヌー銅や噴水前に立たされて
雨激し噴水雨と恋に陥ち
噴水の清める空や七光
噴水や朝の静かなるなぱあく
噴水の鶴口凍てて銀の羽
噴水や君左手の冷たくて
水幕の揺れて動かぬ虹の位置
噴水やダンスの好きなあの少女
噴水の高さに見たる世相かな
ディレクター居て噴水のこの演技
噴水や乳母日傘の頃ありて
歴史ある噴水市民休らいぬ
噴水の上がりたる間に一句詠む
噴水の穂に穂が継ぎて捨て身なる
噴水に明日の一歩を決断す
間欠泉のごとくに噴水時間置き
水しぶき 空に向かった 子の笑顔
公園の芯の噴水華麗なる
噴水を 眺めていると 時が去る
噴水の円噴寺の浄土池
噴水の影は形を変えにけり
青空に噴水の穂の華やかさ
噴水の切り返したる刹那かな
噴水の穂先に坐る孫悟空
バス発ちてただ噴水の残りたり
次々と妖精生まる噴水かな
噴水へビニール袋転がり来
噴水の日比谷公園に鴉鳴く
噴水に足を浸けたる子守かな
噴水に金のカリオン加われり
噴水に 真水の光 花の渦
逆光を浴び噴水に神宿る
手をかざす 噴水の水 落ちてこず
噴水や何時から記憶喪失症
噴水に さざなみ走る 池の面
噴水の水ごくごくと大鴉
地下街の噴水前で待ち合はす
噴水の気だるい音に眠気さし
噴水の踊りて空が押し戻す
風下に涼しさ配る大噴水
地下街の噴水ライトの虹色に
噴水の傘に入ってはしゃぐ子ら
噴水にまつすぐ沈む没り日かな
噴水の街のけだるさ覚ましけり
噴水の前のベンチの昼餉かな
公園の噴水ひねもす踊りゐて
ワンオンに噴水上がるゴルフ場
噴水や日比谷公園ジャズライブ
噴水の脇に生まれた恋い淡し
逢ふて来し事にはふれずつくり雨