俳句庵

2月『鶯餅』全応募作品

(敬称略)

芝居茶屋鶯餅の幟立つ
しばらくは鶯餅をながめけり
食指見て観念する鶯餅
鶯餅いちご大福までも食ぶ
鶯餅食べてやさしくなりにけり
鎌倉に鶯餅の茶店かな
手土産は鶯餅と春の風
飛べなくて鶯餅が皿にある
知らぬ間に鶯餅の飛んでゆき
墨堤に鶯餅の床几かな
手作りの鶯餅の指の跡
ひともじで鶯餅のどこ切らん
鶯餅食べた証の青黄粉
受け皿に鶯餅の在りし粉
好物は鶯餅の母なりし
うぐいす餅寺に世継ぎの赤子生る
お返しに鶯餅の三つかな
鶯餅母に戻りし笑顔かな
残し置く鶯餅のおすそ分け
長火鉢鶯餅の差し向かい
初音聞き鶯餅を買い求め
ハンカチを膝に広げて鶯餅
辛党の父も好みし鶯餅
店頭に鶯餅と大書され
碁敵はうぐいす餅を食いちぎり
仏前に今朝売出しの鶯餅
薄れゆく鶯餅の遠き日々
差し入れは鶯餅の楽屋裏
平穏な鶯餅のある暮らし
鶯餅摘み損ねて噎せ返り
控え目な母懐かしき鶯餅
知らぬ間に鶯餅が顔を出す
緋毛氈うぐいす餅も華やいで
青黄粉懐紙に残る鶯餅
思い出す母の面影鶯餅
緋毛氈鶯餅の梅見かな
妻と食ふ鶯餅の三時かな
お濃い茶に鶯餅のセットかな
黒文字に止りたるさま鶯餅
尻尾より鶯餅をいただきぬ
唇に頬に鶯餅の粉
くちびるに鶯餅の青黄な粉
つままれて鶯餅の粉こぼす
筆太に鶯餅の書かれある
目に青く心清く鶯餅
霜柱鶯餅を待ち焦がれ
散歩道鶯餅へ歩を延ばす
初釜や鶯餅の色添えて
匂やかに鶯餅へ季は移り
鶯餅親子が走るスニーカー
鶯餅食べて初音を待ちにけり
鶯餅互いに皺をふやしたり
軒の梅鶯餅を食べながら
好物の鶯餅を供えけり
故郷へ鶯餅の並ぶころ
鶯餅老舗小さく構へたる
黒文字や鶯餅のおもてなし
尻尾より鶯餅にかぶりつく
黒文字を添えて出される鶯餅
願かけて鶯餅を買いにけり
手のひらに鶯餅を乗せ揺らす
鄙びたる屋台に掛けて鶯餅
真心の鶯餅や雨弾く
老夫婦の思い出尽きぬ鶯餅
くちびるに鶯餅の口合わせ
手に御籤鶯餅の初詣
骨の無き鶯餅のしっぽ食べ
戯れに胡麻の目を付け鶯餅
老舗軒鶯餅の暖簾揺れ