俳句庵

1月『新海苔』全応募作品

(敬称略)

新海苔の簀跡ふくらむ封を切る
帯封を解き新海苔の香を放つ
新海苔をいっぱい積んで舟帰る
新海苔を食む幸せを噛み締めて
新海苔や夕陽差し来るウインドウ
新海苔に春の香を乗せ 朝のかゆ
墨痕著し新海苔売出し申候
新海苔のチーズをはさむ夫婦味
封切れば新海苔の香の溢れ来る
オーロラの海新海苔の手巻き寿司
新海苔や海無き里の土産とす
新海苔の晴れの舞台へ炭熾す
新海苔へまづ伸びる手に薫りかな
新海苔の香り被りて夫帰る
来客に先ず新海苔と小盃
新海苔に賭ける漁師の素手まくり
新海苔や共に笑顔の嫁姑
あの海のこの新海苔に託す夢
片言やほっぺに新海苔手巻寿司
新海苔や一枚ひろげ大むすび
降り立つや新海苔の香に傷み消え
成田発新海苔匂ふ旅かばん
新海苔の缶を開ければ香る磯
新海苔を包んで帰る新聞紙
新海苔を着ておにぎりの美男かな
新海苔の糶賑やかに終わりけり
新海苔の香りご飯ののぼる湯気
新海苔の仄かに匂う粗朶の海
新海苔を火鉢に炙る朝ごはん
近づけは新海苔の粗朶深緑
うねる波新海苔採りにゆく小舟
寿司喰えば新海苔の香の口に充つ
新海苔や昔この辺漁師町
賜はりし新海苔の謝意はがき書く
新海苔の母だけの味にぎりめし
新海苔や酒に疲れし胃に茶漬
スーパーの新海苔使用にぎりめし
新海苔を摘む明日が見えようか
新海苔や太巻き十本内祝い
新海苔は歯ごたえをも味にする
うふふふふ新海苔十帖賜りぬ
丁寧に丁寧に摘む新海苔を
新海苔を火取って散らすふるまい丼
新海苔は重さなくとも値の張りぬ
新海苔や暗き波間のメロディ沁む
新海苔を剥ぐ音の心地良きかな
由比ガ浜新海苔浮かべ静舞う
香り良く炙れり海苔の新芽かな
新海苔で巻けぬ物あり朧月
新海苔や東京湾は雨催ひ
新海苔や新妻運び香を競う
新海苔の篊くぐりゆく摘採船
新海苔やあなたなる磯の香の果て
新海苔ぞ昼餉はいそべ巻とせむ
着物着て新海苔持ちて墓参り
新海苔を買ふもインターネットの代
新のりや筆太の文字黒々と
新海苔のスナック菓子に巻きて食ぶ
新のりの匂ひにふはと包まれり
新海苔の掌で揉み粥美味し
三方の新のりの束うやうやし
新海苔の佃煮にして旅立ちぬ
新のりに包まるむすび隙間なし
太巻きの新海苔海の香り濃し
棚占むる新のりの束照り返る
新海苔をほかほかほかの卵飯
うやうやしく新のりの封解きにけり
新海苔の糶場芳し日の香り
新海苔や漆黒の艶ほしいまま
新海苔を束ねし和紙の白さかな
新海苔の幟ひらひら老舗前
いくまいも新海苔あぶる火の神や
新海苔の封を開けば日の匂ひ
初摘みの海苔のかおりし百の山
きのふけふ新海苔届く宅配便
新海苔のかおり座敷にすわりけり
新海苔や老舗ここなる日本橋
新海苔やパリっと音する台所
新海苔やその名馴染みの浅草の
新海苔やおにぎり皿のふちをでて
新海苔の艶と香りを買ひにけり
新海苔や香りもともに恵方むく
新海苔をいただき父の目が笑ふ
新海苔と墨書の店に並びけり
新海苔の封を開ければしばし海
声高に新海苔を競る男かな
新海苔の香りにけんか小休止
新海苔や色香と艶の稲架襖
新海苔がむすびグルメにしておりぬ
新海苔の色香と艶を愛でて酔う
新海苔で卓がにわかに賑わえり
新海苔の色香顕ちたる膳に酔う
ぱりぱりと新海苔だけで白ごはん
新海苔の色香に酔えり夫婦酒
新海苔のほのかな香り海の幸
新海苔の香に団欒の箸すすむ
新海苔や朝飯食ふに如くは無し
新海苔を干す浜風に色香濃し
新海苔で包む愛情握り飯
手弁当新海苔かおるうまさかな
新海苔と墨痕一行艶やかに
杣人へ新海苔を積む宅配便
この国に生れて新海苔かぐわしき
新海苔を運ぶひかりの高速道