俳句庵

4月『粽(ちまき)』全応募作品

(敬称略)

母の眸に適ひし嫂粽結ふ
粽食すその単純さ愛しみて
粽結ふ手付ふるさと談義かな
シンプルな暮しが好きと粽剥く
仏壇に誰か来たらし笹粽
幼子の粽ひもとくもどかしさ
他愛なきこと言ひあひて粽結ふ
ちまき食う傍を射るつばめ宿帰り
笹ちまき双子はみだす乳母車
ふるさとを思いてちまき食う母の味
ぽっくりと逝く話など粽解く
飾りたる児の前で笹粽
母子へとバトンを繋ぐ粽寿司
端午節ちまき喰らえる口に寄るしわ
笹粽 ふかす湯気あび 唾たまる
四川の児亡母の粽は抱くばかり
熱々の粽の紐がもどかしい
不揃いの粽に残る母の指
不器用な指で粽の紐ほどく
肉粽屋台連ねし北京路
熱々の粽ほおばる祖母と母
故郷の粽包める新聞紙
大皿の山盛り粽竹の皮
粽解く母の乳房を嗅ぎたくて
蒸しあがる中華ちまきを中華街
粽蒸す母の合間や独り占め
みどりなる粽くるくる剥がしけり
雷神に毎年粽奉る
日日はるかともに粽の兄遠し
小粒なる粽なれども菰に巻き
大不況粽の前で立ち止まる
神棚の粽毎年掛け替ゆる
縁側に粽の季節来たりけり
蒸し上がる真菰の匂ふ粽かな
みどりの香白く粽にしみこめり
包葉の香もともに粽剥く
稜線の果て住む母の粽かな
三方の粽に花の添えてあり
粽解く柱の傷の古りにけり
この店に故郷の粽見つけたり
粽結ふ南部鉄瓶たぎりをり
粽解く故郷の丘に友と居て
粽解く昭和の唱歌うたひつつ
餡入りの粽は郷に無かりけり
紐くるくる指に巻きつけ粽解く
葉に残る粽を舌でこそぎけり
疎開せし里よりとどく粽かな
朝市の媼の結ひし粽かな
鶴亀算解けず三角粽解く
お開きは粽解くや同期会
這い這いの瞳の先や笹ちまき
席題は粽と決まり黒一点
屈原の詩魂に遠き粽かな
幼子の指でこねこね初節句
巻き上げて角のやうなる粽かな
手巻き寿司 原型見たり 粽食む
笹の香を広げて粽食うべけり
笹の葉で舟を作れとねだる子よ
筆まめに母は文添へ粽の荷
笹粽ぬるく濃いめのお茶が良い
手作りと粽出さるる午後のお茶
コーヒーで粽を食べる現代ッ子
粽結ふ亡母(はは)を偲ぶや昭和の日
葉に残る粘りと香り笹粽
粽解き野趣の移り香茶請けとす
「背くらべ」唄いし頃の笹粽
ひとつなる粽分け合ふ夫婦愛
すくすくと育てや反抗期の粽
結び目に由緒ありげな鉾(ほこ)粽
第一次反抗期かも粽もち
粽食べその由来など聞いてをり
笹採つて婆は米搗く粽かな
よく育て強くなれやと粽巻く
裏山の笹に包まる粽かな
粽見て汨羅江へと想いはせ
孫の増え粽作りに精を出す
屈源の詩集を探す粽の日
粽蒸す大釜の錆落としをり
教室で今日は粽の実演会
金時の熊に粽を銜えさせ
初めての粽は米がごっちんで
旅の夜の粽に香る節のもの
懐かしや母の作りし笹粽
掌の大きさ母の粽かな
包み方少し面倒粽かな
昼休み粽は会話弾ませて
懐かしや粽を食べし幼少期
残業の明日に備える粽かな
粽食べ故郷のこと母のこと
粽結ふ婆の指先太かりし
粽食べ遊んだ友も古希の年
笹粽残りの一つ誰が食ぶ
自家製の粽などなき時世かな
縁先に母も粽もうすみどり
青々と青を味わう粽餅
子の帯をむすぶ指先粽結う
初孫の口にひとつぶ米粽
一日を公達貌で粽食う
尚武の気纏ってすっくと立つ粽
家系図を繙くように粽解く
解(ほど)かれた粽に浸みる笹の味
若かりし母しか知らず笹粽
蒸し米に香る粽の笹緑
笹粽剥いて隅田は笹濁り
笹を剥く気持ちもはやる粽餅
古里の粽ほどけば母の色
粽食べ兄と比べし背の丈
粽食う昭和の甘み噛みしめて
妹に一つ残せし粽かな
粽餅母の指紋を艦艇す
笹粽笹の筋目をそのままに
粽着く天地無用の箱の中
粽解き母の小言を懐かしむ
玄関に母の粽が出迎える
遠き日や粽を食べし父の膝
ふるさとに帰れと粽我に言う
友がきは如何に在わすや粽解く
粽食べ背を比べるは兄貴なり
粽剥き古稀の一年締め括る
親の愛 葉っぱに巻いて ちまき食ぶ
粽解く一分の隙も無き衣
四代が 男家系や ちまき食ぶ
良く見れば可愛げのある粽どち
お彼岸やまず仏前へちまきかな
粽配る旅の上がりの居酒屋に
粽など買うてみようか句ができぬ