俳句庵

8月『ラムネ』全応募作品

(敬称略)

ラムネ玉ころころ喉を鳴らしけり
分けあひしラムネや姉の遥かなる
智恵子の空ラムネ一気に飲み干せり
水底に分け入るやうなラムネかな
陽にキラリ捨てて置かれしラムネ瓶
天に向け喇叭吹くごとラムネ飲む
豪快にやるのがよしとラムネ飲む
何度でも君の笑顔に初恋を
薄らと紅跡残るラムネ瓶
冷蔵庫ラムネが待ってる夏休み
映画館黒幕あけてラムネ売り
ラムネ瓶覗けば遥かな海の色
子等散りてラムネのハタも一休み
湧水に砂のかぶりしラムネかな
作るとき如何に栓するラムネかな
夕暮れにラムネかたむけデートかな
レモネード「ラムネ」と化して下町へ
ラムネ飲み語る昔やきりもなし
ラムネ玉壜のくびれに音弾く
悪童の昔に返るラムネかな
鳴らし飲むラムネのビー玉儘ならぬ
乾杯はラムネで吾子の誕生日
大正と昭和の出会ひラムネ抜く
ひと時を無心童心ラムネ飲む
思い出の中のラムネのほろ苦し
小銭もちラムネ買うのも幼子か
言訳を一声呑んでラムネ抜く
懐旧の情が買わせるラムネかな
ラムネ滲む胸一杯の若き夢
おくびしてどっと笑ひのラムネかな
幼き日の郷愁さそふラムネかな
壜振れば昭和の聞こゆラムネかな
ラムネ飲んでがき大将の素直なる
ラムネ飲み祭ノ夜の更けにけり
ラムネのむ風吹きぬける胸の隙
ラムネ壜振れば昭和の音すなり
泡沫のラムネと金魚夏の恋
青空をしばし閉じ込めラムネかな
ラムネの子背に陽炎を連れ帰る
ラムネ飲むけふ一服の清涼剤
ラムネ飲む底に炎天貼り付けて
駄菓子屋に下校を待ってるラムネかな
ころころとあの日に帰るラムネ玉
亡き父の太き腕やラムネ瓶
ラムネ栓抜けばあの日が舞い戻る
泡はじくラムネの向こうの海青し
指抜けぬビー球とらんと格闘し
ラムネ飲む托鉢僧ののど仏
ラムネ飲むための銭湯通ひかな
むかし村にサーカス来たりラムネ玉
ラムネわくわくねころんでカランカラ
別離とは泡の抜けたるラムネかな
飲み干した瓶の水色夢の色
父ビール僕はラムネの夏休み
祖父と孫ラムネ早や飲みセミあおる
友と飲み昔なつかしラムネかな
歳月は泡の如きやラムネ飲む
冷水にラムネを漬けて客を待つ
「ただいま!」の次は冷たいラムネ飲む
鉢巻きの子等へラムネの振舞れ
鉛筆をかんで夕焼け見るラムネ
ラムネ売り封を切らずにラムネ開け
海の家ラムネも氷に泳ぎをり
ラムネ飲み語る昔のきりもなし
駄菓子屋のラムネの味のむかしかな
いつ時の喉うるおいてラムネかな
壜振れば昔の響くラムネかな
今だから言える話やラムネ飲む
須らく単純が良しラムネ飲む
幼子がラムネ持ちつつ家路かな
遠き日の思い出噴出すラムネかな
ラムネ飲む幼友達なつかしき
ラムネ飲み友となつかし青空か
貧富差なく空気の如くラムネ飲む
青空を一気に飲み干すラムネかな
ラムネ飲む雲湧き上がる空仰ぎ
ラムネ瓶振れば昭和の音がする
銭湯の帰り親子のラムネかな
ラムネ玉海に落つるや飲み干して
思い出のあふれて止まぬラムネかな
一世と呼ばれし国にラムネ飲む
初恋の味となりたるラムネかな
カラコロとラムネは昔の音がする
ラムネ飲む愁ひのことも忘れたり
冷蔵庫ラムネを入れて孫を待ち
長考の縁台将棋ラムネ飲む
天見上げ時に玉振りラムネ飲む
ビー玉に遊ばれラムネ飲みにけり
遠き日やラムネ鳥もち肥後守
着ぐるみを半分脱ぎしラムネ飲む
掌中の玉ノ如きやラムネ玉
ラムネにはラムネの作法コツがあり
喉ごしのラムネに想う母の声
青空を飲み干すようにラムネ飲む
路地裏で遊ぶ子供らラムネ飲む
ラムネ玉鳴らして君の返事待つ
ラムネノミ瓶ノカタチニナルカラダ
じゃんけんに負けてラムネをゆずる父
ふつふつと昭和の戻るラムネ壜
飲み終へて音を転がすラムネかな
遠き日やビー玉剣玉ラムネ玉
ラムネ抜く瀞八丁のジェット船
童心をくすぐっているラムネかな
子供らのラムネ飲みたり日焼け顔
ラムネ飲み幼心に火がともる
ラムネ飲むあふれる昔ありにけり
ラムネ持つ浴衣の君が眩しくて
縁側の祖母にラムネを貰ひけり
よく冷えたラムネが喉をしみ渡る
木の上で飲むと美味しくなるラムネ
ラムネ飲むループバス待つ列にゐて
駄菓子屋に悪童揃ふラムネかな
下町の情緒が誘ふラムネかな
子供らのラムネ飲みたり笑みこぼれ
懐かしい父の隣でラムネ飲む
公園の木蔭に冷やしラムネ売り
ラムネにはラムネの作法とコツがあり
ラムネ抜く拘り消へて行きしかな
買出しのこと甦るラムネかな