俳句庵

4月『新茶』全応募作品

(敬称略)

手土産の新茶真に軽きかな
新茶汲みちゃっきり節の一節を
新茶汲むマリッジリング光る息子と
新茶汲み妻と聴き入る雨の音
かほり蒸す温め味わう新茶かな
新人に淹れ方教える新茶かな
色と香をまず確かめる新茶かな
孫娘正客として新茶酌む
新茶飲む喉の深くに風の音
壷切れば新茶の香り匂い立つ
新茶つぐはや青空を浮べをり
新茶汲む昭和は遠くなりにけり
新茶飲み心新たに旅たちす
新茶出て道具自慢となりにけり
前垂の主人手秤る新茶かな
白い朝新茶のかおりの夜明けかな
茶柱の立し新茶を飲みにけり
縁側で新茶をすする昼下がり
先ず新茶供え遺影と語りけり
茶柱も立って目出度き新茶かな
陽の恵み口に広がる新茶かな
ぬるま湯をゆっくり注ぐ新茶かな
新茶汲む先づは親しき仏から
新茶入荷墨痕清し格子かな
手を休めしばし新茶の香に遊ぶ
立ち寄って新茶いただく日和かな
新茶汲むこのひとときの別世界
新茶酌む塩羊羹の塩加減
水を買う暮らしにも慣れ一番茶
今あるを共に語らい新茶汲む
新茶に茶柱立てば尚ハッピー
日の目見る夫婦茶碗や新茶の香
新茶汲み離れ住む子の話など
濡れ縁に妻と向き合ふ新茶かな
仲人が帰り新茶の匂ひけり
眼裏に母の猫背や新茶汲む
新茶とて羊羹厚く切られけり
手もみ茶の焙炉(ほいろ)の上に薫り立つ
ふるさとの新茶がはこぶ千の風
早少女(さおとめ)の手からこぼれるあさみどり
妻と汲む新茶をけふは雛に注ぐ
母在れば百寿と思ふ新茶かな
新茶汲む二人の時間ありにけり
一日の疲れをほぐす新茶かな
窓を開け新茶に映える緑かな
新茶淹る終の一滴ひびきけり
聞き上手話上手や新茶汲む
新茶汲み育むけふの英気かな
新茶汲む昔濡れ縁ありしかな
一杯の試飲の後の新茶買ふ
新聞と新茶携え書斎入る
玉のごとき終の一滴新茶かな
ボトルには新茶の表示筆太に
新茶汲む時の流れを惜しみつつ
新茶より古茶にこだわる骨董屋
新茶とて礼儀作法に心して
今日こそは新茶粥をとねだる病父
新茶着く墨書に滲む縦のすぢ
今のこと先のことなど新茶汲む
新婚のエプロン姿新茶かな
新茶飲み話弾んで皆笑顔
返事良く新入社員新茶かな
拝むやに新茶揉みつつ炉辺話
一服に産地めぐらす新茶かな
たたずまい正していただく新茶かな
新茶とて珠玉の一滴注ぎにけり
新茶飲む恩も縁も温めて
若等の新茶出されて無頓着
雫さへなほ香ばしき新茶汲む
地下街に新茶の香り行き渡る
新茶汲み昨日の話の続きから
あばら家も終の栖や新茶汲む
共白髪古稀還暦や新茶汲む
丁寧に包ん新茶届きけり
走り茶に安倍川添へて持たせやる